情報メタボ化する人々

2008年4月10日(木) 7:37:08

やっぱり政治ネタはメールがたくさん来ますね(笑)
昨日の記事は、書いたあと「んー、誤解受けそうな文章だなぁ」と思いつつ見切り発車したのですが、なんとか伝わったようでホッとしています。ただ、やはり説明が足りなかった部分もある気がするので自己フォローしておきます。

背景を説明すると、「チベット問題について何故何も発言しないんですか!」という強めなメールがあったんですね。昔は偉そうにいろいろ政治的発言をしていたではないか、と。昨日の記事はそれに対するお返事の意味合いがありました。一般化して書いたので少し真意が伝わりにくかったかもしれません。

複雑で微妙な政治問題(この場合はチベット問題)について気軽に発言することの怖さ。熟考して書いたとしても必ずエキセントリックに反対する人がいて、その人たちの強烈なレスポンスの凄さ(生きていくのがイヤになるような罵詈雑言。今回は中国が絡んでいるのでもっとヤバイと予想できる)。そういうのをたった独りで受け止めることの厳しさ。サイト更新が怖くなり辞めたくなるという衝動と本末転倒さ。などをお伝えしようと前半では思ったのでした。

別にヘタレ表明をしたわけではありません(笑)
ある程度以上のアクセスがある個人サイトとしては避けて通らざるを得ないトピックはある、ということです。

サイトをやっている方からは共感のメールが多かったですが、最近とみに「超エキセントリックなメール」が増えており、サイトをやっている側も慎重にならざるをえない、という現状があるのです。昨日も4人の方から「こんな酷いメールが来て、サイトをやっていく気力が萎えた。閉鎖しようと何度も考えた」という経験談を送っていただきました。炎上→サイト閉鎖もその流れですよね。

こういう流れには社会的背景があると考えています。

拙著「明日の広告」でも書いたのですが、世の中に流れている情報はここ10年で410倍にも膨れあがり(総務省調査)、生活者はほとんどの情報をスルーせざるを得ない状況です。そうなるとどうなるか。「情報洪水の中から欲しい情報だけ選択して摂取する」という行動に出ざるを得ないわけですね。情報が多すぎて。
10年前までは情報がそこまでは多くなかったから、例えば新聞などでも「興味ない情報も読んでいた」。それがもっともっと選択的になっていると思われます。

そうするとどうなるか。
言うなれば「情報メタボ」というか「偏った情報の過剰摂取」が起こります。バランスのとれた情報摂取をしなくなり、自分の欲しい情報だけ過剰に摂取する。そして肥満する。オタクの出現はその前兆(先鋭)でした。

ネットにおける検索って「自分の興味あることを調べる」という選択的能動なので、彼らの「偏った情報の過剰摂取」を加速させます。たとえば「子供」「子育て」「子供の権利」みたいな情報に興味ある人が、検索などによって情報肥満したあげくモンスター・ペアレンツ化する。それを是正する情報や常識をバランスよく摂取しない。

バランスが悪いから「でもさ、そんなこと、普通しないよ」という常識がわからない。彼らの中の「普通」が偏っているのですから。だからいろんな分野でモンスターが跋扈する。狭量で自分勝手なクレーマーがたくさん育つ。自分が興味のある情報の方向に膨張した自己が暴走しだす。
政治分野だと「自分の正義」を信じて疑わないモンスターが出てきます。いまどき「正義」なんて「アメリカから見た正義」と「イスラム社会から見た正義」が全く違うように、実に多面的なはずです。たったひとつの正義なんてどこにもない。だから「妥協と落としどころ」が必要なわけで。

ま、短い文章中で語る問題でもないので多少論旨に飛躍があるかもですが、「偏った情報の過剰摂取」と、その結果としての「偏った情報肥満(=情報メタボ化)」は、これからも加速すると思われます。

ということは、今後、どんな発言をしても「危ない」。理論上は。
どんな話題を書いたとしても、エキセントリックに反応する「情報メタボ化したモンスター」が現れてくる可能性があるわけです。自分だって知らぬうちにモンスターになっているかもしれない。あぁイヤだ。

とはいえ、論説・啓蒙や主義主張をメインにするサイト(ブログ)なら、それでもそれを乗り越えていくべきでしょう。そういう目的のサイトなのですから。
でも、ボクのサイトの目的は別にあります(このこともそのうちちゃんと書くつもりです)。なので昨日「サイトの更新継続>政治の話題」と書いたのでした。

ボクはこれからも、発言すべきと強く感じた問題については発言していきます。草の根の発言が積み重なって世の中をよりよい方向に変えることがあると信じていますし。
ただ「情報メタボ化」した現在、どんな話題もものすごく慎重に書かないとヤバイのは確かなのです。特に微妙な政治問題。これはもう個人サイトで受け止めるのは無理かもなぁ(論説サイトは除く)。

ちゃんとした反対意見は滋養強壮として摂取してます。ありがたいです。でも「情報メタボ化」したモンスターの一方的な追求メールは本当に酷い。これは経験しないとわからないでしょう。全身の血が下がり気が遠くなります。「自分の考えを述べているだけなのだから堂々としていよう」と脳みそが判断しても、心が正常に動かない。そのくらい酷い。

こんなこと書くと「ブログを始めようと思っていたのに…」と尻込みする人が出そうですね。いまやっている人も萎縮しちゃうかもしれない。
でも、それでもボクが続けているのは何故だと思います? それを上回ってあまりあるイイコトがたくさんあるからです。それは保証します。それだけは確か。だからそんなこと言わず始めましょう。続けましょう。

って、今日も長くなっちゃいました。読みにくくてスイマセン。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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