転勤して、CM制作の現場からインターネット・サイト制作の現場へ移った。 企業などのホームページ制作、サイト運営、Eコマース・コンサルティング、顧客データのマーケティング、果てはドットコム企業のCM制作、BSデジタル放送用CM制作などまでする部署である。 ウチは広告会社だから、もともと「インターネット系の仕事をしたい!」と志してウチの会社に入社してくるものはいない。少なくともここ2.3年前まではいなかった。だから必然的にマイナー勢力となる。ただ、確実に伸びる部署であるだけに注目はされている。そう、注目はされているのだ。だのに異様にマイナーである。それは端的に人数に現れる。 部長を入れて8人しかいないのだ。(インターネット系の部屋自体は50人くらいいるけどね。デザインの部署が8人なのだ) サイトのデザインの現場、である。ゴマンとあるスポンサーのほとんどが「Eコマースをやらなくちゃ!」と言っているときに、それを担当できる人間が8人しかいないのである。 うー、そりゃ忙しいわ。 たとえばX社というところのサイトを作るとする。 CMや雑誌広告なら「一度作ったらおしまい」である。あとは流しっぱなし出しっぱなし。 でも。 ホームページは一度作ってからが大変なのだ。 そう、個人ページと一緒。「更新がイノチ」なわけ(そのわりにはこの頃ボクは更新サボっているけど)。掲出した物に手を入れたり、内容変えたり、ニュースを出したり・・・毎日のようにこちょこちょ更新していかなければならない。更新するために各社と打ち合わせたりデザイン変えたり撮影したり、いろいろしなければならない。 つまり、未来永劫、仕事が終わらない理屈になる。 いや、それどころか、新商品とかをスポンサーが出すたびにホームページが膨れ上がっていく。んでまたそれの更新作業が増える・・・。 つまり、未来永劫、仕事が増え続けるのである。 8人・・・ ひとり一社しか持たなかったら、この部署で8社しか持てない。 そうもいかないからまぁひとり2〜5社くらい持つ。まぁ5つ持ったとしても(そんなに持ったら確実に死ぬが)、全員フル稼働で40社。そんなんでいいのか? >我が社。 うー。しかもスポンサーはまだ「ホームページなんかすぐ作れるだろ」的意識しかないから「あ、これとこれをこういうふうに更新しといてください。明日まで」とか指示してくるし。 この頃やっと、エレベーターで会う人会う人が「え?佐藤ってあの部署行ったの?・・・ご愁傷様」って言う意味がわかってきたよ。まだボクの仕事は本格的には動いていないけど、これが全部動き出したらいったいどうなるのだろう・・・。 さて。 その8人しかいない部署だが、作業環境はなかなかのものである。 ボクがもらったデスクは個人ブースになっていて、三方壁の半個室状態なのだ。いわゆるパーテイション(仕切り壁)で仕切られている個人ブースなのですね。素晴らしい。 すぐ横の窓からは東京が一望のもとに見渡せる。26階にあるせいでかなり展望はいい。デスクもL字型で使いやすい。PCはマックとウィンが1台ずつ使える。 で、普通はデスクには「固定電話」があるのだが、それがなく各自「PHS」を渡される。内線も外線もコレにかかってくるわけだ。固定電話がないから机の上がすっきりする。いいぞいいぞ。 と、 思っていたのだ。 最初は「こりゃ最高だ!」と思っていたのである。 でもなー、これが実に「淋しい環境」であることに、配属されて2ヶ月、最近ようやく気がついた。 パーテイションにPHSって初体験だったのだけど、こんなに没交渉になるのねー。知らなかったぜ。 なにせ「会社に行ってひと言も話さずに帰る日がある」のである。 仕事がたまたま少なかったりすると、確実にひと言も話さず帰るな、うん。世間話も噂話もおちゃらけた軟派な話もなにもない。そのうえ「伝言」すらないのである。 つまりほら、PHSだから「電話の取り次ぎ」がないのだ。 固定電話だったら一斉に何台もなったり、他の回線にかかった電話をとったりして「○○さーん、△△さんからでんわー」とか「△△くん、□□さんが折り返し電話くださいって」みたいに取り次ぐでしょ? 思えばあれは大事なコミュニケーションだったのである。 