2000年3月「出張を楽しもう!」


出張、多いんです。めちゃめちゃ。
最初の頃は旅行気分で楽しかった出張も、慣れてくると苦痛でしかなくなるんですよね。
まぁ食事くらいは楽しみましょ、というのが今月のテーマです。



「水了軒」「点天」  弁当・餃子:大阪・新大阪駅

水了軒/新大阪駅構内/06-6372-2391/7〜21/無休
点天/新大阪駅地下/0120-888-399/8〜21/無休

青年の出張

 最高で1日1往復半したことがある。新幹線での東京出張の話である。つまり、朝一番で大阪から東京へ行き、打ち合わせを終えて大阪のスポンサーに確認に戻り、その結果をスタッフに説明しにまた東京へ行く、という荒業をしたことがあるのだ。乗っているだけで9時間。乗り換えの時間を含めると11時間くらいは移動していることになる。つうか、電話で済ませろよ、電話で。スポンサーもそれくらい許せよ。暴れるぞ、こら。うがあ。

 さすがにそれは1回だけだが、多いときで年120往復くらいは新幹線に乗っているボクである(新幹線にマイレージがあったらハワイくらい行けるかも←JRが通ってません)。だから新幹線で食べる弁当についてはくわしいぞー。新大阪駅や東京駅、そして車内で買える弁当はほとんど制覇しているのだ。えへん!(悲しい自慢)

 新大阪駅で買える弁当もいろいろあるが、ボクは「水了軒」の「八角弁当」を選ぶ回数が圧倒的に多い。秀逸なのは、揚げ物系が茄子(なす)だけであとは煮物系が多いこと。ご飯とおかずのバランスもよく食後の満足感が違うのだ。あ、それと、東京へのお土産に「点天」の餃子(ギョーザ)を買うことも多い(駅地下)。大阪風の小ぶりでパンチのある餃子は東京でとてもよろこばれるのだ。東京行きの新幹線で、点天の袋を持ち八角弁当を食べているひげ面がいたらそれはきっとボクである。でも食べ終わってから声をかけてね。弁当だけが楽しみなんだから。



「崎陽軒」「大丸」  弁当:東京・東京駅

崎陽軒/045-441-8918/7〜21
大丸東京店地階食品売り場おべんとう公園/03-3212-8011/平日10〜20

おいシ・ウマイ・弁当

 夜メシ時の新幹線はかなり臭い。いや、香り高い。いや、やっぱり臭い。だっていろんな弁当のにおいがミックスされるうえにビールや清酒、おつまみ、そして靴を脱いで座ってる疲れ果てたオジサンの足から靴下の香りがプーンと…(やめなさい)。とにかくいろいろ混ざりあって臭いのだ。酒を飲む人が多いせいもある。特におつまみのさきいか。あれとビールという組み合わせはやけににおう。隣の席でそれをやられるとたまらん。そのうえ前からウナギ弁当、後ろからハンバーガー、斜め後ろからはオジサンの靴下がプーンと…(やめなさいってば!)

 まぁ実はボクも負けていないのだけどね。靴下の香りではない。シューマイだ。崎陽軒のシウマイ弁当とシウマイパックの組み合わせを実に愛しているのである。弁当とパックを開けて両方むしゃむしゃ食べる。周囲はシューマイの香りで染まる。臭い。でもうまい。でも臭い。でもうまい。

 え? 崎陽軒のシウマイ弁当とはまた基本的な選択だねぇって? チッチッチッ、釣りがフナではじまりフナで終わるように、弁当はシウマイ弁当に始まりシウマイ弁当に終わるのだ。東京駅で買える弁当はほとんど食べたが、やっぱり最後はここに帰ってくるのである。

 でもまぁほかのものを食べたいときももちろんある。その時は東京駅にある大丸の地階食品売り場「おべんとう公園」へ行く(本当の公園ではなくてコーナー名ね、念のため)。ここはすごいぞー。ベーシックなものから全国各地の名産まで、弁当がずらずらずら〜!と並んでいるのだ。発車時刻が来るまでの間、ここで弁当を選ぶあの楽しさ! 出張のストレスも疲れもずらずらずら〜!とすっ飛ぶぞ。



「セントジョージ・ジャパン」  フランス料理:兵庫・新神戸

神戸市中央区北野町1−2−17/078-242-1234/11.30〜14/17〜21/月休
北野の異人館通りのJR新神戸駅寄り右側。

いじんかんでいいじかん

 滅入(めい)る。滅入るのだ。夜、会社が終わってから新幹線に乗って出張するのはとっても気が滅入る。1日の仕事に疲れはてたカラダで3時間ガタンゴトン。窓の外は暗い夜。週刊誌でも読みながら弁当をひとり寂しく食べる。東京に着くのは午後10時過ぎだったりするから友達誘うには遅いし、ひとりで飲みに行くのもかったるい。真っすぐホテルの狭い部屋に入ってビールとテレビ…。ああ、貴重な人生の1日がこうして暮れていくのである。なんと気が滅入ることデアルカ。

 ただでさえ疲れる出張をこうして気が滅入るものにしちゃうのは最悪だ。だからボクは2回に1回はわりといい食事をしてから新幹線に飛び乗ることにしている。どうせ東京に着いても寝るだけ。人生に1回しかないその夜を楽しく過ごすためにも、コッチでいい食事をしてから行こうではないか。

