150円の壁  --98.10.14




お金にはあんまり執着がなかったほうだが、この頃やけに気になってきて困っている。

原因は「出版」である。

ボクのページによく来てくださる方はもうご存じかもしれないが、本を出すことになった。
今日は14日だから、東京ではあさって、10月16日には並び出す。
関西その他は土日か、土日に配本しないところでは月曜日から並び出す(くわしくはこちら)。

平積みしてくれる書店が多いという情報が入ったので、ちょっとというかかなりワクワクなのだが、このワクワク感が「ケチ」に繋がってこようとは当初予想だにしなかったのである。





もともとこの出版は「たなぼた」なものであった。

出版など全く意識せず(当たり前だけど)、お笑い紀行文としてぐだぐだとこのホームページに書いていた1コーナー「さぬきうどんをCHAIN EATING !」がたまたま本になることになったんだから、まったくの大ラッキーなのであった。

話があったのはまだ第4部に手すらつけていない頃のこと。

まだ第3部までの未完成品なのに、それを読んでコスモの本の石田社長が「本にしましょう!」とメールをくれたのだ。

(うーん、あなたの度胸には脱帽です、石田社長)



それが今年の6月9日。
話はとんとん拍子にすすみ「秋口出版目標」と決まった。


で、今年の夏はべらぼうに忙しくなったのだった。

その時点でもうひとつのプロジェクトの出版が決定しており、秋から冬にかけて一気に2冊出すことが決まってしまっていた。
そのうえ、いろんな事情で「家を建てる」などという案件が勃発して、設計やらなにやらの「普段ならイヨ〜に面白いはずの作業」が重なって起こった。
もちろん仕事は異常に忙しい・・・・・。

重なる時って重なるんだねぇ。

本なんて一生に1冊出せるだけでもうれしいのに、一気に2冊。
家なんて一生に1回作れればラッキーな上に、設計作業って人生で一番おもしろいかもしれないのに、よりによってこんな時に同時に。



つうことで、今年は上司に交渉して無理矢理2週間も夏休みをとって、家にこもった。
横暴なことに優子と響子を東京のボクの実家に行かせて、とにかくひとり、パソコンに向いっぱなしの2週間だったのだ。


7月末の時点で第4部は書き終わっていたから、まぁあとは全体をまとめるだけさ、と思っていたんだけど、これがあーた、ここからの推敲がめちゃくちゃ大変だったのである。


ウェブだと横書きでしょ?
それを縦書きに直すだけでもめちゃくちゃ読んだ感じが変わる上に、ボクは改行・スペースを多用してスクロールを効果的に使うタイプの書き方をしていたから(勝手にウェブ文体と呼んでいるのだが)、余計違和感が大きくて、なんだか文章をすべて変えたくなってしまうのよ。

縦書きが出来るワープロソフトに移して、実際の本と同じ行数配分してみると、改行がめちゃくちゃ間抜けに見えるわけ。

つまり、














こーんなに改行して、「ため」を作ったりすると、縦書きだとおバカに見えるだけなんだよねぇ・・・。

ページ食うしさ。

それをあーでもないこーでもないと直しつつ、内容をいじりつつ、新しい章を書きつつ・・・


まぁでも、楽しい苦労ではあったなぁ。
そうして時間をかけているものが確実に活字になるんだから、苦しいなんて言ったらバチが当たるかも。







さて。

すべてを出版社に入れてから、じわじわと「出版ブルー」がやってきた。



こんな本を出してもだれも面白いと思わないのではないか、あそこの表現がヘタクソだったのではないか、こんな本を出すのはバカを公表しているようなものなのではないか、あーあそこをこう書くべきではなかったか、こんな本だれも読まないんじゃないか、いやそれどころか世の中の単なる迷惑ではないのか・・・。



イケイケですっかり酔っ払っていたのが、時間が経って「二日酔い状態」になったわけですね。

簡単に言うと自信喪失。
もう誰にも読まれたくない、恥ずかしすぎる、どこかに隠遁したい、お願いして本出すのやめてもらおうか・・・

本出せるだけでも「たなぼた」の大ラッキーなくせに自意識過剰もいいところだねまったく、と今では思えるけど、その頃はなんだか逃げ出したい気分だった。




ホームページではじめて出版の告知をしたのは10月1日。

その時はまだそんな状態だった。


だが。
そんな気分がふっとぶことがその夜から起こったのだったった!




当日の夜から、実に温かいメールがたっくさん飛び込み始めたのだ!


ここにいっぱい引用しようかと思ったけど、そんなのもったいなさすぎ!

自分一人で読みかえして一生楽しむもんね〜〜〜〜〜!



寄稿してくれた香子さんも日記でこんなエールを送ってくれた。

出版を喜んで祝福してくれる人達がこんなに・・・!










この方々のメールだけで、ボクはもう幸せです。

満ち足りてしまいました。

インターネットをやっていない物書きにはこの感動がないのだろうなぁ。
読者の反応がこんなにリアルタイムで返ってくるなんて(しかもまだ出していないのに)、普通の出版ではありえないことだろうから。



まぁそんなこんなで、あしたにも本が刷り上がる。

売れても売れなくても、もうどうでもいい(石田社長はそうではないだろうが)。

この方々ひとりひとりの祝福を胸に、長く生きていけるのである。






え? で、なんで「ケチ」になったのかって?




だって!

その本「うまひゃひゃさぬきうどん」は1冊1500円なんだけど、印税は1割だから1冊につき150円!

つまり、
メールをくれたり、くれなくても陰ながら応援してくれている方がわざわざ本屋に行って1冊買ってくれて、そしてやっとボクに150円が入るわけ。



ひゃ、ひゃくごじゅうえんが、ものすご貴重に思えるのだ!


エビアン500ml・・・140円!
しえ〜〜〜「おひとり様分」!!! ひとりの人があの本を買おうか買うまいか迷った末買ってくれてやっとこの水が飲めるのか・・・!!!
と、とてもじゃないが、の、飲めない!


週刊文春・・・300円!
どひぇ〜〜「おふたり様分」!! 温かいメールをくれた方が二人分。それでやっとこの週刊誌が買えるのか・・・!
お、オレには、か、買えん!!


鯖の塩焼き定食・・・750円!
ぶしょ〜〜〜〜〜!「5人様分」!!!! 5人もの人がわざわざ本屋に行って買ってくれて、やっとこの鯖塩が食べられるのか・・・!!! く、喰えん!! 口が裂けても、オレには喰えん!!



いちいち150円が頭をよぎる。
いちいち「これ買ったら何人分なんだ?」と計算してしまう。



靴下3足1000円・・・「7人様分」!!!

ビール飲み放題3000円ぽっきり!・・・「20人様分」!!!

散髪4200円!・・・「28人様分」!!!

フレンチ1回15000円・・・ひゃ、ひゃくにんぶん・・・?!




ひえ〜〜〜〜!
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・






こうして、佐藤家は、150円を基準に暮らし始めたのである。


本を出すのも良し悪しなのだ。



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