うざったいとばっかりおもっていた取り次ぎだが、非常に大事なことなのであった。だってそこに会話が生まれるじゃん、△△さんって怖い声ですね、とか、あの会社の受付っていい声ですねー、とか、○○さんってあの会社のなにを担当してるんですか、とか、さ。向こうも「佐藤さん、ありがとう」みたいなサインを電話で話しながら目で送ってきたりして、そこに多少なりともコミュニケーションが生まれていたのだ。 そうして会話というものは始まるものなのだ。 いままで気がつかなかったけど、非常に大事な触れ合いだったのだ。 それすら一回もない。 PHSだからあり得ない。 だって個人用にしかかかってこないのだもの。他人のPHSに出るわけにもいかないし。 そのうえ半個室。 となりの顔が見えない。立たないと見えない。たとえ立っても(忙しいから)皆いるときが少ない。いきなり立って話しかけるほどの会話もない。さりげない会話はそういうところからは生まれない。叶姉妹ってさー、みたいなくだらない話をブース越しにわざわざ切り出すバカもいない。 うー。 そのうえそのうえ、まぁネット系の部署に来るくらいな部員たちである。 みな、わりと個人主義だ。オタクとまでは行かないが、コンピューターに向かっているのが一番好きー、っていう人種の集まりなのである。会話が生まれる土壌がない。 みーんな、モニターに向かったままキーボードをダシャダシャ打っている。大阪のCM制作部署ではキーボードを打つ速度NO.1なボクであったが、ここではベスト8にやっと入れる程度に成り下がってしまった(8人しかいないんだけどね)。 あー、苦痛。 会話も触れ合いもない会社生活って、一見快適なように見えてなんだか苦痛。比較的マイペース&個人主義のボクですら、やっぱ苦痛。 こんなんなら独立してひとりでやった方がマシでしょ。空間的・仕事的共有感ゼロだとサラリーマンってこんなに無味乾燥な人生になってしまうのね。 ただでさえサラリーマン人生を歩んでいて幸せなのかどうか悩むのに、サラリーマン人生の余得である「辛さの共有感」とか「馴れ合いの気楽さ」とか「自分の居場所的安心感」がまるでないのである。 むー、苦痛だぞー。 でもでも、最大の苦痛は、これらのことではない。 ボクは孤独には強いし、噂話好きなオバサンでもないからこれらのことは実はまだ我慢できる。 許せないのは・・・ みんな、メシにいかないのよ!!! いいか、聞いてくれ。 この職場に来てから2ヶ月。あたしゃ1回も部員とメシに行っていないのよ。誘われてもいない。 わかる? 配属からこっち、昼も夜も1回もお誘いがかからない。 それどころか、みんな、昼メシとかに出かけないのだ。昼メシはもちろん夜の飲みも1回もない。仕事あとにちょっと一杯なんて想像もつかない。(一応歓迎会らしきものはしてくれたんだけど、これがまた特殊で・・・これについてはそのうち書きます。誰に話しても大笑いされるお話なんだけど、ちょっと今は書きにくいな) あたしゃね、大きな声で言いたかないが、メシだけが生きがいなの!!!(叫) でも普通、新配属の人が来たらメシくらい誘わないか? ちょっと飲みに行こう、とかいうのもこの2ヶ月で「一回もない」。 22時過ぎまで会議していてさすがに腹減ったと思っても、誰も「ちょっと軽く行きますか」みたいな言葉を発しない。「夜メシどーしよーかー?」とすら誰も言い出さない。黙って家に帰ったり別の仕事を始めたり、個々勝手なのである。むーん。 うー。 最初はボクが嫌われているのかと思ったけど、上述のように「嫌われるほどのコミュニケーションなどない」職場なので、それはないと思う。なにせこの2ヶ月、8人いる部員の中でまともに話したことがないヒトが4人いるくらいなのだ。嫌われるヒマすらないではないか。 それにしても、みんな腹が減らないのだろうか・・・。 ある日、メシにいかず(仕方がないからボクは普段ひとりで外に食べに行っているのだ)じっと皆を観察してみたが、実際12時過ぎても13時過ぎても人の動きなし。昼休み、という習慣がないのだ。「今日は何喰いますか?」みたいな会話すら生まれていない。これはボクの部署だけでなく、ネット系部署全体的にそうみたいである。