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よしだたくろう「元気です。」

Genki desu.
Yoshida Takuro
1972年発売 CBS/SONY

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「今はまだ人生を語らず」とこれと、どっちにしようか迷ったんだけど・・・。

前者はCDが出ていない(廃盤)ということで「元気です。」にします。ボクにとってはどっちでもいい。どっちも最高。比べようがないです、ボクの中では。

「春だったね」から始まって「せんこう花火」「加川良の手紙」「夏休み」「たどりついたらいつも雨降り」「こっちを向いてくれ」「旅の宿」「祭りのあと」……とにかく名曲揃いですからね、このアルバムは。

日本酒を飲んだときに大声で歌いながら酔いつぶれていくのに最適ですよね。というか拓郎のCDはこの頃そういう使い方しかしていないかもしれない。酔いつぶれるために、聴く、歌う・・・


なぜかバーボンではなくて日本酒なんです、ボクにとって。
「ぺニーレインでバーボンを」が有名すぎて、昔は「拓郎=バーボン」だったんだけど、いまは日本酒。振り返ってみると、本当に日本的なアーティストだと思います。彼のギターが聞えてきて彼の字余りの怒鳴り唄が聞えてくると、どうしようもなく自分と日本の来し方行く末を想います。
だから酒が欲しくなる。安い清酒が欲しくなる。汚く酔った後のあの二日酔いの自己嫌悪が欲しくなる…。
特にひらがなの「よしだたくろう」時代は日本酒が合います。


拓郎って一体なんだったんでしょうね(<なぜ過去形?)。
プロテスト・フォークを自分で確立して、そしてだんだんと自己憐愍的四畳半フォークになっていった流れも自分で壊して…。そんで、したいことを見失ってしまったひとりの創造者。
なんというか、拓郎以降を「すべて拓郎のマネじゃねぇか」と乱暴に言えてしまうくらいの人なんだけど、どこかで「引き摺りおろしたくなるような存在」なんです。
いじめっ子のふりしていじめられっ子だったのかもしれないな、拓郎って。

でもやってきたことはすごい。
まぁこの頃ではキンキキッズの横でへらへらしている気のいいオジサン、って感じだけど、彼自身はランボーみたいに詩を捨てて暗黒商人にでもなりたかったんではないかなぁ。
そんなことをこの頃よく思います。


「古い舟を動かせるのは、古い水夫じゃないだろう」という衝撃的な刺を持って広島から出てきて以来、とにかく敢えて原野を歩き続けた拓郎は、舗装されたきれいな道ばかりになってしまった日本の音楽状況に呆然としてしまったんじゃないかな。
このオレがどの面下げて舗装された道を走れるっつうんじゃ! みたいなテレとともに、生理的にイヤなんだと思う。

そして、実はボクたちも、彼にはもう走ってほしくないと心の中で思っているのかも知れない。
青年の気を失ってしまった日本人は、もうイママデツミアゲテキタモノを、壊せない。
世の中が拓郎にもう暴れてほしいと思っていない。

そういう意味で拓郎はとっても「時事的」なアーティストでしたね。
ある意味普遍性のない人だったのかもしれない。


でも、なにかを見失いつつある時に、彼の唄を聴くと、思い出すものがいろいろあります。それは、人生のスタンスみたいな根本的なことであるのだけど。

会社とかでこれを見てくれているアナタ。
たまには拓郎のこんな詩を思い出して叫んでみません?


 朝日が昇るから、起きるんじゃなくて
 目覚めるときだから 旅をする。
 教えられるものに 別れを告げて
 届かないものを 身近に感じて

  越えて行け そこを 越えて行け それを
  今はまだ 人生を 人生を語らず

 嵐の中に 人の姿を見たら
 消え入る様な 叫びをきこう
 わかり合うよりは たしかめ合う事だ
 季節のめぐる中で 今日をたしかめる

  越えて行け そこを 越えて行け それを
  今はまだ 人生を 人生を語らず

 あの人のための 自分などと言わず
 あの人のために 去り行く事だ
 空を飛ぶ事よりは 地を這うために
 口を閉ざすんだ 臆病者として

  越えて行け そこを 越えて行け それを
  今はまだ 人生を 人生を語らず

 おそすぎる事はない 早すぎる冬よりも
 始発電車は行け 風を切ってすすめ
 目の前のコップの水を ひと息にのみほせば
 傷も癒えるし それからでもおそくない

  越えて行け そこを 越えて行け それを
  今はまだ 人生を 人生を語らず

 今はまだまだ 人生を語らず
 目の前にも まだ道はなし
 越えるものはすべて 手さぐりの中で
 見知らぬ旅人に 夢よ多かれ

  越えて行け そこを 越えて行け それを
  今はまだ 人生を 人生を語らず


なんという瑞々しさだろう。
ボクたちはこういうものを捨てて歩いてきたけど、これが「成長」と言えるのだろうか。

拓郎を聴くたびに「先へ進むことってなんだろう」という想いに駆られます。
そして自分の、日本の、来し方行く末を考えて、日本酒を飲みたくなるわけです。





最後に、まぁ恒例みたいなものだから、好きな曲ベスト10をあげてみます。
迷うなぁ…。
上に歌詞を書いたことからもわかるように「人生を語らず」が一位でもよかったんだけど、冷静に「一番の愛唱歌は何?」と考えると「たどりついたらいつも雨降り」なんですよね。
これ、しょっちゅう歌っている。
くたびれたとき、雨のとき、酔っ払ったとき、心の中に傘をさしたいとき…。

ということで10曲。


1. たどりついたらいつも雨降り
2. 人生を語らず
3. 落陽
4. 春だったね
5. 夏休み
6. 知識
7. シンシア
8. 旅の宿
9. 流星
10. イメージの詩



これ以外にも好きなのいっぱいあるけど、他人のために書いた曲も色々いいのあるよね。
キャンディーズ「やさしい悪魔」、石野真子「狼なんて怖くない」あたりは名曲だし。
あ、それと、「傷だらけの天使」のテーマも大名曲だよね。



そういえば、拓郎と小室等がふたりでやっていたラジオ番組「ヤングタウン東京」で拓郎にハガキを読まれたことを今思い出した。あれは1979年くらいだったか。
その番組の中で、作ったばかりの「外は白い雪の夜」を小室等を女役にしてデュエットしたりしていた。あの頃の拓郎も力が抜け切っていて良かったなぁ。
そういうこともあって、アルバム「ONLY YOU」も意外と好きです。

なんだか今回は(今回も?)散漫・バラバラだったけど、思い入れが強いヒトのことを書くのって難しいねぇ。許してね。



【1998年11月記】

1998年11月01日(日) 22:13:39・リンク用URL

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