「ねぇ、キミも何かホームページつくらない?」 それはボクから優子への、そんなひと言から始まった。 「なによ、急に」 「いや、ふたりでやったらさ、面白いかと思って」 3年前の今頃、ボクは急に思い立ってホームページを作り始めた。 キッカケはいろいろあるのだが、ここでは書かない。 まぁ簡単に言ったら「伝達欲を満たすため」みたいなことなのだが、ここでは書かない。 「伝達欲」って「食欲」「睡眠欲」「性欲」の次に来るくらいの人間の根元的な欲望だと思うんだけど、ここでは書かないってば。 とにかくホームページを作り始めた。 ページミルとかビルダーとかいう便利なものがなかった時代だから、全部手作業でhtmlを打っていた。というか、未だに手作業。 んで、作っているうちにあることに気が付き、ろくにキーボードも打ったこともない優子を誘ったのが冒頭の言葉なのだ。 htmlのタグなんてボクがかわりに全部打たなければならないであろうのに、だ。 「・・・でもなにも発信するものがないわ」 「なにかあるだろう? 何が好きなんだ?」 「うーん・・・・チーズが好きだけど・・・・・ ホームページに書くなんておこがましいレベルだしなぁ。 作文も苦手だしなぁ・・・」 レベルは関係ないのだ。 別に優子がなにをしようが、どの程度のレベルだろうが、かまわなかったのである。 とにかくホームページをやって欲しかったのだ。 その理由は、家庭崩壊予防。 ただでさえ帰りが遅いボクが、帰ってすぐパソコンに向かったりしたら絶対ケンカになる。 こっちはこっちでホームページにかなりはまりそうな予感があったから、ホームページはケンカになろうがやめないであろう。 ホームページか、家庭か・・・。 まぁそこまでの事態にはならないと思うが、とりあえず「パソコンと私のどっちが大事なのよ! キー!」くらいのケンカになるのは目に見えていたのである。 ケンカ、言い訳、ケンカ、口聞かない、ケンカ、御飯作ってくれない、ケンカ、反省、ちょっと仲直り、ケンカ、言い訳、ケンカ、口聞かない、ケンカ、反省、少し仲直り、ケンカ、反省しない、ケンカ、反省しない、ケンカ、無視、無視、無視、無視、諸行無常 ・ ・ ・ ・ ・ ドドゴビシューーー(家庭が崩壊する音) そ、それは予防しなければならない! そう、つまり、それを予防するために誘ったのである。 考え抜いた結果のボクの予防策としては「一緒にホームページをやれば家庭崩壊しないのではないか」ということなのだ(ホントか?)。 ボクのホームページの中に優子のコーナーを作ってそれを全面的にサポートして、彼女をハメる。 ホームページにハメる。 そうすればボクがパソコンに向かう気持ちも理解してくれるであろうし、協力もしてくれるのではないだろーか・・・ 「それ! それそれ! いいねぇ、チーズ! まだ個人でチーズのページ出している人いないしさ! 大丈夫だよ! 誰が読むわけでもなし。自己満足でいいんだって」 「でもな〜・・・まだあまり知らないしな〜・・・」 「発信しながら勉強すればいいんだよ、ね、決まり!」 そうして「Yuko's おいしいチーズ Pages」は始まったのである。 優子は知らないが、その影には家庭を守るために一大自己犠牲を覚悟したひとりの男の背中があったのであったった。 始めた当初はまだ内容も薄く、彼女もボクに言われて面倒くさそうに更新している感じであった。 が、だんだん優子がホームページとインターネットにはまっていくのが傍目にも感じられるようになった。 なにしろメールで反応があるものだからそりゃ面白い。 素人が書いたコンテンツにどんどんメールで「面白かった」だの「アレを食べてみたい」だの「あのチーズはどうなんですか?」だの、反応があるのである。 ほんと、インターネットって面白い媒体だよねー。 そんだけ反応があると、彼女も手ごたえを感じてくる。 そしてどんどんチーズそのものへの向学心に燃えていったのでありました。 