店を勧めるのって勇気がいる

2007年4月 3日(火) 19:29:27

昔の上司がなにかとボクを「おいしい店の電話帳代わり」に使っていて、週に一度は携帯にメールが入る。「いま○○にいるんだけど、どこの店がうまい?」って調子。で、ボクも自分が出来る範囲でニコニコそれに応えている。もちろん誰に対しても『電話帳代わり』をするわけではない。彼はわりと応え甲斐があるのだ。なぜなら「ちゃんとボクのセレクトを喜んでくれる」からである。喜んだ末、うれしい感想も言ってくれる。まぁ舌の相性もいいのだろう。

店を褒めて紹介する、というのは実はとても勇気がいる。
紹介した後、いつもドキドキする。もしイマイチだったら「あいつ、こんな店をおいしいと思うんだ」「あいつの舌もこの程度か」とか、密かにバカにされる可能性がある。自分の舌力とかセンスをそのことひとつで判断されちゃうような怖さがある。

逆にけなすのは非常に簡単。
「あの店はこの辺がダメ」「この店、みんなは褒めるけどいまいちおいしくない」とか言っとけば、なんか「舌力がありそうな自分」や「ヒトより経験値の高い自分」とかを演出できるし、もしその店がおいしくても「もっとおいしい店を知ってるんだろうなぁ」とか思われるだけ。そう、けなすのは簡単。褒めて勧めるのは度胸がいるわけだ(そういう意味で「好きな店リスト」はとても度胸がいる記事だったりする)。ま、映画でも本でも、同じだよね。

で、その度胸や勇気をちゃんと推察してくれて、きっとイマイチと感じるときもあるだろうに、毎回きっちり喜んでくれる彼は「おいしい店を勧める甲斐があるヒト」のひとりなわけですね。

昨晩もその「昔の上司」から携帯メールが入り「○○あたりに行くんだけど、近くにいい店ない?」と聞かれた。
3つ候補を上げて返信。そのうちのひとつに入った彼から電話が入る。「いや〜、うまい。うますぎるよ。ねぇ、佐藤も来ない? ご馳走するからさぁ。おいでよ。ね?」

なんちゅうか、このヒト、相当マイペースでもある(笑)
まぁたまたまわりと近くにいたので、ボクもそこに合流することにした。お、ギンポ(銀宝)が出てるじゃん! 桜の葉の変わり蕎麦もある! 季節やねぇ〜。うわっ、ギンポうま〜。桜の葉っぱを練り込んだ変わり蕎麦切りもうまひゃひゃ〜。自分で紹介しながら、この店やっぱうまいわ。

「いや〜、うまいなぁ。うまいよ。さすがだ。ありがとう」とちゃんと感謝されたボクは、調子に乗って近くの名店もいくつかお教えした。そのたびに「へー! 確かにここもうまそうだね! ちょっと名刺だけもらってくる。あ、そこの店もうまいの? 良さそうだねぇ。いつ来ようかなぁ」とか大げさに喜んでくれる。で、実際数日のうちに行って、また感想を言ってくれるのだ。うはは。こちらこそ喜んでもらってうれしいっすよ。またご一緒しましょう。どうもご馳走様でした。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

アーカイブ

同カテゴリーの他記事