古い水夫

2008年3月14日(金) 8:47:08

最近若者に会うことが多い。
多いのは就活のOB訪問。拙著「明日の広告」を熟読した上で会いに来る方が多く、学生なのにやけに広告事情にくわしい(笑)。んでもって質問が濃い。「新聞メディアの復活はどこがポイントだと思いますか?」「コミュニケーション・デザインにおけるスケジュール感について聞きたいんですが」「ソーシャル・メディアが乱立する世の中になると消費行動はどう変わってくるとお考えですか?」……いつの間にか額に汗を浮かべているワタクシ。でも「お前にはまだ早い!」とか、白い犬みたいに一蹴するには相手が真剣すぎる。すごいな。頼もしいな。こんなに広告のことを考えてくれている。

学生だけでなく、現場の若手と会うことも増えた。
昨晩はある会社の若手に招かれて、お店で飲みながら広告の話。13名の初対面な若者たちに囲まれて熱心にいろいろ聞かれる。やはり「明日の広告」を全員読んでおり、ベースをあの本に置きつつより深い話になっていく。でも学生さんと違って現場を踏んでいる人たちなので、理念的な話というよりは実践的な話。みんないろいろ考えてるなぁ。仕事や業界に危機感がある分、考えが深い。すごいな。頼もしいな。広告業界に元気があったボクの若い頃はこんなに深く考えていなかった。

「古い舟をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」

この言葉とともにひとり広島から出てきたのは吉田拓郎だが、こういう若者たちと会っていると、自分が今、まさに「古い水夫」なんだと自覚させられる。40代中盤の働き盛り。でも確かに古い水夫ではあるんだな。この自覚はとても大切かもしれない。

もちろん同等に争ったら絶対負けない。でもそれは慣れ親しんだ古い舟の上だからだ。
古い水夫のそのやり方がこの舟の速度をどんどん遅くしてきたのは事実。もう先頭に立たず、後ろから支えるスタンスに変化しなければならない年代なのだ。ただ、この「変化」は実に難しい。有害な老人が社会の中枢にいかに多く蔓延っているかを見てもそれはわかる。

吉田拓郎があまり表立って活動しないのは、病気のこともあるだろうが、「自分がすでに古い水夫である」という自覚をある時期に持ったからではないか、と、ちょっと思った。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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