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LV1「希望の国のエクソダス」

村上龍著/文藝春秋/1571円

希望の国のエクソダス
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読みながら「あれ、オレって落合信彦読んでるんだっけ?」と表紙を見返してしまった。
ひと言で言うなら、現代日本の問題点を羅列して将来を予測し、それを物語に翻訳した本。問題意識が強い著者ならではの本ではあるが、全体にやけに自虐的だし、「オレっていろいろ考えてるでしょ、憂いているでしょ」という感じが鼻につくし、だいたい小説になっていない気がする。炭坑の中のカナリアのつもりかもだけど、著者ほどの「小説家」なら、ありそうな未来を想像しなぞるのではなく、その裏にある根本的な人間の姿を創造し、まったく違う世界観のもとに表現してほしいと思う。現代日本の問題点を物語に翻訳するのではなく、現代人そのものを物語に翻訳・昇華してほしいと願う。例えばオウムや阪神大震災を見事に昇華しきった村上春樹のように。

こういう本を「流行作家ムラカミリュウ」が出す意味はわかる。波紋を投げかけ、それはかなりの人に届いたことであろう。でも「小説家ムラカミリュウ」には出して欲しくなかったな。「共生虫」がいまいちだったので今度こそ、と期待したけどガックリ来てしまった。もうすでに小説家というよりは時事作家なのかもしれない。

物語自体は、2/3までは面白かった(戦慄もした)。
でもラストはあんまりだろう。無理矢理「希望」を作り出したかったのだろうが。
あと、中学生の描き方に「自虐的オジサン史観」が入っている気がする。戦後の進歩的文化人が欧米を卑屈に仰ぎ見た感じに似ている。ちょっと不快。村上龍ファンとして悲しい限り。JMMなどの活動は素晴らしいと思うし、問題点を考えさせるキッカケとして優れてはいるが、彼にはやっぱり小説家として戻ってきてほしい。ボクにはまだアナタの「小説」が必要なのだ。

2001年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

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