独立後の初仕事

2011年5月 4日(水) 18:10:11

3月一杯で電通を辞めてフリーエージェントになったが、辞める前からずっと「助けあいジャパン」というプロジェクトをやっており、まったく「区切り感」がない。そのうえ無給・無休のボランティアである。

こんな無報酬のことばかりやっていると当然干上がるので、そろそろ営利活動を始めないといけないが、まだ「助けあい」で精一杯。折しも震災後の不況で仕事もあまり動いておらず、まぁ講演や講義は着々と入ってきているものの、こんな状態が続くのは実によろしくない。そろそろ食い扶持くらい稼ぎださなければ。

とかいいつつ、実は独立初月の4月はひとつ仕事をやった。
そう、少しだけど収入があった。ママン、パピー、初収入だよ! 初収入って、うれしいね!

やったのは海外への新聞広告。
4月11日に菅直人首相の記名で出した、世界主要紙に対する震災支援感謝&原発お詫び広告である。

実際には制作というよりECD(エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター)的に関わった。言い出しっぺリーダーみたいなもんすね。ボクが自主提案し、制作と掲載は(いまや古巣の)電通にお願いしたものである。

311からちょうど一ヶ月の4月11日。
こんなに支援してくれた世界各国に対して、その日に感謝広告(原発で迷惑をかけていることのお詫びも込めた感謝広告)を、菅直人の名前で出すべきだ、と感じていた。そこにタイミングよく佐藤優氏もそういう論説を出されていたので意を強くし、松井孝治さんに「自主提案したい」と電話で申し入れたのが4月1日(独立の日)の夜中だったかな。

そうしたら「必要なのはよくわかる」ということで、「すぐプレゼンを」となった。
実はこの時点で掲載まで10日。海外の新聞は入稿が早いのでもう間に合わないかもなぁ、と思いつつ、すでに古巣(1日前に辞職)だった電通の局長に電話して「至急ご協力を」とお願いし、またアートディレクターの徳田祐司さんにも快諾を得た。すぐにコピーを書いてもらい(平石洋介さんありがとう)、徹夜でカンプ作成してもらい(徳田くん、いつも急ですいません)、4月3日日曜の昼に、松井さんがセッティングしてくれた政府高官たちに自主提案したのだった。

そして内閣広報室から首相に原稿が上がり、二転三転、紆余曲折、怒濤の修正などがあり(この辺は電通スタッフが修羅場を耐えてくれた)、4月11日、アメリカをはじめ、イギリス、フランス、ロシア、中国、韓国など海外7紙になんとか出稿できたという具合(義援金を一番多く送ってくれた台湾とは国交がないこともあり、中国への配慮から感謝状にとどまったらしいが、その後、民間での感謝広告掲載があった。すばらしい)。

本来は義援金を送ってくれた各国全部に掲載すべきだし、前出の佐藤優氏もそう批判している。
これは国の予算の問題と掲載までの物理的な時間の問題があったと思うが、その後、無料での掲載を受け入れてくれる新聞が続出し、31カ国・地域の105紙に無料で掲載されたらしい(4月15日時点)。感謝広告を無料で、ってなんだか恥ずかしい話だけど、これも各国の好意なのだろう。ありがたいことだ。

コピーは最初もっと情緒的なコピーだったし、デザインも全然違うものだった。
でも、やっぱり国の意見広告となるといろいろなところから手が入る(当然菅首相からも入りまくったらしい)。それでも写真の「デーブ・スペクターのツイート」のように、なんとかギリギリ役立ったのかなとは思う。こういう襟を正した広告はやはり新聞だなぁ。海外首脳・国民の反応も良かったと聞く。いろんな意見・批判はあるとは思うが、震災一ヶ月で世界に対して感謝を述べるのは必要だと思うし、やらないよりずっとマシかと。


というか、国もずいぶん変わってきている。風穴があいてきている。
すごく強いルートがあるわけでもないひとりのクリエイティブ・ディレクターの意見でも、タイミングと必要性さえあればちゃんと聴いてくれる(まぁ未曾有の国難でネコの手も借りたいところなのだろうけど)。ボクにぶぅたれてくる方々も、ぜひご自分で。

いま生きているこの社会を少しでも良くするのは、誰か他の人ではなく、そこに所属している自分。お粗末なネコの手だけど、この手で出来ることはこれからもやっていきたいと思う。

とりあえず初仕事のご報告でした。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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