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LV5「ヤスケンの海」

村松友視著/幻冬舎/1600円

ヤスケンの海
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2003年1月20日他界したスーパーエディター安原顯(あきら)、通称ヤスケンの評伝。

彼の葬式で幻冬舎社長見城徹が村松友視に「書くしかないでしょ」と言ったのが始まりで、同年5月のスピード出版になった。
著者は中央公論の文芸誌「海」編集部当時ヤスケンの同僚だった間柄で、いわゆる親友。他界後まもなくという動揺や親友であったという心情、そしてスピード執筆という悪環境を感じさせない落ち着いた筆致で読者をヤスケンの世界に連れて行ってくれる。

個人的にはまゆみ夫人や娘さんの描写がもっと読みたかったし、ヤスケンの体臭に近い部分の記述が少ないとも思った。著者との仕事関係を中心とした内容になっているので、ヤスケンの表面的な部分しか浮かび上がってこない評伝になってしまっている。しかも死後評伝一番ノリを目指した出来の荒さもちょっとある。ただ、著者はヤスケンが中央公論にいた頃のエピソードを誰よりも知っているので、その辺の話は実におもしろい。

ヤスケンの人生を追った評伝にしないで、ヤスケン-ムラマツの編集魂血風録みたいな感じにテーマを絞って書いていたら傑作になったかもとちょっと思う。
まぁでも、そういうことを除いても十分な質と量かもなぁ。いろいろ条件を考えると。

ヤスケンの書評は、個人的にもっとも信頼していた。本書の中にヤスケンの言葉としても書かれているが「こと文学・芸術に関しては送り手(編集者)の偏愛以外、頼れるものはない」と考えているヤスケンの書評はまさに偏愛に満ち、ダメな物は心底ダメと切り捨てる刀の切れ味も素晴らしく、その激しさに戸惑いつつも参考にせざるを得ない説得力に満ちていた。あぁあの書評がもう読めないのだなぁと悲しみつつ、彼の一貫性のある半生に感動する。ヤスケンの生き方も、著者の書き方にも、拍手を送りたい。

2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , 自伝・評伝

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