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サザンオールスターズ「TEN ナンバーズ・からっと」

TEN NUMBERS CARAT
Southern All Stars
1979年発売/ビクター

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結論から先に言えば、サザンはメジャーになってほしくなかったですね。

いつまでもあの「変てこなマイナーさ」を維持していてほしかった。

メジャーに対してちょっと腰のひけた、情けない遠ぼえをしている頃のサザンの魅力的なことといったら……。



当時、「歌謡曲」という「体制的一般メジャー音楽」がありまして、その横に「ニューミュージック」というフォークの血を受けた「正統的若者メジャー音楽」がありまして。

枠からはみ出る勇気のないそれらの音楽の隙間に彼らは存在していたのです。
はっきり言ってしまえば「泡沫的軟弱コミック音楽」だったわけですね。

泡沫的軟弱コミック音楽。
完全に「一発屋」のパターンです。アラジンの「完全無欠のロックンローラー」的存在だったんです。


ところがところが。
意外にメロディラインがきれいだった。歌詞に独特のやるせなさがあった。ボーカルがなかなか魅力的だった。そして……アルバムが驚きの完成度を持っていた。

それでファンも本人たちも勘違いしてしまったのでしょうか。
彼らはどんどん「正統的若者メジャー音楽」に組み込まれて行ってしまったのでした。

あの、学生バンドの延長のようなデビュー当時の、溢れるような魅力が急速に影を潜めていくのは悲しかったなぁ。
あのマイナーさ加減。
自分達をマイナーと位置づけているそのバランス感覚が秀逸だったのですが。

いまやちょっと「センセイ」になってしまったんですね、サザンも。
(山田太一がドラマ「ふぞろいの林檎たち」でサザンをBGMに選んだのはあのマイナーさ加減を買ってだと思います。ドラマの主人公たちのマイナーさ、ふぞろいさこそサザンの持っていた空気感でした)


繰り返しますが、サザンはメジャーになるには惜しすぎるバンドでした。
メジャーになっちゃってからのサザンは、たとえヒットをばりばり飛ばしていたとしても、それは小手先の技術で売れた感じがします。

いえ、売れちゃいけないわけではないんです。
たとえ売れたとしても「自分達をメジャーなんだと位置づけて欲しくなかった」んです。ん〜、なんだか、デビュー当時からのファンが「売れる前の彼らが好きだった」とあまのじゃくぽく言う感じに近くなっちゃったかも。決してそういうつもりではないんだけれど。



とにかく。
イイタイコトは、デビュー当時の彼らは本当に魅力的だったということ。
その魅力が全開したのがこの2枚目のアルバム。「TEN ナンバーズ・からっと」。

実はデビューアルバムの「熱い胸さわぎ」とこれとどちらを取り上げようかかなり迷いました。でもマイナーさ加減と完成度のバランスが「TEN ナンバーズ・からっと」の方がいいかなと思って。


それにしても、何度聴いても飽きないなぁ、このアルバム。

構成もアレンジも曲の完成度も奇跡的と言っていいほどの出来。
どの曲もどの曲も素晴らしいと思います。

コミックバンドの本分もしっかり守っていて、しかもメジャーをどこかで冷笑している。
「思い過ごしも恋のうち」やら「いとしのエリー」やらのぶっちぎりの名曲を肩にチカラ入れずに作っているし(後年の彼らの曲ってチカラ入りすぎていて疲れません?)、桑田圭祐のボーカルもいまよりうまいのではないか、というほど味がある。
そしてなにより歌詞が自由奔放でなんとも魅力的。

(桑田圭佑のメロディメイカーとしての才能が取り上げられることが多いけど、特に初期はパクリの名手という部分が大きいかと…。彼の本当の才能は作詞に出ているとボクは思っています。めちゃくちゃな言葉を選んでいるようでいて、全体としてあれほどやるせない雰囲気を出せる歌詞を書ける人ってそうはいません)

シングルには「シャララ」「YaYa」「メロディ」など名作がいろいろありますが、サザンの魅力がすべて現れた、良い意味で「がさつで変てこでやるせない」アルバムはこの2枚だけ。

圧倒的名作です。

3枚目の「Tiny Bubbles」も悪くはない。でも、もうメジャーになりかけちゃっていて「狙い」が見えちゃうところがあります。惜しいことに、この2枚の熱さが、もうない。


 ♪お熱いのが好き、ベイビー
  心に火がつくような
  お熱いのが好き、ベイビー
  照れたりしないで心から


サザンがお熱かったのは、まさにこの2枚。
あの熱さが懐かしすぎます。

サザン・オール・スターズよ、マイナーバンドに戻ってくれ!


【1997年8月記】

1997年08月01日(金) 22:01:14・リンク用URL

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