2000年4月「カジュアルに、非日常」


たとえばフレンチとかで王様気分の「非日常」を味わうのもいいけれど。
やっぱりカジュアルに、気楽に、非日常感を楽しみたいよね。
今月はそんな「非日常感」の特集。あ、気がつけば「兵庫県」ばっかりになってしまった。許せ。



「オーベルジュ・ド・コム・シノワ ROKKO」  フランス料理:兵庫・六甲山

神戸市灘区六甲山町北六甲4512-249/078-891-0492/12〜22/水休
場所は六甲山山頂付近です。アバウトですいません。ファクスで地図もらって行った方がいいかもね。

ここ寄れワンワン

 こうも季節がよくなってくると、週末とかどうしても郊外に出かけたくなるよね。みんながいっせいに外出しだすから道とかは渋滞するけど、春は周りの景色も素晴らしいから渋滞もそんなに苦にならないのだ。ぼやーっと淡い空を眺めながら、久しぶりに自分の心を解放する…たとえ渋滞の車の中でも、それは確実にアナタを癒(いや)している。家でテレビを見てたって仕方ないじゃん。忙しい日常から離れて、ちょっと遠出をしてみない?

 お弁当を持って自然の中でくつろぐのも楽しいが、ボクはそういうとき「郊外のおいしい店」目当ての小旅行を企てる。忙しい毎日から切り離された非日常感と、その店への期待感、そしてその店で満腹になったあとの郊外の散歩。あぁこれぞ幸せのフルコース!ってボクは感じるのである。そこが山荘だったり一軒家レストランだったりしたらもう最高。わざわざ訪ねた感もあって、感動が倍になる。

 「オーベルジュ・ド・コム・シノワROKKO」は六甲山頂付近にあるオーベルジュ(泊まれるレストラン)。神戸でフランス料理やパン店などを営んでいる「コム・シノワ」が経営する山荘レストランなのだ。周りは自然いっぱいで雰囲気も抜群。もちろん食事だけでも可だから、まずはランチはいかがだろうか。ジャンルはフレンチだがちょっと無国籍風で、それぞれ工夫を凝らしてあり味に驚きがあってうんまいぞー。食事の後は六甲牧場とかでダラダラするのじゃ。あー極楽!。



「オ・リモ」  フランス料理:兵庫・芦屋

兵庫県芦屋市春日町6-14/0797-21-1234/11.30〜22/月休
阪神打出駅の北側の道を東に5分も行けば着きます。車なら、国道2号の楠町交差点を南へ。線路の手前を東に左折。すぐ。

今日は僕らムッシュウとマダームやで

 日常のカタチが人それぞれであるように、非日常のカタチも人それぞれである。高級レストランでサービスマンにかしずかれるのこそ非日常という人もいれば、公園でお弁当広げてくつろぐのが一番という人もいるし、カラオケでマイク片手に裸踊りしないと日常から脱せねぇぞおりゃーというオッサンもいらっしゃろう。

 ボクはといえば、やっぱり王様みたいな気分になれる高級レストランで非日常感に浸るのが好きかなぁ。ちゃんとお洒落(しゃれ)する空間って日本って少ないよね。ビジネススーツを脱いできちんとアフターファイブ用のお洒落をしてニコニコ出かけるレストラン。非日常の最たるものだと思うのである。

 が、悲しいことに「高い」のよね、そういう店。そんな店には年に一度行くのがやっとこさだ。もっとカジュアルに非日常を楽しめるレストランがないものか……。

 芦屋の「オ・リモ」は気軽なビストロケ(レストランとビストロの間をこう呼ぶらしい)である。でもめったにないくらい非日常感が漂っているのは、ひとえに「フランス人がいーっぱい!」であるがゆえ。シェフがまずフランス人。客席から見えるキッチンで忙しげに動き回っている。サービスもフランス人。ボンソワームッシュゥゥゥ〜、と低音でボソボソ言われるとノホホホホーと鳥肌が走るぞ。お客さんもフランス人が多いから、なんだか「ここはどこ?」的違和感に浸れてうれしいのだ。

 肝心の料理は、なんというか粗削りでドカンとしている(←ほめ言葉)。チマチマと繊細なフレンチが多い中、こういうドカドカドカンとしたお皿はそれだけで本場を感じさせてくれる。うーん、おふらんす。たまらんす。



