ええとですね、いきなりですが、ある町でドロボーを捕まえました(笑)
いや、マジで。
実際には同行者であるG氏が先に押さえつけて、ボクは追いついただけって感じなのだが(弱)、まぁ逃げてる男を捕まえて警察に引き渡したのは確かである。
意外と珍しい体験かもしれないので、超久しぶりに「不定期日記」に書いてみよう。
というか、2年以上ぶりなんですけど。
さなメモ書き始めてからホントにこっちはご無沙汰でスイマセン(書き方もマジで忘れた)。
さて、と。
どっから書くかな。
ええと、捕まえたのは北海道で、であった。
北海道には「講演」で行ったのだ。
本業(広告業)でも副業(文筆業)でもなく、まったく門外漢的なテーマで、旭川と帯広で講演したのである。
前出のG氏(30代中盤)の依頼であった。
G氏も勇気がある人である。門外漢にイキナリ長時間講演なんて普通させない。
聴衆は合わせて150名くらい。
昼13時から始まって、2時間でまず講義(パワポを使ってひたすら話す)。
次の2時間でワークショップ(各テーブルで話し合ってもらい、そこにボクが行っていろいろアドバイス)。
次の4時間で懇親会(ビール飲みながら今日のテーマについていろいろ話す)。
だいたい8時間の長丁場を2日間延べ16時間やった。
ここまでのマラソン講演はボクも初めて。
マラソンというか耐久レースに近い。大変ではあるが、終わった後の充実感はなかなかのものがあった。ウケもとても良かった。
で、講演も終わり、懇親会も終わり、心地よい疲れを懐に抱えつつ、G氏とその部下の女性、そしてボクの3人でタクシーに乗り込みホテルへ向かっていた時のことなのである。
時間は夜11時。
外はマイナス10℃以下の世界。
街灯も少ない暗い街に、積もった雪が白くふわっと浮かび上がっていてなかなかロマンチック。
北国で暮らすのもいいなぁ、とか思いつつ、ボクはタクシーの後部座席からぼんやり窓外を眺めていた。
ら!
そのロマンチックな風景の中を、必死に走っている3人組がいるではないか!
最初はふざけあっているのかと思った。
でも他に人っ子ひとりいない寂しい道だ。
しかも先頭の人間の走り方が尋常ではない。必死の走りって、普通の町ではなかなか見ない。
そのうえ後ろの2人がコンビニの制服を着ている。
「え…? コンビニ? あれ? あ、逃げてる! ドロボー!?」
と、思わず声を出したのである。
そしたら前に座っていたG氏の反応が早かった。
「え? 何ですか? あ! ドロボーだ!」
と叫んだかと思うと、間髪入れず窓を開けた。
追っているコンビニ店員に「ドロボーですか? ドロボーですか?」と大声で確認したあと、近隣一体に聞こえるような大声で
「ドロボーだ〜!
ドロボー!
ドロボー!」
と叫んだのである。
めっちゃ大声。
しかも叫び続け。
まずは近隣に知らしめ、ドロボーの気を萎えさせる作戦だ。
そして叫びつつ「運転手さん、追って!」と指示までした。
このG氏、北海道では超有名人である。
んでもって行動派としてよく知られている。
ボクもそれは認識していたのだが、ここまで瞬発力あるとは…。
脱帽だ。迷いがない。
読んでいる方は「当たり前の反応」と思うかもしれないけど、こういう突発事件の時に、一瞬の迷いもなく次々と策を打ち出し行動に移すのって、実はなかなか出来ることではないのである。
タクシーはぶーんと速度を上げて追いかけにかかる。
ドロボーは駐車場みたいなところでもたついて、なにか捨てようとしている。
ん、証拠隠滅しようとしてるな。
とりあえず駐車場の場所を覚えておく。アソコになにかを捨てた、と。
コンビニ店員はというと、振り切られてもう後ろにいない。
転んだのかもしれない。
ドロボーが細道に駆け込んだ。
「よし! ここで止めて!」とG氏。
ドアを開け飛び出す。
負けるか!
ボクもドアを開ける。
頭の中のイメージではジーパン刑事である。
チャーチャーチャーチャッチャーチャーチャーチャチャッ♪
頭の中の音楽も「太陽にほえろ!」である(テーマ音楽ではなく、スクランブルがかかった時に流れる挿入曲ね)。
そこまでの瞬発力では完敗していたボクも、ここぞとばかりに飛び出した。
飛び出したっ。
飛び出したっっ。
飛び出したっっっっっつるっ!
………うは〜、道がとんでもなくつるつるだよ、ジーパン!
と、とてもじゃないがダッシュできん。
夜11時を過ぎてマイナス10℃以下に冷え込んだ空気は道路をカチンカチンに凍らせている。
ボクが履いていたのはリーボックの赤黒スニーカー。
いきなりすっ転びそうになり、タクシーのドアに掴まる。
同行の女性が「ダ、ダイジョウブですか〜?」と気遣ってくれる。
情けない…。
でも、G氏をひとりで行かすわけにはいかない。
もしドロボーが刃物を持っていたらどうするのだ。
「キミはここで待ってろよ!」と、滑ったのを気づかれなかったふりをして、男らしく(?)女性に指示。
とりあえずヨチヨチと前に進む。
歩幅10センチの全力疾走。
オレはアヒルか!
