コンビニでの朝の挨拶

2007年10月10日(水) 9:28:52

通勤途中にいつも寄るコンビニがあって、そこの若い女の子を気に入っている。
別に好みでも何でもなく、特徴ある顔をしているわけでもない。ただ「見事」なのだ。その仕事ぶりが。

まず、早い。レジ前の行列は彼女の列だけどんどん捌ける。それを知っている毎朝の常連さんはどんなに列が長かろうが彼女の前に並ぶ。だから他の列よりいつも1.5倍は長い。
そして明るい。手を忙しく動かしながら常に声を出している。「おはようございます。毎度ありがとうございます。お疲れ様です。121円になります。はい頂戴します。ありがとうございました。またどうぞご利用くださいませ。ありがとうございました」と、ボクに向かって言っているその間にも、入店してきたお客さんやレジ前を通ったお客さんに「おはようございます。ありがとうございます」と呼びかけている。
そして笑顔。うそっこの笑顔はすぐわかるが、彼女の場合、客の目を見てきっちり笑う。
んでもって、勤勉。レジがヒマになるとすぐ店内の整理にかかる。手を休める瞬間がない。彼女が来てから約1年、このコンビニは手作りPOPがめちゃめちゃ増えた。全部彼女が作っているに違いないと睨んでいる。

あまりに「見事」なので、気押されていた部分もあったかもしれない。
挨拶されても笑顔を向けられても、それに応えず、ブスッといつものミネラル・ウォーターを受け取り、通勤していく日々が長く続いた。せわしない朝のコンビニではベルトコンベアーみたいに流れていくのが当たり前だ。後ろに並ぶ人々の手前、そそくさと列を離れる方が優先だ。レジでの挨拶になんて応えないのが普通なのだ。

でも、いつしかちょっと耐え難くなってきた。自分に。
なので、ある日声を出すことにした。
「おはよう」
目を見て。ちょっとだけ微笑んで。彼女だけに聞こえるくらいの小さな声で(周りに聞こえるとちょっと恥ずかしい)。
彼女はパッと顔を輝かせて、いつもより大きな声で「おはようございます!」と応えてくれた。

それ以来、ボクの毎朝の挨拶は少しずつ大きな声になっていっている。
不機嫌そうにレジに行列する人々の中では妙に目立つ。あのオッサン社交辞令の挨拶に応えてるよーとか失笑されてるかもしれない。でもまぁいいのだ。毎朝砂漠に水を撒き続けている彼女のモチベーションを少しでも支えて上げられるなら、それで良い。

なんか新聞の投書欄みたいな話でスマン。
でも「挨拶は人を変える」ってのは本当だな。相手ではなく、自分を変える。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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