安西水丸さんとの12ヶ月
2014年3月25日(火) 8:17:56
安西水丸さんが亡くなった。
最近、立て続けにいろいろな方が亡くなる。宇津井健、藤巻幸夫、安西マリア・・・でも、水丸さんはちょっと身近すぎるかなぁ。
身近といっても、お会いしたことはない。
ただ、もう10年くらい前になるが、婦人画報で連載したとき、なんとボクの連載原稿に安西水丸さんが挿絵を描いてくださるという光栄に浴したのである。
連載が決まったあと、副編集長から「挿絵は水丸さんとかどうですかねえ」と言われた時の驚き。
ボクみたいな泡沫ライターに果たして描いてくれるのだろうか? だって、ある時期「水丸ブーム」と言ってもいい時代(たぶん1980年代)が確実にあったくらい有名な人だし、当時は村上春樹の挿絵を描いていたし、彼の本名である渡辺昇なんて村上春樹の小説にたくさん出てくるし(このエピソードはマニアックかつ関係ないがw)
「さとなおさんのこと、知ってるっておっしゃってましたよ」と編集者。
えーーー!
そんなこんなで挿絵を描いてくださることが決まり、連載タイトルも「ごはんのはんりょ」と決まった。食べ物エッセイである。
婦人画報掲載までの流れはこうだ。
ボクが第一稿を書く。
それを編集部に送る。
水丸さんに送られ、それを水丸さんが読む。
で、その文章を元に彼が挿絵を描く。
同時並行でボクは最終稿を書き、入稿する。
で、毎回、初校時に、ボクは初めて、水丸さんの挿絵を見ることになる。
あー、この文章に、こういう絵かー。
さすがだなー、うれしいなー、文章が倍くらい引き立つなぁ・・・
というか、あの水丸さんが、ボクの原稿を読んだ上で、ひと考えして、筆を動かしてくれるという光栄。しびれるなぁ・・・
ボクは自然と、彼のために書くようになった。
だって、ボクの原稿の(編集者を除いた)第一番目の読者は安西水丸さんなのである。そりゃ彼のために書くでしょう。
彼に恥ずかしくないように、彼がおもしろく思ってくれるように。そして、彼が絵のインスピレーションが湧くように。
連載期間中、そんな1年をボクは送った。
毎月、毎月、安西水丸さんというひとりの読者のために、緊張して文章を書いた。
なんか、毎回、ラブレターを送るような気持ちで、送信ボタンをポチリと押した。
それは豊かで濃厚で、励ましてもらっているような12ヶ月だった。
水丸さん、ありがとうございました。
安らかにお眠りください。
