1999年6月「欧州、応酬」


欧州、応酬。
ヨーロッパの各国料理をテーマに4週連載しました。
ま、フレンチやらイタリアンやらいろいろあるよね。



「コズィ・コズィ」  イタリア料理:大阪・阿波座

大阪市西区立売堀6-7-43阿波座セントラルハイツ1F/06-6443-1298/日祝休/11.30〜14/17.30〜21
地下鉄阿波座駅6号出口から西へ50メートルくらい行った左側。不安になっても信じて歩け。

欧州、応酬

 大阪人はラテン系である。

 熱くて陽気で快楽的で、よく飲みよく食べる。そしてなにより、よくしゃべる。特に若い女の子。そのしゃべり方と言ったら「人生の大事件でも起こったの?」っていうくらいな勢い。
 でも内容をよく聞いていると「今日電車でオヤジに足踏まれてな、むっちゃ腹たってん」みたいなことなのだ。しょーもな。そんなこと大声かつ早口で話すなよな。

 イタリアン・レストランはなぜか気楽で肩が凝らないと相場が決まっている。だからなのか、そういう「しゃべくり娘」の精神が解き放たれるようである。
 はやりのオシャレな店に行くと、女の子たちが異様にしゃべくりまくっている。どのテーブルも「大事件」が花盛り。こりゃたまらん。どこかに静かでくつろげる大人のイタリアン・レストランはないものか……。

 「コズィ・コズィ」はそんな条件をきっちり満たしている。というか、まだあまり知られていない。地下鉄阿波座駅の近くにひっそりとあり、タクシー運転手が「こんなところにレストランなんかありません!」と自信たっぷり言い切るくらいなロケーション。
 店内は落ちついていて窓の大きなテラスもオシャレ。しかも料理が実に良い。よく工夫され焦点がビシッと来ている。サービスも丁寧で上質。コース設定もリーズナブルで思わず友達に自慢したくなる「隠れ家」なのだ。

 「しゃべくり娘」たちに占領される前に、急いで行くべし!……ってこんな風に新聞に書いたら占領されちゃうか。スマン。



「エル・ポニエンテ」  スペイン料理:大阪・北浜

大阪市中央区北浜2-1-21 つねなりビル1F/06-6220-6868/日休/11.30〜14/17.30〜22
淀屋橋の交差点から土佐堀通を東へ、そうだな、200メートルくらい歩くだろうか、その左側。

パエジャ!

 パスタのパエジャ、その名も「フィデウア」っていうのを食べたことあります?

 ボクも知らなかったんだけどバルセロナでは大流行だそうな。あ、その前にパエジャとは何かを説明しないとな。えーと、パエリアとも呼ぶ人も多いけど、大学時代スペインに旅行したとき現地の人はパエジャと呼んでいたからここではパエジャと呼ぼう。パエジャ。言うなれば「スペイン風炊き込みご飯」のことである。

 黒い鉄なべの上で米を多彩な具とともに炊くこのパエジャ。スペイン料理の人気NO.1なメニューである。その人気たるや、ホストクラブにキムタクがいたらさぞやというくらいなダントツ度(どんなんや)。
 でもね、この年(38歳)になるまでパスタのパエジャなんか見たことも聞いたこともなかったのだ。それが食べられる店があると聞いたら、行かずにおれようか!

 この「エル・ポニエンテ」のシェフは、フィデウアを日本に最初に紹介した人らしい。苦楽園にあった幻の名店「ドス・シバリス」のシェフをしていた人でもある。まぁそんな経歴など知らなくても十分うまい。懸案のフィデウアは米の代わりに極細麺(めん)を使い、カリカリになったパスタが口の中でほどける様が実に気持ちいい。なるほど、バルセロナではやるのもうなずける。「レンズ豆のパエジャ」もうまかったなぁ。タパスもスープもメーンもそれぞれきちんとツボに来ている味。火の通しが完ぺきだ。

 また、サングリアがちゃんとしているのもうれしい。簡易サングリアでお茶をにごす店が多い中、なかなか立派なのである。スペインワインの品ぞろえも見事。大きな窓から川を挟んで中之島公会堂が見えるロケーションもグッド。グループで訪れてモリモリ食べよう!