 JR新神戸駅の東京行き最終ひかりは20時27分発。例えばこの電車を予約してそれまでゆったり異人館でくつろぐというのはいかがだろう。新神戸駅から歩いて5分の「セントジョージ・ジャパン」は、築100年の異人館を使ったフランス料理店。ドイツ人貿易商の邸宅を買い取ったとのことで雰囲気は抜群(東京のお客さんも喜ぶからここで食べて最終で帰してあげる、というのもいいかも)。そのうえコースは3500円から、というリーズナブルさ。クラシックだがきっちりピントが来ているおいしい料理に小粋(こいき)なワインで、出張前に豊かな時間。どう?

 夜6時からゆっくり2時間食べても駅まで5分だから楽勝でしょ? 優雅な気持ちを引きずりつつ電車の揺れに身をまかす。いつもの出張がちょっとリッチな出張に変わる瞬間である。



「かつくら」  とんかつ:大阪・伊丹空港

大阪府豊中市蛍池西町3-555/06-6840-6490/10〜20/無休
伊丹空港の2階。階段上がって左の方の奥の左側。

とん発つ

 個人的に飛行機は好きでもあり嫌いでもある。雲の上を飛ぶ、というあの快感は有史以来近代まで人類が経験しえなかった体験であり、それを満喫したい気分は強い。スチュワーデスはいるし移動時間は少なくてすむしコーヒーとかも出るし窓外は絶景だし、なにかと快適なのである。とはいえ、やっぱり「命がけ」感はあるんだよね。なにせ入社した年に例の日航機事故があり、上司が数人亡くなってしまった経験上、東京出張くらいで命を懸けるのはイヤなのだ。どうしても新幹線を選んでしまうことが多い。

 それでもたまに乗らないといけない時がある。そういうときは「寝る」。乗ってすぐ熟睡し、わが命の存在を忘れる(だって怖いんだもん)。そのために伊丹空港で大食いして血を腹方面に移動させ、やたら眠くなるようにしておくのがボクの習慣だ。ええ、昼飯後でもとりあえず食べる。腹いっぱいでふーふー言うくらい食べると、座ってすぐ眠れるのである。ぐー。

 まぁこんなわけで伊丹空港構内のレストランもほとんどクリアしているボクであるが、1軒のとんかつ店が出来てからはほぼそこ一辺倒になった。「かつくら」は京都に本店があるとんかつ専門店。さくっと歯切れ良いとんかつは繊細さと力強さを併せ持ち、恐怖と闘う勇気を与えてくれる。とんかつの荒ぶる力強さが、ボクに空飛ぶ出張へのチカラを与えてくれるのだ(んな、オーバーな)。キャベツや麦ご飯、漬物がおかわり自由だから「寝る」ための大食が思う存分出来るのもいい。

 飛行機での出張をボクは心の中でこう呼んでいる。とんかつ出張。とんかつ出張が多い月は、ちょっとだけポッチャリするボクなのである。



「おけい寿司」  すし:東京・八重洲口

東京都中央区八重洲1-8-11/03-3271-9928/12〜21/土日休
八重洲口を出て、国際ホテルの前の横断歩道を渡って右へ。第一勧業銀行の手前の筋を左に曲がって50メートルくらい。

別れてもスシな人

 さて。先々週、新神戸駅近辺でフレンチを食べてから新幹線に飛び乗る方法をご紹介した。駅から至近なレストランでゆっくり食べてから東京へ、という優雅な出張である。そしたら「新大阪駅から至近なレストランも教えてくれー!」「東京駅にめちゃ近いいい店はないのかー!」というメールをたっくさんいただいた。みんな同じような悩みを持っているのね。仲間仲間。お互い出張は大変だよねぃ。

 とはいえ、出張をテーマに書くのは今週が最後である。よって、新大阪組にはちょっと我慢していただいて、今回は東京駅八重洲口から歩いて2分ほどのところにある至福の寿司(すし)屋さんをご紹介しよう。新幹線の指定券をとって、発車間際までゆっくりと江戸前寿司のうまさに浸ろうではないか。

 ここ「おけい寿司」は江戸前の本場東京の中でもトップの寿司を食べさせてくれる名店。ネタの新鮮さだけを競う寿司屋が多い中、この店の寿司はシャリとのバランスが絶妙だ。たとえば白身だと、シャリが口の中で先になくなってネタだけが口の中に残ったりするじゃないですか。この店だと、両方ともとろけるように口の中で「同時に」なくなる。あー、これが本当の江戸前寿司というものなのだ、と実感ずる一瞬だ。

 お値段もそれなりにするが、それだけの価値はある。あなたの出張がいきなり豊かになること請け合いだ。姿勢を正して、いざいざ。

 ところで、こんな風にメールでリクエストをいただくのはとってもうれしい。ので、「リクエスト特集」をやってみようかと思います。絶対に自腹で満足できる!と自信のある店だけ教えてね。ただし他薦のみでよろしく。あて先:satonao@satonao.com



文章:さとなお(satonao@satonao.com) イラスト:中村三奈(minasann@syd.odn.ne.jp)


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