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生活者は企業と"対話"なんかしたくない

2012年7月 9日(月) 10:15:38

先週末は関西で講演だった@Web広告研究会関西セミナー

高校(駒場東邦)の同期3人が同じような領域を扱っていることに大和ハウス工業の大島茂室長がたまたま気づいてくださり、博報堂関西の木藤正裕くんと、ループスの斉藤徹くん、そしてボクの3人での鼎談(正確にいうと、ワコールの大藪範子さんをモデレーターにした座談)の講演会があったのである。

高校時代には想像もつかなかった同期座談会。
卒業32年での思わぬ邂逅。人生、何がどうなるかわからないねぇ。

最初にまず木藤くんが「企業がソーシャルと対話できる組織設計」という表題で30分の単独講演をやり、そこに我々2人が加わって1時間強の座談という枠組み。140人くらいのお客さんが集まってくれた。同期のうだうだ話なんかに来ていただきありがとうございました。

木藤くんの講演テーマは「企業と生活者の対話」だったので、座談はその辺の話題から。

で、ボクはちょっと違う考えを持っていたので、最初からぶち壊すようなことを発言してしまった(まぁ同期だしw)。

何かって、「企業は生活者ともっと対話するべきだとか言うけど、生活者は企業となんか対話したがってないんじゃない?」ということ。

そう、生活者は企業と対話なんかしたくない。

テレビCMとかを受け身で受けとる分にはいいけど、能動的な対話なんか別にしたいと思っていない(クレームや物珍しい場合やファンである企業の場合は別にして)。

まぁ企業からの一方的な「傾聴」を広く「対話」と捉えることもできるし、「対話」自体は重要なのだけど、でも昨今の「対話」ブーム?にはわりと疑問を持っている。

じゃあどうすればいいのか。

そこで出てくるのが、今年のカンヌ(Cannes Lions International Festival of Creativity)でもクローズアップされた「CSV(Creating Shared Value)」という考え方なんだろうな、と思う。

「企業ー生活者ー社会」という三角形を考えるとき、「企業ー生活者」の関係性作りを従来「コミュニケーション」と呼んできた。広告はその一部だ。コミュニケーション・デザインはもちろん「社会」をも巻き込むが、基本的に「企業ー生活者」の関係性強化のためである。

「企業ー社会」の関係性作りは、本業(商品やサービス)の充実とミッションの社内共有がまずはその第一。そのうえで「CSR(Corporate Social Responsibility)」的なアプローチもあるだろう。いわゆる社会貢献で、これは企業の評判づくりとして間接的に「企業ー生活者」のコミュニケーションに寄与してきた。

で、3つめの軸、「生活者ー社会」の関係性に企業は関与しにくかったのである。

そこを解決するのが「CSV」なのだろうと思う。

直訳すれば「共有価値の創造」になるのかな。
このコンセプトを提唱したポーター教授は「Reconceiving products and markets」「Redefining productivity in the value chain」「Enabling local cluster development」の3つからこれを説明しているが、本やウェブでそのまま勉強しても頭がボワンとしてプランナーとしてどこから手をつけていいかよくわからない。

でも「社会ー生活者」という第3軸の関係性作りをすると考えると、プランニングしやすいかもしれない。

つまり、企業(もしくは商品やサービス)は、企業の経済的課題を解決しつつ、社会的課題も解決しようとすることで「生活者と社会を結びつける媒介」となる。それが結果的に企業と生活者の「コミュニケーション」になり、企業にとっての「CSR」にもなる。

この三角形は「三方良し」と言い換えることもできるだろう。
近江商人の古い言葉である。売り手よし。買い手よし。世間よし。この辺の価値創出に今後の関係性作りのキーが隠されていそうだ。


今年以降、CSVが流行になって、見た目上「CSVっぽい企画」とかが増えそうだけど(社会課題解決型の)、それだけでは実はCSRとそんなに変わらない。「企業ー社会」軸での活動になりがちだ。

そうではなくて、そこに「生活者」が密接に入り込むこと。それがあってはじめて「三方良し」になる。だからプランナーは「CSV」的なものと「コミュニケーション」を意識的に結びつけてストーリーを書いていく訓練が必要かもしれないなと思う。

生活者は企業と対話なんかしたくない。
でも、商品やサービスを介して社会に関与したり、つながりを深めたり、この世の中をよりよい場所にできるなら、そこに参加したい。それが結果的に企業との対話につながる。

これからの企業と生活者の関係性作りのヒントはこの辺にありそうだ。

ちなみに、定義の仕方によって、CSVも含めて大きくコミュニケーションと捉える人もいると思うし、コミュニケーションという言葉自体がCSVに取って代わられると捉える人もいるだろう。CSV=三方良しと捉えた方がいい場合もある。その辺はまぁこれからの「流れ」次第かなw

この項、まだまだ思考中。

※ この記事についての追記を翌日書きました。こちらから。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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