「ビストロ・ボンボン」  フランス料理:兵庫・苦楽園

兵庫県西宮市南越木岩町6-20/0798-72-5014/月休/11.30〜14.30/17.30〜21.30(土日祝〜21)
阪急苦楽園口駅を西に出て道なりに歩くと左手に花屋さんがある。花屋と喫茶店の角を曲がって20メートルほど行った右側。

サムライソムリエ

 関西の人は「肩が凝るからイヤ」とか言ってフレンチ・レストランを敬遠する。イタリアンの方が気楽でおいしいと決めつけている人も多い。そろそろそんな偏見は捨て去ろうではないか。カジュアルで楽しいフレンチが関西にもいっぱい出来ているご時世だ。

 え? バターたっぷりで胃がもたれるのがイヤ? そんな偏見も時代遅れだってば。確かにそういうクラシックな料理を出す店もあるが、大きな流れとして現代的であっさりした料理を出すところがめちゃ増えた。バターこてこてな店なんて逆に少ないくらいだ。

 ん? でもフレンチって高いからなーって? うーん、確かに高い店もある。でもね、フレンチは一度店に入ったら、デザート・コーヒーに至るまでゆっくり3時間以上粘れるから、時間に対するコストパフォーマンスはかなりいい。居酒屋行った後バーとカラオケをハシゴする、なんてことするより安い場合も多いのだ。このごろは格安なビストロも非常に増えたしね。

 夙川・苦楽園地区は、関西でもトップなフレンチ激戦区である。そこにおいて格安ながら本格的かつ良心的な料理で人気を博しているのがここ「ビストロ・ボンボン」だ。

 ここのランチはすごいぞー。量も質も、これだけ食べて2400円!と驚いてしまうこと請け合い。夜もリーズナブル。なによりうまい。魚の火の通り具合の完ぺきさは特筆すべきもの。雰囲気はカジュアルで気軽だし、マダムのさわやかなサービスも気持ちがいい。
 勉強家のシェフは、毎年1回はフランスに足を運び、最新フレンチを食べ歩いてくる。今年も6月の頭に行ってきたばかりだから、今この店に行くとフランス帰りの刺激的な味を満喫できる、かもしれない。



「アウデカース」 オランダ料理:京都・西院

京都市右京区西院西淳和院町2-2/075-316-2438/水休/11.30〜14/17.30〜22(日曜は夜のみ)
四条通と西大路通の角の北西ブロック。西大路通をひとつ北上して一つ目の角(だったと思う)を左。

ダッチユーノ!?

 オランダには恩義がある。日本人は歴史的にオランダに世話になっているのだ。そうではないか? 学生時代の日本史の教科書を納戸から持ってきて読むまでもなく、オランダ人にはいろいろ教えてもらってきたのである。まぁあちらにも下心があったのかもしれないが、こんな極東の小さい島にいろいろと文化を伝えてくれたことは確かである。特に徳川吉宗時代以降の「蘭学」の興隆はすごいものがあった。「蘭学事始」「解体新書」「ハルマ和解(わげ)」……懐かしいでしょ? 思い出すでしょ? そう、全部オランダ語なのだ。いまの英語勉強熱と同じような情熱をあのころはオランダ語に注いでいたのである。外国文化といえばオランダ文化のことだったのだ。

 だのに、だのに!オランダ料理の店ってほとんど見かけない。あれだけ影響を受けながら、オランダの料理は日本に伝承されていないのである。うーん、ひょっとしてオランダ料理っていう分野自体がないのだろうか?

 と思っていたら、京都でオランダ家庭料理の小さなレストランを見つけた。それがここ「アウデカース」である。クレープ状になった「オランダ風パンケーキ」や、あちらでは大変ポピュラーな「スタンポット」というマッシュポテトの料理。「生ニシン」「ムール貝のワイン蒸し」「スペアリブ」……夢中で食べてしまった。めちゃうまいのだ。ドイツ料理をより女性的にした感じと言えばわかるだろうか、とにかく素朴で温かくて豊かな料理である。オランダビールもいっぱいある。

 ぜひ一度、オランダを知りに訪れて欲しい。なにしろ日本人は昔からオランダに恩義があるのだ。もっとオランダを知ってもいいのではないか?



文章:さとなお(satonao@satonao.com) イラスト:中村三奈(minasann@syd.odn.ne.jp)


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