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さぬきうどんをCHAIN EATING! 〜怒濤篇3

この紀行文は1997年(まだブーム前)にさぬきうどんを求めて家族で香川を彷徨った様子を長々と書きつづったもので、翌年に「うまひゃひゃさぬきうどん」という題名で出版された元原稿でもあります。四部構成になっていて、このページは【怒濤篇】のその3です。

【立志篇】12
【風雲篇】1234
【怒濤篇】123
【回天篇】1234





さて。

さぬきうどんとは何か、などと「山越」の項で偉そうなことを書いた。

ボクなりの感覚で、その快感の元について考察してみたつもりではあるが、もちろんボクだけの意見であり、妻の優子ですら同じ意見は持っていないかもしれない(未確認)。さぬきうどん経験については序三段クラスであるボクなのに、まぁ偉そうなことを書いたものである。


ただ、「山越」のさぬきうどんの快感については、あれでかなり正しいのではないか、と思っている。

・歯ごたえ    (歯的快感:固やわらかい・押し返し・薄皮一枚の粘り)
・表面の滑らかさ (口中快感:動き回る麺が歯唇間・上顎・舌下・喉などに快感)
・味、香り    (舌的鼻的快感:良質な小麦粉の味と香り)

これらの要素が口の中すべてに快感を与えてくれるのだ。
が、いま食べた山内にはそれとは違うなにかが感じられた。

それは、言ってみれば「重量感」みたいなものである。
そう、麺に重量感があって、口の中を「口中総合マッサージ」的に暴れ回る軽快感はあまりないが、どっしりと重い存在感がある。
そして。
麺の固さも、「歯ごたえ」というよりも「噛みごたえ」なのだ。


いまから行く「宮武」はそういう「噛みごたえ」では今回食べたさぬきうどんの中でトップであった。
「歯ごたえ」を越えた「噛みごたえ」の境地・・・
まだまださぬきうどんは奥が深いのである。



■「宮武」〜働け!下顎!〜


実は「谷川米穀店」と「山内」では響子は起きてこなかった。
そう、チャイルドシートで寝っぱなし。やっぱり彼女なりに疲れているのであろう。

ひとりでほっておくのもまずいので、「谷川米穀店」では丼もって外に出て響子が寝ている車の近くで食べた。「山内」は山の中の一軒家だし、店内から車が見えるのでとりあえず車中置きっぱなしにしてさっとうどんを食い、さっと店を出た。

その間、およそ10分。
まったくもってさぬきうどんはマクドナルド以上のファストフードなのである。


が、車に戻ったボクたちは響子がイライラと起きているのを発見した。

「あ、お、起きている・・・響ちゃん、おはよう!」

「おなかすいてぃあ! なんか食べゆ!」

「あ、あの、よし、すぐ次に行こうね、すぐ着くからね」

「おなかすいてぃあぁ!!! なんか食べゆ〜〜!!!」



やばい、食魔・響子のおなかが目覚めてしまった・・・


「ね、アナタ急いで!」
「よ、よし、スクランブル!!」


ぶろっ、ぶろっ、ぶろろろろろろ〜〜〜〜!!
パラララ、パラララ、パラララ!!
(お前ら、族かい!!)






「宮武」は琴平町にある。
琴平町といえば金比羅さんである。
そう、香川県が誇る、というか頼りきっている大観光地なのだ。
観光地にうまいものなし。
琴平もその例に漏れないらしく、さぬきうどん屋は都会のカラスの数ほどあるが、『恐るべき』で取り上げられている店はたった一軒だけ(文中で「将八」も取り上げられているが)。
それが「宮武」である。
「琴平の良心」とまで書かれている。
麺聖のホームページには「西の横綱」とまで書かれているのだ。
期待させられるではないか。



「おなかすいてぃあ、なんか食べゆ〜〜!」



は、はい、ごたく並べずすぐ行きます!



「山内」を出たのが12時30分。
打ち立てが食べられるゴールデンタイムはあと30分である。
県道197号線に戻って南下。とにかく国道32号線に出る。 で、右折北上。すると左手に金毘羅さんを見ながら国道319号に自然とつながる。それをしばらくまっすぐだ。

「で、そろそろ右折のはず・・・」
「出光のガソリンスタンドがあるはずよ、そこをお箸を持つ方ね。 あ、ここ!」
「了解。 おお!! ガソリンスタンド以外にもいい目印があるぞ!」


