深夜のお茶室

2007年4月13日(金) 7:58:10

お恥ずかしいことではあるが、茶道の心得がない。
母が多少するので飲むことは飲むが、作法などはよく知らない。年齢的にそろそろ知っとかないとなぁとは思っていた。

昨晩、武者小路千家の家元後嗣である千宗屋さんとお会いする機会を得た。
紹介してくれる知り合いがいて一緒に夜ご飯でも食べましょうということになったのだが、その予定を決めるメールのやりとりの中で千さんから気になるひと言が…。

> 食後に家でお茶でもどうでしょうか?

どわっ!
千家でお茶っ!
若宗匠自ら入れてくれるお茶っ!

ヤッバイなぁ。礼儀も作法も何にも知らないよ…。
でも、これだけの相手だと、知ったかぶりや見栄が全く通用しない分、逆に気が楽である。もう正直に「何もわかりません」と告白し、自然体で行くしかない。ネットや本でにわか予習しないことにして、虚心坦懐に行くことにした。

そんな感じで、ちょっと緊張しつつ、神楽坂のある店へ趣いたのだが、実際お会いした千宗屋さんはボクより一回りほど若く、とても気さくな方であった。ちょっとだけホッとして正座を崩すワタクシ。

紹介してくれたヒトやその友達が「千くん!」とか馴れ馴れしく呼ぶのを最初はドキドキしながら聞いていたボクであるが、だんだん慣れ、年下ということも手伝ってだんだんタメグチに。で、お誘いを受け、夜22時ごろ、東京の武者小路千家にお邪魔したのである。

まずは探険(笑)。
いろいろ見学させていただく。ほのかにお香が香る中、それぞれの部屋の用途やら利休像やら掛け軸やら、家元後嗣のくわしい解説つき。居間に入って少ししゃべったあと、広間の茶室に移っていよいよお茶である。正客の座に座らされ、いきなり試練。美しい手元に見とれていたら目の前にスッとお茶を出された。

「あ、あの、どうやっていただけば?」「では、簡単にお教えします」

覚束ない手元を恥じつつ作法をこなし、ズズズと一杯。
……あぁ。うまい。とても柔らかく口に入ってきたあと、思ったより強く味と香りを主張して、後味すっきりスゥと消えていく。なるほどおいしいお茶とはこういうものか。舌よ鼻よ、覚えろ。

二杯いただいた後、ワガママを言って黒田泰造作の白磁を見せていただき、それでまた点てていただく。あぁ器が変わると味も変わって感じられるなぁ。

ふと気がつくともう24時すぎ。
広い武者小路千家を2時間以上独占し、若宗匠のご指導つきでお茶をいただいてしまった。お茶(ほぼ)初体験としては最上級。ありがたいことです。

心なしか終電の車内も上品に感じられる(←影響を受けやすい)。
「和」の静かな世界に数時間浸るだけでどうしてここまで心が洗われた感じになるのかな。お茶の味を思い出しながら葉桜見物して、ゆっくり歩いて帰った。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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