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学生たちが打ち上げをしてくれた

2012年1月26日(木) 8:51:44

2011年度、学習院大学政治学科で「プレゼンテーション演習」という授業を持った。

一度、遠藤薫教授の授業にゲストした縁で、教授にオファーされたのだが、広告コミュニケーションやソーシャルメディアは専門ではあるが、「プレゼンテーション」という分野については門外漢であり、教えられるほどの知見がない。

もちろん25年間、電通という会社でビジネス・プレゼンをくり返してきた。
人見知りで口下手だったボクは、これが苦痛だった。何度も書いているが、スピーチとかプレゼンとかはボクの人生最大の不得意分野だったのである。

でも、習うより慣れろ。場数がヒトを成長させる。
25年間のプレゼンと、5年前くらいからの多くの講演で、そんなボクでも少しずつ人前でしゃべることができるようになっていった。初期は「スライドがないとしゃべれない」という状態。いまならスライドなしで1時間くらいならなんとかなるかな?(ムリかな?w) とにかく「あー、人生最大の不得意分野でもなんとか克服できるものなんだなぁ」と感慨深く昔を思い出すことが出来るくらいにはなった。得意分野ではないが、もう不得意でもない。「プロが聞いてみたいプレゼン」で糸井重里さんに続く第2位になったりもした(1位とは大差だがw、でも自信になった)。

プレゼンのなんたるかを教えられるかどうかは別にして、不得意分野だったからこそわかることがたくさんある。その道程を学生たちに提示して、ボクなりの考えを示すことはできる。それにまぁなんにしろ「新しい分野に挑戦する」のは自分を拡げるし、おもろいことが起こることが多い。思いも寄らぬ流れには乗ってみろ。そんな気持ちでオファーにオッケーをさせていただいたのであった。

一方通行の座学ではなく「演習」だから人数限定でないとできない。
7,80人の応募があって、オリエンテーションのときはほぼ全員立ち見の中、授業内容の説明をし、メールで自己プレゼンをしてもらって30名に絞った(大変だった)。

大震災で少し開始が延びたが、4月後半、授業が始まった。
1000人以上を相手に講演したこともあったし、東京都市大学の大きな教室で1年間教えていたこともあった。だから何とかなると思っていたが、狭い教室で30人に講義する方がずっと難しいことを初めて知った。不特定多数の1000人より特定できる30人を相手にスピーチする方がずっと緊張するし気配りしないといけないことが多いのである。うわー…。慣れるまでに数ヶ月かかった。あーなるほど、こんな感じでやればいいのかとわかってきたのが7月くらいである。

あと、1年間通して30回弱の授業(1コマ1時間半)をきちんと構成することの難しさにも参った。
なげーよ。プレゼンというお題でそんなに教える内容ないよ。困ったな。それが最初の印象だった。夏休みに入るころまではなかなかに苦痛だった。

でも秋から開き直った。

プレゼンとは結局テクニックではなく「自分の表出」だ。他人のまねごとではなく、自分の素をいかに出すか、が、肝要なのだ。となると「自分の素」を知らないといけない。そしてそれを相手に伝わるようにどう出していくかを考えないといけない。
つまり、プレゼンとは自分そのものを知ることからすべてが始まるのである。じゃあ「自分とは何なのか」。スピーチさせたりペーパー書かせたりしながら学生たちに毎回問いかける。自分を知ろう。自分を出そう。他人と違うことは素晴らしいことだ。自信をもって「今の自分」を出そう。自分をもっと出せるように「自分を作っていこう」。そのためにはインプットではなくアウトプットしよう。これからのソーシャルメディア時代のアウトプットも知っていこう。そしてアウトプットの過程でもっと「自分」を知っていこう。

そんな授業を1年間やってきた。
ソーシャルメディア時代の「自分」論みたいな感じにだんだんなっていき、最後は人生論みたいな感じにすらなった。我ながらヘンテコな演習だ。どうだったかなぁ。伝わったかなぁ。少しは成長に役立ったかなぁ。

でも、どうやら少し報われたようである。

一昨日の晩、学生たちが自主的に「さとなおクラス打ち上げ会」を開いてくれたのである。その場でもFBでもとても熱い言葉をたくさんもらった。少しは役に立てたようである。うれしいな。「来年もモグリで聴きに行きます!」という生徒も何人か。在学生ならともかく卒業後は難しいと思うよw

とりあえず、ボクごときが教えられることはすべて教えた。みんなにも成長してほしいけど、ボク自身も「教えたことがブーメランのように自分に返ってくる」わけで、教えたことに恥じない生き方をしないといけない。教えることとは教えられること。この言葉の違う一面を知ることができた。自分の範囲も拡がったと思う。

1年間ありがとう。お疲れ様でした。そのうち人生ですれ違えることを楽しみにしています。

来年度もクラスを持たせてもらうけど、そしてたぶん来年でやめると思うけど、学生に教えるのは本当に勉強になる。そして学生たちがとても可愛くなる。この体験は貴重だった。

それにしても、打ち上げ会場だった「ひもの屋」すごいなw
2980円で時間無制限飲み放題。朝4時がラストオーダーで、そこまで2980円で居座っても良いのである。すばらしいw

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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