ここ1週間ほど、小野不由美に溺れている。 小野不由美ぃ? 誰じゃそりゃ? って方が大半でしょうね。 実は僕もつい最近まで知らなかったのです。 作家。ファンタジー作家とでもいうのかな。もともとはミステリー系だったらしいけどよくは知らない。ボクが知ったのは「十二国記シリーズ」からだ。 「十二国記シリーズ」をご存知ですか? これは日本のファンタジーの傑作ですね。 さとうさとるの「コロボックル・シリーズ」に匹敵する出来。 「ナルニア国物語」と「ゲド戦記」と「ネバーエンディングストーリー」と「時をかける少女」を合わせて4で割って東洋風にしたような作りなのですが、設定も筋もキャラクター造形も、どれをとっても秀逸。なかなかです。 まぁ知っている人は「なにをいまさら大騒ぎしているのだ?このバカは?」ってことでしょう。このシリーズが始まったのがもう5年以上前ですからね。最新の「図南の翼」は去年ですけど。 ですのでここでそれについてくわしく言及するのは避けたいと思います。 ひとつだけ物語と関係のないことを言えば、こんなに「漢字」を美しいと思ったことは本を読んでいて今までなかった、ということです。本当に「漢字って美しい。すばらしい」と読んでいて思わせます。 それを実感するだけでもこのシリーズは読む価値がありますね。 ところで、 シリーズのその2は「風の海 迷宮の岸」という題名なのですが、それを大満足で読み終わって著者による「あとがき」を読んでいたらこんな文にぶち当たりました。 こうしてシリーズを抱えてみると、しみじみ自分の筆の遅さが悔やまれます。月に一作とか二ヶ月に一作とか書けると、あっという間にシリーズも終わって、また次の話にかかれるのになぁ……なんてことをしみじみ思うのです。 ---中略--- この筆の遅さで、しかもワープロがなかったら、なんてことを考えると背筋がさむくなります。この世にワープロさまがおいでにならなかったら、小野という作家はいなかったに違いありません。そういうわけで、老骨にムチ打って頑張っている我が家の98くん(ゾラックくんという)にエールをおくってあげてください。 ---後略--- !?!?!?!? ゾ、ゾ、ゾラックくん!?!?!?!? 我が目は同志を見つけた喜びにうちふるえました。 まさかこんなところでゾラックという文字を見るとは思ってもいなかったので、まさに意表を突かれてしまった。うーん、ゾラックという名をコンピューターにつけているとは……。 ゾラック……。 SFファンなら御存知の方も多いと思います。 J・P・ホーガンが書いたハードSFの大名作「星を継ぐもの」「ガニメデの優しい巨人」「巨人たちの星」三部作に出てくるコンピューターの名前。正確に言うと第2作目「ガニメデの優しい巨人」から登場するんだけど、これが本当に魅力的なコンピューターなのです。 名前が付いたコンピューターとしては「2001年宇宙の旅」のHALが有名ですが(このHALって名前、IBMの3文字「I」「B」「M」それぞれのアルファベット上位である「H」「A」「L」で構成しているって逸話も有名ですよね)、あのHALってコンピューターは面白みがなく人間的魅力に欠けます。 でもわがゾラックは、実に人間的。 冗談も言うし、人間の気持ちを汲んだりもする。 しかも、三部作の三、「巨人たちの星」ではゾラックは旧型コンピューターに成り下がっていて、ヴィザーという新型に比べるとあらゆる面で劣った作りに描かれているのです。 そこがまた悲哀を感じさせていていいんですよ。 三部作の読者は、ヴィザーの能力に脱帽しながらもどうしてもヴィザーを愛せず、ひたすらゾラックに共感するのです。そして……最後にゾラックがその能力を最大限に使って大きな仕事をするところで「タリー・ホウ!」という鬨の声をあげるのですが、そこでは思わず涙さえしてしまうのです。 わかりますよね、ホーガン・ファンなら。 この本を読んだ頃はまだ僕はコンピューターを持っていませんでした。 本当にアナログ人間だったので、PCに興味もなかったし一生持たないのではないかと思っていたくらいです。 でも、もし将来コンピューターを持つことがあったら絶対「ゾラック」って名付けようと心に決めていました。 そして、1994年冬。 あるきっかけがあって、Macintosh(LC630)を買いました。 ついにコンピューターが我が家に来てしまったのです。 ボクは、妻の優子におずおずとお伺いをたてました。 「このコンピューターの名前はねぇ、ゾラックと名付けようと思うんだけど」 「…………ハァ?」 「いや、このコンピューターに名前を……」 「…………………」 その時の優子の顔はまさしく 「きしょ〜〜〜! コンピューターに名前を付ける? なにそれ。なにこの人。オタクくせ〜! あ〜、きしょ。 さ、さわらないでよ!」 とばかりにゆがんでいました。 それ以来我が家ではこの話題は出ません。 優子もボクのあの発言は忘れたことにしているようです。 でもボクは心の中でいつもコンピューターに呼びかけていました。 ゾラック。今帰ったよ。 最初に買ったマックが引退していまや2台目ですが、名前は変わりません。 まわりに優子がいないのを確かめて僕は語りかけます。 ゾラック。調子悪いようだからノートンで直してあげよう。 ゾラック。今日は壁紙を変えてあげよう。 ゾラック。そろそろホームページ更新しないとね。 ……うぅ、われながらちょっと気色悪い。 そんな世を忍ぶゾラックとの語らい。 その孤独な日々に小野不由美は終止符を打ってくれたのです。 そうかそうか。 ボクだけではないのだな。 こんなネクラなことをやっているのは、ボクだけではないのだ! I AM NOT ALONE! ボクは、星飛雄馬の中に自分と同じ「野球ロボット」を見つけたオズマのように ニコニコ喜んだのでありました。 ちなみに小野不由美の十二国記シリーズは「講談社X文庫ホワイトハート」から出ています。 シリーズは5冊。順に 「月の影 影の海」 「風の海 迷宮の岸」 「東の海神 西の滄海」 「風の万里 黎明の空」 「図南の翼」です。読みやすいし時間もかからないから1回読んでみてください。 また、ゾラックが大活躍するのJ・P・ホーガンの三部作は、創元推理文庫から出ています。ちなみにホーガンはほかの著作もすべておもしろいですよ。 |
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