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カーメン・マクレエ 「ブック・オブ・バラーズ」

Book of Ballads
Carmen Mcrae
1958年録音/KAPP RECORDS

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カーメン・マクレエの声は独特の金属質です。
ちょっとメタリックな響きを持つ声質で、そこが嫌いと言う友達もいます。

ボクも最初は違和感を持ちました。
でもいまはそのべたつかない金属質なところが好きでよく聴きます。

独特のさっぱり加減が都会的で、疲れ切った夜なんかには逆にいいのです。
優しく暖かくべったりしたボーカルは、人間関係に疲れた日なんかには重たすぎます。こちらがいくら愚痴を言っても「あ、そう」と冷たくあしらって全然同情してくれない、そんなカーメンのボーカルの方が疲れがとれます。

でもまぁこれは人それぞれでしょう。ボクはそう。ちなみにBARなんかでも冷淡なバーテン(必要以上に他人の人生に踏み込んでこないバーテン)がいる方が好きです。


で、疲れがとれるカーメン・マクレエのCDの中でも特に疲れがとれるものをご紹介しましょう、というのが今回の「ブック・オブ・バラード」。

人によってアップテンポのチャカポコリズムの方が元気になって疲れがとれるという方もいらっしゃるでしょうが、ボクはゆったり静かなものを肩の力を抜いて聴いた方が、疲れがとれます。そしてインストゥルメントよりボーカルの方がより疲れがとれます。人声は最高の楽器だ、と実感するときはこういう時です。

このアルバム、名前の通りバラードを12曲入れたもので、カーメンが36歳の時に録音されています。
いまのボクの年齢(1997年に36歳)でこんなすごい表現力を持っていた彼女はやはりただものではないよなぁ(というよりボクがただものすぎるのか…)。
とにかくはじめから終わりまで素晴らしいの一言を贈りたい珠玉のボーカル・アルバムなのです。


特に好きなのは1曲目の「By Myself」。
これは前奏からして最高。前奏が終わって出てくるカーメンの歌声も深くつやがあって情感に溢れています。録音自体もとても実在感がある仕上がりで定位も抜群。シンプルなステレオ録音が逆に情感を引き立てています。こういうのに比べるとこの頃の凝った録音には何の意味があるのだろう、と思っちゃいます。

「Isn't It Romantic?」もいい。
ここらへんになるとゴリゴリに固まった心が少しずつほぐれてきているからこういう「転」がいいんですよね。

そしてラストにかけての2曲は泣かしに入ります。
マット・デニスの名曲「Angel Eyes」などは歌詞の最後の1行を歌わない。その前で絶句するんです。演出(解釈)とはいえ感動的。まさに絶唱です。

……でもまぁはっきり言って全曲いいです。名盤とはそういうものです。ジャケットまで最高! ピアノトリオとオーケストラの伴奏も控え目で上品。押しつけがましくないですね。


ちなみにカーメン・マクレエはものすごく沢山CDを出していますが、ボクが好きなのはこの「ブック・オブ・バラーズ」を含む「デッカ・キャップ時代」。
彼女が若い頃在籍したDECCA(1955〜1958)とKAPP(1958〜1960)というレーベル名をとって勝手にそう呼んでいるのですが、この5年の間の彼女のアルバムは名作揃い。「アフターグロウ」や「サムシング・トゥ・スイング・アバウト」など好きなアルバムがいっぱいあります。

あなたも疲れ切った夜などこの頃のカーメン・マクレエにゆったり浸ってみませんか。
マッサージなどにかかるよりずっと身体と心がほぐれると思いますよ。



【1997年2月記】

1997年02月02日(日) 20:05:47・リンク用URL

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