ほとんどの人が黙々とデスクでモニターに向かっている。 メシくらい喰え!!! もちろん、みんながみんな忙しい、というのはある。 インターネット花盛りのいま、会社の中でも一番といっていいくらい忙しい部署ではあるだろう。 そのうえ、わりと個人主義の人が多いし、個人ブースだから自然発生的に「メシでも行くか」という感じがないのも、ある。 さらに、26階から地上に降りるのが異様に面倒くさいというのもある。 ほら、「タワー」っつうゲームあったでしょ。ビルの経営者になるゲーム。 あれのキーポイントはエレベーター。エレベーター待ちが長いと住民は出ていってしまうよね。このビルはまさにそれ。ボクはこんなにエレベーターが来ないビルを他に知らない。全部で20基もあるのに、まるで来ない。だから1階に降りるのが億劫という気持ちはよくわかる。だって、1階まで降りるのに5分くらいかかったりするんだもの。 でも、人間はなにか食べないと死んでしまう。 どこかで何かを食べているはずである。 ボクはメシも喰わず、3時くらいまで密かに観察を続けた。 ら、ひとり、またひとり、とデスクから消えては小さい袋を持って10分後に帰ってきたりしている。 見るとスターバックスの茶色い袋である。 カフェラテとサンドイッチ・・・。 モニター見ながら胃に流し込んでいる・・・ そんなの食事ぢゃない。メシくらいちゃんと喰え!!!!!! 特に若い部員! メシというのは仕事のいい句読点になるし、メリハリが付くのだ。 メシのあいだに話すくだらない話こそ、意外とビジネスネタになったりする。 いや、そんなことより、人生はメシと共にあるのだ。笑ってメシを喰ってゆったり生きるのがまず本筋だ。仕事はそのあと。ずぅーと、あと。 スローフードという言葉があるだろう。ファストフードなどやめて、ゆっくりメシを笑いながら喰おう、そういう人生を過ごそう、つう主張だけど、スローフードこそ人生そのものだとボクは思うぞ。 悪いこと言わないから、デスクでスターバックスのサンドイッチ食べるのは止せ。ちゃんと外に出て、温かいものを毎日食べようよ。 え? だったらボクが誘えばいいじゃんって? 誘われるの待ったり、食べないのを文句言うのではなくて、誘えばいいじゃんって? まぁな。 でも、ただでさえほとんど話したことない部員たちである。 もし。 もしコチラから「昼メシでも行かない?」って勇気を出して誘って、「いや、今日はいいです」とか冷たくあしらわれたら、立ち直れない! もう一生、メシなんて誘えないではないか! こうして今日もボクはひとり淋しく、昼メシのために外出するのである。 昼メシのために外出するなんて、我が部署では完全に異分子である。 うー、今日はどこへ何を食べに行こうかなー・・・。 あー、これだけ会話しない生活が続くと、噂話とかしたいよー。くっだらない話とかいっぱいしたいよー。一緒にメシ喰って、うまいねーとかマズイーとか感想を言い合いたいよー。仕事の愚痴もたまには言いたいよー。こんだけ暑いんだから仕事帰りに仕事仲間とビールの一杯も飲みたいよー・・・。 ええ。夜もほとんど外食しなくなりました。 だって部員だれも食べにも飲みにも行かないし、東京にいる友達だって仕事帰りに急に誘うわけにもいかないし(仕事が終わる時間が直前まで読みにくいの)。ひとりで行ける店やバーもまだ開拓してないしなー。 ・・・そんなこんなで、今日も飲まずに帰ってウルティマ・オンライン。 まぁ、それはそれでいいけどね。楽しいし。久しぶりにハマリ切れるゲームだし。 ハマル時には思いっきりハマルのだ。さぬきうどんや沖縄みたいに、ハマっているうちになにか別の展開があることなどよくあるのだ。中途半端にハマってはいけない。真剣にハマルのだ! 「アナタね。スローフードがどうの、ちゃんとメシ喰わないのがどうのなんて偉そうなこと言っているけど、せっかく作った夜ゴハン10分でかきこんで、速攻でウルティマしに行くのはヤメテちょーだい!」 ・ ・ ・ ・ ・ うー。 カフェラテにサンドイッチ食べながらモニター前でずっとウルティマしていたいー。 |
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