その目印はラブホテルの看板である。
それを左手に見ながら右折である。

そのホテルの名は、
ホテル「ヨーロ・レイ・ヒー」




思わず口ずさんでみたくなるその語感。
脇を通った人の気持ちまで明るくさせてくれる秀逸なるネーミング・センス。
自己完結しないで、街を少しでも明るくしようというその企業メセナ的発想。
なんだか楽しいひとときを予感させる実質的効果。
一度見たら忘れないそのインパクト・・・

「全日本ラブホテル・ネーミング大賞」があったら、間違いなく優勝である。

もしボクが審査員だったら喧嘩してでも一位にしてみせる。
いままで見たラブホテルのネーミングの中でも、ぶっちぎり・ダントツの秀逸さである。


おかげで車の中はヨーデル大会。


 ♪ ヨーロ・レッイッ・ヒー
    ヨーロ・レッイッ・ヒー
     ヨーロ・レッイッ・ヒー
      ヨーロ・レッイッ・ヒー



 レヒレヒレヒレヒレヒレヒレヒレヒ
 レヒレヒレヒレヒレヒレヒ・・・









「おなかすいてぃあ!!!!」




はーい、すいませーん。




ホテル「ヨーロ・レイ・ヒー」の看板を右折してしばらく行くと「宮武」の看板がある。
2車線の細い道だが、駐車場がないので路駐するしかない。「駐車禁止」と書いてあるが、仕方がない。通りすぎてしばらく行ったところに止める(現在は西側に大きな駐車場が出来た)。

入店12時50分。
飛ばしたこともあるが、わりと近かった。

入店したらすぐ右側に天麩羅類が置いてある。
『恐るべき』によるとここの「イカ天」は絶品だそうな。とりあえずイカ天をお皿にとり、カウンターにすすむ。

「何しますかぁー」
「ええと、ひやひやの小をふたつ」
「はい、ひやひや小ふたつねー。席で待っとってー」

ここはメニューが変わっていて、「ひやひや」「あつあつ」「ひやあつ」と書いてある。
冷たい麺に冷たい出汁をかけたのが「ひやひや」。温かい麺に温かい出汁をかけたのが「あつあつ」である。ちなみに小230円。市街地だから高いのか。観光地だから高いのか(って騒ぐほどの値段ではないが)。イカ天は110円であった。

おばちゃん、席に持ってきてくれた。
なんだか一般店みたいなサービスだ。
ん? そうか。ここは一般店なのかも。


一目、いままでのうどんとはまたタイプが違うことを確認。
麺がちょっと縮れている。
山内に少し似ているぞ。
太さもまちまちである。
機械で切っているのではなく、手で切っている模様。
表面は黄色。「顔が映るようなつるつる」とは程遠い。

「なんだか、違う、な」
「そうね、でもこれはこれでおいしそうだわ」
「おなかすいてぃあぁ! なんか食べゆ!!!」


はいはい。
まずは小皿をもらって響子に少しうどんをわけてあげてから、おもむろにひと口。
ズズズズ・・・




な、な、なんちゅう・・・か、

・・・ほんちゅうか!(c大橋巨泉)(古すぎ)



じゃなくて、



なんちゅう、重量感!
なんちゅう、噛みごたえ!




これはもう「歯ごたえ」を越えている。

まさに「噛みごたえ」である。

満を持して下顎クンの出番なのである。

ホレ、下顎、さぼるな、ちゃんと働け!!




写真でもわかるように少し平たい麺である。
が、その麺の強いことと言ったら・・・今回の旅行随一である。

そして麺がずしりと重い。
これを好きになってしまった客は他を物足りなく感じるであろうくらいだ。

こ、これも、さぬきうどん、かぁ・・・


「山越」でさぬきうどんをつかんだ気になっていたボクは、またしてもスタートラインに戻された気分になった。

うーん。

でも。
蕎麦にも「更科」系や「砂場」系があるように、さぬきうどんにもその味や方向性によって系列があるのかもしれないな。

そう、これは「宮武」系である。
「山内」も同じ系列に入る。
「宮武」〜「山内」路線、だ。


「山越」系は重量感に乏しい。が、その軽快さにより、口中総合快感はかなり大きい。
「宮武」系は重量感がある分、口中総合快感には乏しいが、「噛みごたえ」という新しい快感を創出している。


ふーむ。
ちなみにボクは圧倒的に「山越」派である。

快感というモノサシで計ると、山越の方がやはり一枚上のような気がする。
「宮武」は強いが、ちょっとストイックだ。

モーツアルトとベートーベンの違い、と言えばわかっていただけるであろうか。


■「山下」〜絹の舌触り〜




ちなみに、「宮武」のイカ天。
これは本当においしかった。なんだか駄菓子屋を彷彿とさせる味。
おあげさんといい、天麩羅といい、セルフの店は「おかず」がとてもおいしいなぁ。
これも不思議だ。


響子をチャイルドシートに座らせ、今日最後の店、「山下」に出かける。
響子はうどんやイカ天を食べて至極ご機嫌である。
重量感のある「山内」「宮武」のうどんが、これで4軒回ったことになるボクの腹にずしりとこたえてきている。


「食べごたえがあるうどんだったわねぇ」
「いや、なかなかこたえた。小麦粉密度がバングラデシュなみだ」
「そうダッカ」

(ちなみにバングラデシュの首都はダッカ。←説明すな!)




