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LV5「Sydney !」

村上春樹/文藝春秋/1619円

シドニー!
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村上春樹によるシドニーオリンピック観戦記である。
いや、観戦記というよりシドニー街紀行の趣の方が強い。ちゅうかシドニー滞在日記、かな。その滞在期間中にたまたまオリンピックがあった、みたいな距離感で書かれている。その距離感がボクには心地よかった。オリンピック賛歌にしてないし、熱くもなっていないし、無理矢理感動もしていない。
著者自身告白しているが「オリンピックは退屈である」という認識が原点になっているので(共感するなぁ)、作家の好奇心は当然別のところへ広がる。コアラや食べ物や潜水艦やオーストラリアの歴史へ。その辺の広がりをそのまま書いていることが実にいい効果を上げている。そして、ある感動的な出来事によりシドニーの街(オーストラリア人の意識)が変質化していく様の捉え方は、「アンダーグラウンド」以来醸成され続けてきた彼の主題に近いせいなのか、ちゃんと深く掘り下げてあって面白かった。

導入部と〆の部分もとっても良い。これらがあったからこの本は「作品」になったのだと思う。オリンピック選手という「オリンピックを最大の非日常」と置いている人たちの描写で、「オリンピックは退屈な日常」と思っている著者の日記を挟み込む、というその構成。それによって、この本は単なる日記と違う緊張感を得ている。
全体に軽妙でいいテンポ。習作的比喩の多用が作家の日常の努力をかいま見るようで興味深い。それにしてもあれからたった半年なのに、もうすでにずいぶん遠い昔みたいだね、シドニー五輪。

2001年03月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , スポーツ , エッセイ

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