別にうらやましくはないんだけどさ

2008年7月14日(月) 7:25:08

「若さ」なんてこれっぽっちもうらやましくない。
大人の方が人生はずっと楽しいからである。10代より20代。20代より30代。30代より40代の方が楽しい。50代以降は未知の世界だが、これも考え方だろうな。若さと張り合わず、衰えを楽しめるようになれば、きっと年齢が行くほど充実した毎日になるだろう。健康体であることが前提となるが。

若者の犯罪が増えているが、彼らの根底に「歳をとるに比例して人生はつらくなるだろう。だって『若さ』を手に入れている今ですらこんなにつらいんだから」という暗い予想がある気がする。
そんなことないんだけどな…。
振り返ってみて、10代とか20代前半が人生で一番つらかった気がする。
成長期の懊悩。自分に自信が出来る前のビクビクおどおど。将来への不安。自分の限界を知ることの衝撃。などなど。一皮剥ける前というか、剥けてる最中というか…。ビリビリばりばりと剥けている最中は、そりゃ痛いのだ。その時期を上手に越えるとそこそこ楽しい世界が待っている、ということを少しでも知ってくれれば、ちょっとは犯罪も減んないかな…。

少なくとも、ボクは10代20代はわりとつらかった。
いや、表面上は楽しかったよ。いろんな遊びもしたし恋もしたし旅行もした。でも、内面では常に悩みまくっていた。

だから、ボクは「人生をもう一度やり直せるなら何歳に戻りたい?」と聞かれたとき、「30歳くらい」と答える。
意外な顔をされる。みんなもっとずっと若い年齢を言うものと決めつけているのだ。いや、10代20代なんて戻りたくもないって。あんな成長期の苦しい時代に戻るなんて拷問だ。それに比べて、30代は「人生の初夏」だ。20代というつらい栽培時期を越え、収穫が始まる。そしてその果実はわりと甘い。

ということで、「若さ」なんてこれっぽっちもうらやましくないのだが、「若いときには出来たのに、歳をとって出来なくなってしまったことを知る」のはまた別の感情だ。悔しいというより寂しい。うらやましくはないんだけど、一抹の寂しさに胸がチリチリする。この感情を楽しめるようになったら上級者突入だろうな。

たとえば、若者と飲んでいるときとか。
「こういう鯨飲を昔はやっていたけど、いまはもう出来ないなぁ。昔なら負けないんだけどなぁ。いや、別にうらやましくないけどさ…」みたいな感情。この「負けた感」を楽しめるようになり、「キミ、強いねぇ」と素直に笑えるようになるまでもう少しかかるかも(まだ全盛期の自分の強さを誇示したいらしい)。

昨晩もそんなことを感じたのだった。
いや、酒でなく、マリオカートWii。

中2の娘に勝てないのである。
ゲーム類はほとんど得意なので、多少練習すればほぼ勝てる。と、思い込んでいた。やはり少しずつ反射神経とかが衰えているのかな。んー、負けた感を楽しめない。「キミ、うまいねぇ」とか褒める前に「昔はこういうの負けたことなかったんだけどなぁ」とか虚栄心が声に出る。顔も引きつっている。いや、別にうらやましくはないんだけどさ、でも、この衰えはちょっと我慢できないの!

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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