「アンフォール」の充実  --97.10.04




10日ほども前の話で恐縮なのだが。


東京は青山で、ランチタイムにポコっと3時間ほど時間が出来た。
どこか3時間つぶせるところ、レストラン、ない、か……

こういう時、フランス料理は便利である。
ちゃんとしたレストランに行けばゆっくり時間を過ごせて、なおかつ、その長時間を考えればコストパフォーマンスが高い。3000円とかで2時間はねばれるのである。

それで久しぶりにフレンチ・レストラン「アンフォール」を訪ねることにした。


何年ぶりかな。

この店は、要は五十嵐シェフに料理が食べられる小洒落たビストロ風レストランだったのである。
五十嵐シェフが銀座の「マノワール・ダスティン」に移ってしまって、どうなったのだろう、という興味もあった。菊池というシェフに変わったということはなんとなく知っていた。



話は変わるが(さして変わらないが)、
妻の優子が今年6月にはるばるフランスまで「チーズ旅行」に行ってきた。
そのへんのエピソードは妻のチーズページの中に「フランス・チーズツアー見聞録」としてアップしてあるからそちらを見ていただくとして、

一緒に行った、というかツアーを主催したフェルミエ社長・本間るみこさんがフランスで優子にこう言ったそうだ。

「今、日本で一番美味しいのはアンフォールの菊池クンの料理よ!」




う〜ん。食べたいなぁ……




まぁそんなことも記憶にあって「アンフォール」に出かけたわけです。

相変わらず狭苦しいキッチンが道路から見えて、ちょっと生活感が出てしまうシチュエーションなのだが(狭苦しいだろうがドアを閉めたらどうだろう)、まぁおいしい雰囲気があふれている店構えだ。前来た時よりもくすんでしまった感じだが、不潔感はなく、逆にフレンドリーになった気がする。

狭い店内である。

でも外観通り「おいしい雰囲気」にあふれている。
乗っているレストランのイキオイもあるのだろうなぁ。


ランチは3000円と5000円の2種類。

同行の女性は3000円、僕ともう1人の男性は5000円のを頼んだ。
昼にしては出費だが、3時間近くつぶすためにメインを2品は必須だ。

構成は「アミューズ(突き出し)」「オードブル(選択式)」「魚料理」「肉料理」「デザート(選択式)」「コーヒ or ティー or ハーブティー」

である。3000円のは「魚料理」か「肉料理」かを選ばなければならない。


オードブルが充実している。7つの中から一品選べるのだ。

どれもうまそう。


3人でシェアすることにして

「エスカルゴと骨髄、牛胃のロースト、赤ワインとエシャロットのピューレソース」
「牛舌のブレゼの冷製と有機野菜、ラヴィゴットソース」
「サーモンのマリネと丸麦のサラダ・コンソメジュレがけ」

をオーダー。
まぁランチだし「それなり」くらいの味だろうなと大きくかまえてワインを(昼からまったく…)飲んでいたのです。ボルドーはコート・ド・ブールの赤。

まず突き出しが「自家製ソーセージ、すりおろしリンゴ添え」。

「!」
うまい。血の香りがたっぷりの野性味溢れるソーセージだ。

これはあなどれないかもしれない、と思っていたらオードブルが来た。

「!!」
うまい。まったくうまい。こりゃうまい。あーうまい。

特に「エスカルゴと骨髄」が骨をくりぬいた容器で出てきてプレゼンテーションとしても素晴らしいし、エスカルゴや骨髄や牛の胃が実にバランスよく口の中で混ざりあって絶品だった。

アレ?
もうボトル一本あいちゃった?

うーん。じゃもう一本。
なんだかゼイタクなランチになってきてしまったぞ。
でも下手なディナーよりずっとうまいからしょうがない。
え〜と、じゃ、そのオススメの「シャトー・グロリア」を。
おお!濡れた髪の毛の香り(?)。面白くて、そしてうまい。


料理が出るタイミングが遅いのがちょっと玉にきずの店だが、今日は逆に好都合。
やっとメイン到着。
魚はスズキだ。3000円のコースはアイナメ。それぞれほどのよいポアレで量も充分。おいしい。なんだか幸せになってきたぞ。

5000円のコースはこれに肉が付く。
僕は「仔牛の脳味噌のロースト」と「豚のカシラの蒸した物」を迷った挙げ句「豚のカシラ」にした。ゼラチン状の豚足に近いモノを想像したのだ。同行の男性は「仔牛の頬肉の赤ワイン煮込み」。


「!!!」
うまい。

なんかうまさの表現に凝ってしまうとスベルことが多いので書かないことにするが(というか、まぁ、書けないのです)、実に丁寧で凝った味つけ。上手に手を抜いて、その分訴求ポイントを絞ってインパクト強く仕上げた料理だ。

そう、訴求ポイントが絞れているのだ。



ランチで重要なのは「わかりやすい味」だと思う。
インパクト重視、の、料理。

価格を考えてどうしても中途半端になってしまいがちな料理を出す店が多い中、「アンフォール」はちゃんとツボを押さえている。「ランチの満足」をよく知っているのだ。量的にも充分だしね。

これは夜も期待できるぞ。

きっと夜は夜なりのツボを押さえてくるはずなのだ。


訴求ポイントが絞れる人は、料理人に限らず、どこの世界でも優秀だよね。
そういう仕事に出会うとホントに幸せになる。


感心していたらデザートでまた感心させられた。
同行者がとった「桃のコンポート」がとても良かった。
これもポイントがしっかり絞られていて、食べている側としては、うーん気持ち良い、なのだった。



「アンフォール」、いいよ、いま。

僕のホームページでこの店は以前7点だったが、さっそく8点に上げた。


ちょっと気になるのは「ワインの値段」である。
前はもっとリーズナブルな物を多数とりそろえていた気がするのだが。

これでワインが安ければ、最高のレストランだ。

ワイン一本にオードブル1品。メイン1品。
それで10000円くらいで食べれたらなぁ……。

日本をそういうレベルに持っていく先陣を
こういう店にきってほしいものである。




ちなみにこの店は

渋谷区神宮前3-5-4
03-3402-6486

です。



追記(2000年1月)。

菊池シェフは現在「アンフォール」を辞めてテレ朝通りでオーナーシェフをしています。

「ル・ブルギニオン」
港区西麻布3-3-1/03-5772-6244



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