ドロボーはボクたちを見て全速力で細道に入っていく。
(…ねぇ、このツルツルの道で、何でそんなに早く走れるん?)
道民のG氏も氷道をものともせず、全速力でドロボーを追いかける。
(……ねぇねぇ、いったいその靴底はどうなってるん?)
ボクはといえば、とりあえずアヒル走りでは追いつかんと判断。
だいたい30代中盤のG氏と違ってボクはもう40代中盤なのだ、と2秒くらいで言い訳を考え、ジーパン刑事からヤマさんへ路線変更する。
そう、ヤマさんは足ではなく頭を使うのだ。
追っかけはG氏に任せて、先回りを考えた。
角を左へ入る。あの細道はこっちに通じていそうである。合流地点を目指そう!
とはいえ、ヤマさんほど肝は据わっていない。
ヨチヨチとアヒル走りしながら、脳内で忙しくシミュレーションする。
合流地点でドロボーがボクに向かってきた時はどうしよう。
殴りかかってきたらどうよけよう。
ラグビーで習い覚えたタックルかますか。
つか、刃物持っていたらヤバイやん。
足にタックルしたら背中刺されるやん。
えっとえっと……。
合流地点前方で大声が聞こえる。
うわ、ヤバ。G氏、刺されてないだろな。
アヒル走りを早める。
合流地点に到着したら、暗闇の中、G氏がドロボーを地面に押さえて何か大声を出している。
大丈夫か?
不安になりながらよくよく聞いてみると…。
「ダメじゃないか〜! なんでこんなバカなことをするんだ〜!」
さすが瞬発力のG氏!
すでに説教している(笑)
あぁ、なんとか確保したみたいだな、と思いつつ、いつドロボーが凶器で反撃するかわからないのでヨチヨチの速度を上げて追いつき、ボクもドロボーの襟首を押さえる。多少反撃の気配があったドロボーも、男ふたりに囲まれて戦意喪失したようだ。
暗さに慣れてきて、ドロボーの様子が観察できるようになった。
見たらまだ大学生くらいな男子(あとで高校生と判明)。
痩せてて気が弱そうなメガネ君である。
あぁぁ〜。
「何盗った!」と聞いたら「携帯の充電器です…」と言う。
「す、すいません。反省してます」と、なんかリアリティを失った呆然さを見せる男子。
そんな、充電器なんてもので…。なんで…。
涙を浮かべている。
きっと出来心で万引きしちゃって、店員に見つかり、動転して逃げちゃったんだろうなぁ。
G氏はそういう同情的感慨など後回しにして、すばやく携帯で110番している(さすがだ)。
お、コンビニの店員が追いついてきた。殴りつけそうな勢いだったので、とりあえずそれを押さえる。
たまたま近くを通りかかった車が止まり、なにか手伝おうかと聞くのでとりあえず目撃者 & ドロボーが反撃してきた時のためにそこに残ってもらうことにする。
2分くらい経ってパトカー到着。あぁもうこれで大丈夫。
ドヤドヤとパトカーから降り立った警官にドロボーを引き渡す。
コンビニの店員が警官に説明をしだす。
G氏と目が合う。
お互い一瞬、目で会話する。
(警察ってさ〜、捕まえた方も事情聴取のために長時間拘束するんだよね〜)
(逃げましょう!)
(逃げよう!)
まさに「すたこらさっさ」という言葉が似合う逃げ方で逃げるボクたち。
警官のひとりが気づいて慌てて追ってくる。
「ちょっとちょっと! 前後の状況聞きたいんだけど〜! お願いしますよ〜!」
「いやいやボクたち追っただけなので〜。コンビニの人に聞いてくださ〜い。彼が全部知ってま〜す」
アヒル走りのボクは不利だが、なんとか警官を振り切り(途中であっちも諦めた)、タクシーに乗りこんだ。
こんな深夜から拘束されたら徹夜になっちゃうもんね。
まぁちゃんと協力する手もあったのだけど、実際G氏もボクも追っただけだから。コンビニの店員さんより先に走っただけだから。それに捕まえた時の状況はG氏が携帯で実況中継しているし。
…でも、結局逃げ切れなかったのでした。
え?
うん、ホテルにちゃんと帰ったし、警官も追ってこなかったよ。
でも、あるミスを犯したのだ。
そう、G氏が110番した携帯ナンバーで足がついちゃったのである(笑)。
後で聞いたのだが、午前2時ころ警察からG氏に電話があって「あのドロボーは悪質なので逮捕することにしました」と。
G氏もいろいろ事情聴取されたみたい(ボクは寝てたけど)。
んー、常習犯だったのかなぁ。
厳重注意で済むかもと期待したんだけど。
気の弱そうな青年だったのに……。
ま、とりあえず、誰も怪我しなくてよかったよかった。
以上、ドロボー捕り物顛末でござんした。
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