壁ぎわに寝返りうって  --98.03.20




昨日、人間ドックに行ってきた。



うちの会社が契約しているクリニック(人間ドック専門医院、ですね)は11医院。

人間ドックなんてどこもそうは変わらないだろう、と、たかをくくっていたら、どうやらそうでもないらしい。

なんとその全部を回って評価している人が、会社にいた。


さすがに点数こそつけていないが「アソコは丁寧やけど看護婦がイマイチ。施設もぼろい。ココは全体に親切だけどインテリアがすっごいバブリー。ちょっと下品や」などと教えてくれるのだ。

看護婦さんやインテリアにはあまり興味がないので(ウソ。本当は興味津々)、

「ところで、検査自体が一番信用できそうなのは?」

と聞くと、

「まぁ、設備の新しさ、看護婦の腕、診察の丁寧さなんかから考えると、AかTやな」
「へぇ〜、Aは評判を聞きますけど、このTって聞いたことありませんね」
「ここは1泊するホテルが遠いねん。だから無名なの。検査はしっかりしとるぞ」



ふーん。今回はそこにしてみようか。



「逆にダメなとこってありますか?」
「うん。S。ここはアカン」

うひー。
いままでボクが3回も行ったところだーー!






過去、ボクは3回人間ドックに行っているが、ドックにそんな違いがあるとは知らなかったので、のほほん、と受けていた。

まぁこんなものなのかな、と無批判に受けていたのである。


そういえば食べ物についても始めはそうだったなぁ。

無批判に食べていた。なーんも考えず、ただ食べていた。ガイドブックの書き手の言うことをそのまま真に受けて
「ふーん、これがおいしい寿司というものか」
「なるほど、こういうのを美味しいフレンチというんだな」
とか思っていたのだった。


平たく言えば、自分の意見がなかった、のだ。





文明とは、ほんの少しの批判精神が作り上げる。

いままでの「人間ドックに対する無批判な態度」をボクは猛省した。
とにかく人間ドックを自分の視点でちゃんと比較していた人がいたわけだ。

ジバランならぬイシャラン、かな。

ちょっと、感動的であったなぁ。






で、期待のTクリニック。

良かったよ。うん。良かった。
なかなか満足だったのだ。「検査」という重苦しい感じがなく、リゾートのようなカジュアルさがただよっているし、とにかく診断は丁寧で流れもスムーズ。看護婦さんの感じも全体にとてもよい。

なるほど一口に人間ドックって言ってもいろいろと違うんだなぁ。検査内容は一緒なんだけど、受けている感じがずいぶん違うなぁ。

採血のときに、すごくかわいい看護婦さんがなんの痛みもなく素晴らしく上手に注射してくれたのも好印象だ。




ところで、ひとつ前の雑談の最後でちらっと触れたが、ついに「後門」を許してしまった

オプションで「前立腺検査および肛門診、直腸診」ってやつを受けたのだ。
検査の説明には「ベッドに横向きに寝て、医師が肛門から指を差し入れて異常の有無を調べます」って書いてある。



初体験、だ。



赤ちゃんのときイチジク浣腸をされたのを除けば、ボクの「後門」人生はずっと「一方通行」と決まっていたのである。

だいたいからしてあまりに恥ずかしいではないか。

死ぬまで誰にも見せたくない場所である。なによりも恥ずかしい。ウォシュレットを我が家に導入して以来かなり清潔な場所にはなったが、それでもまだカラダの中で一番汚い感じがする。そういう場所は他人にはみせたくない。第一見せるもんではない。そんなところに他人の指が入るのである。ゴムをはめているとはいえ、なんだかダメだ。そんなにイヤなら受けなければいいんだが、いや、でもそろそろ直腸は診てもらった方がいいし、えっと、ポリープがあったら除去しないといけないし・・・あ、そういえば、パンツははきかえてきたっけなぁ・・・





「佐藤さ〜ん!」




き、来てしまった!つ、ついに、その時が来てしまった。

ん? あぁぁぁぁ!