なにせ夕食はもちろん、朝食にまでナチュラル・チーズが出てくるようになったのである。 彼女の勉強のためとはいえ、二日酔いの朝に食べるロックフォール、エポワッス・・・わりと辛いの、しくしく。 そのうえ、メールで知り合った丹羽さんというレディと一緒に「チーズを食べる会」まで主催するようになってしまった。 「チーズを食べる会」というのは、家庭では出来ない「7種類のナチュラル・チーズの食べ比べ」とか「シェーブルチーズをいろいろ食べてみる」とか「サボア地方のチーズばかり食べてみる」とか「ワインとのマリアージュを楽しんでみる」とか、毎回テーマを決めてチーズを食べる会である。 その「進行役 兼 説明役 兼 アドバイザー」を優子がしているのだ。 あの、単なるチーズ好きで、詳しいことはほとんど知らなかった優子が、である。 そしてそして。 ・・・ついに去年の夏には「わたし、フランスに行く!」と、響子とボクを置いてフランス・チーズ・ツアーに参加してしまうまでになってしまった。 チーズを作る現場を訪ねるツアーである。 1週間以上、チーズだけのために、フランスまで出かけたのである。 これは誤算であった・・・。 ここまでハマルなんて、そんなの予想外だよ〜! 2歳児響子とふたりで一週間・・・辛かったの、しくしく。 でも、現場を見てきたことで彼女の「チーズの知識」は「チーズへの愛」に変わったようだ。 チーズを食べる会でのチーズ説明も、ひとつ奥深くなったような気がする。 まぁ辛い一週間も無駄ではなかったのだな。 って感じで、西宮で隔月で開いている「チーズを食べる会」(正式名称「Afternoon Cheese Break」)は毎回大好評。参加希望者をお断りしている状態。 それだけでも驚異的だったのに、去年の末から京都の小仲酒店の小仲さんと組んで「ワインとチーズを楽しむ会」というのを京都でこれまた隔月で主催するようにもなってしまった。 ちなみにこれも毎回満員である。 ホームページを始めてそろそろ3年。 石の上にも3年とは本当にこのことなのだなぁ(遠い目)。 予想をはるかに越えたジャンプ・アップなのであった・・・。 そしてそしてそして。 それだけではないのである。 なんと、ホテルに講師として招かれたのだ! 主催はハイアット・リージェンシー・オーサカ。 「サロン・ド・フロマージュ」というチーズを食べる会の講師として優子は雇われたのだ。 しかも単発ではなく、少なくとも第三回目まで予定は決まっている。 なーんの資格もない単なるいち主婦である優子。 雇う側のホテルもなかなか勇気があるなぁと感心するのであるが、いままでのチーズを食べる会の実績と、まぁいち消費者としての視点が認められたということだろう。 第一回目はさきおとといの7/4(土)にあった。 定員40名はすべて埋まり、約2時間、優子はプレッシャーをもろともせずしゃべり通した。 うーん・・・・見直した。 まさか、ここまでやるとは・・・。 「ねぇ、キミも何かホームページつくらない?」 あのなにげない(っつーか下心ブリブリの)ひと言が、いちピアノ教師&主婦だった彼女の人生を、いま大きく変えようとしている。 ひょっとしたら、 ひょっとしたら、彼女はチーズで稼ぐようになるかもしれない。 ひょっとしたら、 ひょっとしたら、彼女はチーズで喰えるようになるかもしれない。 ひょっとしたら、 ひょっとしたら、彼女はボクを養ってくれるようになるかもしれない・・・ むふふふふ。 ひょっとしたら、 ひょっとしたら、 ひょっとしたら、 夢の家庭内ヒモ生活目前かぁ?! ボクの目の前には、いま、明るい未来が開けてきた。 よくぞ、ボク! でかした、ボク! よくあの時、あのひと言を言ったものだ! ェェエライッ!! 今年、ボクはたなばたの短冊に「たなぼた」と書いた。 願うはただひとつ。 たなぼたな人生、なのである。 |
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