実況シーナ  --97.8.28




ちょっと前のことになるけど、

新幹線車内で椎名誠(いきなり敬称略)を見かけた。

見かけたというか、もろに前の席であった。
まん前。椅子の背から椎名のもしゃもしゃ頭が見える。

その日は(7月の29日だったと記憶している)徹夜明けだったので睡眠を少しでも取りたく、僕はグリーン車に乗って新大阪に向かっていた。

平均すると週1〜2回は新幹線を利用している僕は立派な新幹線ヘビーユーザーだが、(飛行機はなるべく使わないようにしている。日航機事故で会社の上司が亡くなっちゃったもので)思ったより芸能関係の人にあう率は少ない。

作家や学者は多いな。京都とかに行くことが多いのだろうか。



あぁ、椎名誠の話でしたね。

彼は背と鼻が立派でした。

でかい。背も鼻も。
背はともかく鼻の存在感をうんぬんされても困るだろうが、たいへん立派なのでした。

彼は僕の前の席に座ると、まず毛布を持ってきた。

グリーン車には毛布がある。

でもさ、シーナがひざ掛け毛布をするって、イメージ違うよねぇ。
南国慣れしてしまって冷房は苦手になってしまったのか?

彼は文春の連載なんかでよく「いまこれを新幹線で書いている」と書いている。

多忙なのはわかるが、ホントかよ、と思っていた。
だってヘビーユーザーとして言えることは、わりと新幹線の移動って疲れるんであって
揺れもひどいから目も疲れるし、隣のおっさんは覗いてくるし、とてもじゃないが落ち着いて連載を書くなんて環境ではない、と思うからだ。
よしんば書いているにしても新幹線の個室をとって書いているのだと思っていた。

が、

中腰になって覗いてみたら、おぉ、本当に原稿用紙を広げているではないか!

緑の罫の入った400字詰め。

まだ構想を練っているらしく、白紙の前でボーゼンとしているが、とにかく広げてはいる。

広げたひざ掛け毛布の上にテーブルを広げてその上に原稿用紙を広げている。
とにかく広げまくっているのだ。

お、そうこうしているうちに頭が前に傾いたぞ。


ついに書き始めた!

そうかそうか。やっぱり書いているのか。ビールも飲まず、ちゃんと書いているのか。

筆圧が強そうな、肩にチカラの入った書き方だ。
あれでは長時間の執筆はきついだろうに、と余計なことを心配してしまう。


そうこうしているうちに徹夜明けの僕は寝てしまったらしい。
ハッと起きたら浜松を過ぎたあたり。前のシーナは……

おぉ、見事に寝ているではないか!

失礼ながら原稿は……あぁ!全然進んでいない!!

そんな原稿広げ切ったままで寝ちゃっていいのか?
まぁいいけど、せめてリクライニングにして寝たらどうだ?


シーナは新大阪で一緒に降りた。

僕みたいな見知らぬ人に観察されてしまって、彼も災難だったった。



ところで、この文章は新幹線で書いている。
PowerBook5300csで書いている。
いや、意外と書けるもんだ。
これからは新幹線でものを書くことを「シーナする」とでも呼ぼうかな。

おろ? 
もうバッテリーがないの?

もうマックったら!
早いとこ2時間くらい持つパワーブックを発売しなさい!
40分しかもたないとは何事だ!
新大阪まであと2時間もあるではないか!




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