ボクの名前を呼んでいるのは、さっき採血してくれたあのかわいい看護婦さんではないか!

ま、まさか・・・・このかわいい看護婦さんが!?

このかわいい看護婦さんにすべてを知られてしまうのか!?




「ハイ、では直腸と前立腺を診させていただきます。こちらへどうぞ」
「はいはい」

余裕こいているように受け答えをするが、まったく余裕はない。
慣れているようにふるまおうとするが、足と手が一緒に出そうである。



部屋にかわいい看護婦さんに導かれて入る。

まさか、このかわいい看護婦さんが、密室で!?

ま、ま、まさ、か・・・・




「はい、どうぞそちらに横になってください」

部屋の中にはジイサン先生がいた。あーよかった。

「初めてですか?」とジイサン。
「は、はい」
「まぁ緊張しないでリラックスしてください」
「は? スラックス?」
「・・・・・・・・」




ボケたつもりが、大スベリ!




ボクは、あまりに緊張するとくっだらないシャレを言ってしまう悪いクセがあるのだ。
せめて場の空気を和ませて、自分に都合のいいように物事が運ぶように画策するのである。
ハッキリ言ってセコイ。セコイが、うまく行くこともある。

が・・・スベると、目も当てられない。(そりゃスベルわな、そのレベルじゃ)



「壁の方に寝返りうってください」とかわいい看護婦さん。
「はい」

スベったショックがまだ尾を引いている。

でも、ボクは、まだ挽回しようとしていた・・・小さい声で歌ってしまったのだ・・・沢田研二を・・・



「♪壁ぎわに寝返りうって〜」

「・・・・・・」




取り返しのつかない大スベリ!!





「そんなに緊張しなくてもいいですよ」

冷静に言われてしまった。読まれまくり。恥ずかしすぎ。
赤面しているとジイサンがゴム手袋みたいのをして近寄ってくる。


「はい。力を抜いて〜。        (あちゃー、すべりすぎたーなー)
 緊張してますねぇ、力を抜いて〜   (やっぱ歌はまずかったよなぁ)
 そうそう、             (ひえ!指が入口を探している・・・)
 はい、その調子で力を抜いて〜    (うひー、なんか塗っている)

 行きます、よ・・・         (!!!!!!!!!!
                    グムゥゥゥ、ウウゥウ・・・!!!)

 口でリズミカルに息をすると楽ですよ (はっ、はっ、はっ、はっ・・・
                    なんかヨガッているみたいで恥ずかしいぞ)
 お上手ですよ〜           (アヒー!グムゥ!オグー!)
 直腸はきれいですねぇ        (ブモー!う、動かすなぁ!)
 痔もありませんねぇ         (メウー!ゾワー!ピヌー!)
 ・・・               (あ、抜いている・・・ムキョー!!)
 はい、おしまいです」        (・・・・・)





いや、それにしても、そうか・・・挿入されるというのはこういうことか・・・
女性は、こんな風に、感じたりするの、か・・・
そうか、そうか、そうなのか・・・・・










え?
気持ちよかったのかって?



言えるのは、ただ一言。



オプション検査代1900円は、安い!!!!!




次も、必ず、受けます。(きっぱり)






P.S.

ここまで書き終わってゆっくり今日の新聞(夕刊)を見ていたら・・・なんと、大好きな作家の須賀敦子さんが亡くなっているではないか

「ミラノ 霧の風景」「コルシカ書店の仲間たち」「ヴェネツィアの宿」「ユルスナールの靴」・・・
これらの本達はボクにかけがえのない静かな時間を与えてくれた。
本当に、本当に、愛読作家だったのだ。

星野道夫といい須賀敦子といい・・・・・・

壁ぎわに寝返りうって、泣き暮れたい・・・。



ボクはこれから何を楽しみに生きていけばいいのだよう・・・。




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