2000年2月「アジアのアジや」


今月はアジア料理の特集ですね。
わりと疎い分野なんだけど、疎いなりにお気に入りの店はいろいろあります。
くわしいマニアの人たちにはかなわないけど、とりあえず初心者なりのセレクション。
どうぞお楽しみください。



「ニューサイゴン」  ベトナム料理:神戸・長田

神戸市長田区腕塚町7-6-8/078-643-0927/11〜21.30/第2.4火休
長田の国道2号沿い。三宮から車で行くと、新長田駅を越えたあたりの2号沿いにローソンがある。その手前隣。

「アジアのアジゃーっ!」

 ニューヨークでは少し前から「アジアン・フュージョン」とでも呼ぶべき料理がはやっている。タイも中国もベトナムも韓国もそして日本も、すべてが融合(フュージョン)された料理である。それぞれの伝統の調理法が混ざり合い全く新しい料理に生まれ変わったりする。例えば刺し身をタイ風にアレンジした上にキムチをのせて食べたりするのだ。そこに共通するのはひとつだけ。「おはしを使って食べる料理」ということだけだ。アメリカから見たら、おはしを使うならもうそれはアジア料理、というわけなのだな。

 おーなるほど和食もアジア料理なんだ、とボクはちょっと意識改革を迫られた気分だったのだが、そういえば麺(めん)類なんかは「アジアは兄弟」の代表選手みたいなもの。小麦粉による麺は中国を発祥として広くアジアに伝わったが、特にどんぶりでフーフー食べる「湯麺系」はアジア独特の文化であろう。アジア各国それぞれに実にうまい湯麺を持っているのである。

 神戸は長田にある「ニューサイゴン」のベトナム麺(フォー麺)はまた格別のうまさだ。ベトナム出身の優しそうなおねぇさんが作ってくれるそれは滋味にあふれ何杯でもお代わりしたい一品。うまいぞー。家庭料理っぽいほかのメニューもそれぞれおいしく、まさに現地の屋台の味(店の雰囲気も日本語が通じにくいのも、気分なのだ)。ズズズーッと盛大に音をたててフォー麺をすすりこむ…。アジアは麺でつながっているのを実感する瞬間である。



「イサラ」  タイ料理:兵庫・甲東園

兵庫県西宮市上大市1-8-16/0798-51-8885/11.30〜14.30/17〜22/月休
阪急甲東園駅の東側。南すぐにある踏切の道をしばらく東へ行くと右側にある。5分。

タイパニック

 タイはうまい。ああ、鯛もうまいがタイもうまい。そう、タイ王国のタイ料理のことだ。とにかく辛いというのがタイ料理を知ったころのボクの印象。でもそれは1週間ほどタイを旅行して変わったのである。

 いや、辛いは辛いの。いま思い出しても冷や汗がつぅーと背中を伝うくらい辛い料理をいくつも経験した(とくにイーサン地方の料理といったら!)。でもね「タイ料理の本質は辛さだけではない」ことに、1週間朝昼晩と本場のタイ料理を食べ続けて気がついたのだ。タイ料理とは辛さと酸っぱさのバランスで食べさせる料理だったのである。

 そのときは世界三大スープのひとつと言われるトムヤムクンをいろいろな店で食べ比べてみたのだが、辛さが勝っている店や酸っぱさが勝っている店が多い中、辛さと酸っぱさのバランスが絶妙な店がいくつかあった。それらの店のトムヤムクンのうまいこと! 非常な辛さと強烈な酸味がギリギリのバランスできっ抗しているのだ。辛さと酸っぱさが中和しあって「辛酸っぱ甘い」という新たなる味覚を作り出している。うーん、書いてるだけで唾液がズリュッと…(きたない!)

 日本では辛いだけのタイ料理店が目立つ気がするが、西宮の甲東園にある「イサラ」のタイ料理は辛さと酸っぱさのバランスが素晴らしい本場の味。タイ人のシェフが作るその味は辛さだけが前面に出てくることがなく、タイの味覚の奥深さを楽しめる。酸味がまず口の奥で暴れ、じわーっと後から辛さが追いかけてくる。辛さが通り過ぎた後の口の中はほのかに甘い…あー、うめー! トムヤムクン、タイ式春巻き、パッタイ、グリーンカレー、どれもオススメ。デザートにはかぼちゃのココナツミルク煮がめちゃうまい。



「ワルン バリ」  バリ料理:兵庫・三宮

神戸市中央区北長狭通2-4-5 大永ビル1F/078-321-6080/12〜14.30/17〜23/無休
三宮の駅北側から程近い。(超アバウトな説明でスマン)

ピーナッツだれ

 エスニック(ethnic)を辞書でひくと「民族的な、異教徒の」と書いてある。ボクたちは「エスニック料理でも食べに行こっ!」などとわりと日常的にこの単語を使っているが、その時のニュアンスは東南アジアや中近東の「スパイスふんだんの辛い料理」だったりするよね。でも辞書の訳から考えるにちょっと違うようなのだ。どうもキリスト教的世界から見たキリスト教以外の異教徒・異文化をすべてエスニックと呼ぶようなのである。つまりイスラム教国や仏教国など、キリスト教以外の国の料理は彼らから見てすべて「エスニック料理」なのですね。

 知り合いのアメリカ人に聞いたら「異教徒的で、価値観のまったく違う料理をそう呼ぶ気がするなぁ」とのこと。彼にとって和食も立派なエスニックらしい。なるほど。そういう意味では、逆に日本人側から見たら、キリスト教国の料理はエスニックなわけだ。フレンチもイタリアンも、ハンバーガーチェーンのあのハンバーガーもぜーんぶエスニック料理なのである。うーん、そうやって考えるとなんだか面白いね。

 今回ご紹介する三宮の「ワルン バリ」ではインドネシアのバリの料理が食べられる。バリはヒンドゥー教で独自の価値観をもつ島。キリスト教的世界から見ても日本から見てもまさにエスニック。バリだけにバリバリのエスニックなのだ!(しょーもな!)

 現地出身の料理人がおふくろの味を再現した本格バリ料理は、ナシゴレン、ミーゴレンをはじめどれも、これぞ異文化!な味(どんなんや)。店内にはガムラン音楽がほわーっとかかり、店員も笑顔にあふれ、とっても気持ちがいい。異文化をゆっくり楽しむには最適なお店なのである。





文章:さとなお(satonao@satonao.com) イラスト:中村三奈(minasann@syd.odn.ne.jp)


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