「一会庵」  そば:兵庫・篠山

兵庫県篠山市大熊10-2/0795-52-1484/11.30〜15/木休
ここは説明が至難。篠山城跡方面から城北小学校の方へ向かい「城北」の信号を右へ。少し行ったところにある木材店を右に見てあぜ道を左に入る。その付近の茅葺き屋根を探せ。車でないとつらいよ。

かやぶきだジョー

 あぁ、いい陽気である。冬の寒さや暗さなど思い出したくもない。ないよね? そりゃないに決まってる。でも今週はいま一度あの寒さを思い出していただきたい。そう、今回ご紹介する店は、もちろんこの陽気の中で食べてもめちゃうまい店なのだが、寒さの中でこそ「非日常」に浸れる店なのである。もう寒ければ寒いほどいい。

 ええ、春になる前に紹介すべきだったのだが、うまくテーマが合わなかったのだ。つまりアナタはこの記事を切り抜いて来年の2月くらいまで取っておき、「明日はこの冬一番の冷え込みになるでしょう」と天気予報のお姉さんがのたまう日を狙ってこの店に向かわないといけないのである。悪いけど。

 で、「一会庵(いちえあん)」。丹波篠山の蕎麦屋さんである。これがまた異様にわかりにくい場所にある。宝探し的ロケーション。丹波篠山の田圃の中にポツンとある茅葺き屋根がそれ。看板もない。なんとかたどり着いて靴を脱いで中に入ると、外よりも冷え込んでいる。ここまで寒い店をボクはほかに知らない。

 ポツンポツンとある囲炉裏で火にあたりながら食すのであるが、あまりに寒いせいかドテラを貸してくれる。ドテラを着て囲炉裏に手をかざしながら、自家栽培・自家製粉、つなぎなし十割の蕎麦をズズズズー…。ほーうまい、と一息つくと部屋の中に白い息が浮かぶ。わざわざここまで食べに来て良かったと実感する瞬間だ。

 蕎麦に自信があるのだろう。薬味もわさびも出てこない。温かい蕎麦もない。「蕎麦切り」だけで勝負!の潔い店。古い茅葺き民家で寒さに震えながら食べる素朴な蕎麦は、きっとあなたを昔話の世界へ連れて行ってくれるだろう。あ〜冬が待ち遠しい!(春になったばっかりやっちゅうねん)



「播半」  料亭:兵庫・西宮

兵庫県西宮市甲陽園東山町9-39/0798-73-1800/11.30〜21/無休

りょうまのていげん

 日本人は不思議だ。フランスの高級三つ星レストランにはワイワイ出かけるのに、自分の国の高級料亭とかにはめったに行かない。ほとんどの人が一生に一回も行かずに死んでいくだろう。なのにそういう人でもパリの三つ星には行ったことがあったりするのだ。不思議だ。なんとも不自然だ。

 会社の同僚女性とかに聞いても、パリの三つ星には「3軒行きました〜」「私まだ1軒しか行ったことなくて」とか答えるのに、日本の高級料亭はみな未体験ゾーン。むやみに怖がっている。まぁ一見(いちげん)を入れてくれない料亭もあるけど、名だたる高級料亭を知ってからパリの三つ星を知ったって遅くはないと思うぞ。航空運賃と食事代合わせたら、高級料亭3回くらい軽く行けるんだから。

 …まぁかくいうボクも高級料亭にはほとんど行ったことないのだけどね(なんじゃそりゃ)。やっぱり高いし、作法とかも面倒くさそうだし、足もしびれそうだしね。でも、やっぱり日本人としてもっともっと料亭に触れるべきだとボクは思う。とりあえず昼食に訪れて、料亭文化を肌で感じるところから始めたらどうだろう。

 西宮にある「播半(はりはん)」は創業明治12年の老舗(しにせ)料亭(料理旅館)。庭、建物、そして料理、と三拍子そろった名料亭だ。山あり谷ありの庭は約1万坪。母屋も数寄屋造りで大変美しい。料理もツボを押さえた作りでとてもうまいのである。

 この高級料亭で、昼だとお弁当が5000円で楽しめる(平日。季節によって少々変わる)。うれしいでしょ? いかにも料亭なこの空間で、昼からゆっくり和に浸る……。ちょっと和服でも着てみたくなる、そんな非日常がそこにあるのである。わふーー!





文章:さとなお(satonao@satonao.com) イラスト:中村三奈(minasann@syd.odn.ne.jp)


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