あー、さて。
『恐るべき』には「山下」という店は2軒出ている。
今から行く山下は善通寺市の方。『恐るべき』なら第二巻に載っている方である。
「宮武」の前の道を戻らずにそのまま北へ。ヨーロ・レイ・ヒーと反対の方だ。すぐに「丸亀三好線」という県道4号線があるからそれを左に。ものの5分も行けば、右側にもう「山下」がある。あっけないほど近い。


外観はきちゃないドライブインって感じで、イマイチだ。
とっても普通。というかこういう店でおいしいものに当たったことがないぞ。
おいしそうな予感が全く匂ってこない。

うぬぬぬ。大丈夫だろうか。

店内もなんだかきちゃない。従業員は多いが、掃除より接客でテンテコマイのようだ。

もう時間は1時半近く。
でも 一般店だから打ち立てが食べられるであろう。

メニュー は見る前から決まっていた。「ぶっかけ」である。

他にもいっぱいメニューがあるのだが、ここは『恐るべき』も麺聖もベタ褒めの「ぶっかけ」で勝負である。


「ええと、冷ぶっかけの小をふたつ」
「はいはい」


ぶっかけとは出汁をうどんにそのままぶっかけるもの。
一般店なのにぶっかけの小が250円しかしない。ちょっと感動的なくらい安い。

待つこと10分ほど。

来た来た。
エッジが立っている。
ねじれているところもエッジが立ったままねじれ、らせんをえがいている。頑固一徹エッジだ。
表面はその頑固な印象のわりに美しくテラテラ。なんというか輝きがある。
くわー、こりゃまたうまそうだ!

大きな瓶で運ばれてきた出汁をかけて響子にまずあげる。
どうでもいいけど、こいつ絶対断らんなぁ。

そしてひと口。ズズズ。




うま、うま、うま、

(うまひゃひゃひゃひゃひゃ〜〜〜!は一回使ったので使うのやめて、と)


うまひひひひ〜〜〜!!






これは、本当に、うまいのでありました。
この歯ごたえは何だ。この喉ごしはどうだ。この押し戻しはなんなんだ。まさに驚きの麺。
呆然と来し方行く末を想ってしまうような「脳味噌直撃さぬきうどん」だ。


特筆すべきはその「舌触り」。
まさに絹の舌触りだ。
であるからして、歯の攻撃をニュルッと逃れて、口の中で暴れまくってくれる。


ほとんど口内暴力。


そして、固さもまたすごい。「山越」をもうひとつ硬くした感じ。

この固さが逆に「山越」にある軽快感を少し弱めているのが残念だが、強い麺が好みで、しかも口内全身マッサージを越えた「口内暴力」が受けたい人は、この「山下」をまずオススメしたい。

お持ち帰り用のうどんを売っていたので、思わず買った。
「山下」で打ったさぬきうどんがお家で食べられるのである。
これは買わざるを得まい。

(でも家に帰って食べたらやっぱりあの快感には程遠いものでした。やっぱり打ち立てが一番。残念)


■「中村」〜明日出直すのだ〜



おなかいっぱいである。
が、おいしいものを食べるとイキオイがつくのも確か。


「ねぇ、明日行く予定の中村って、この辺だよね」
「うん、近いと思う」
「行こうか!」
「行こう!!」


どういう夫婦じゃ。おなかいっぱいだっちゅうねん(中年ではないので念のため)。


近いとはいえ、かなり迷った。
ものすごくわかりにくいのだ。目印がただのドラム缶である。それを見逃すと絶対たどり着けない。

まさか、こんなところに、お店が、ある、の・・・?って感じ。
理性を拒否するシチュエーション。それが「中村」なのである。



なんとか「中村」にたどり着いた我々であるが、なんだかやけに静かだ。
やってないのか?
ええと、『恐るべき』には16時までと書いてある。まだやってるはず。
とりあえず店のドアを開けて覗いてみる。


おばさんがひとり。

「さっき、うどん、売り切れ」

と不思議な日本語で冷たく言われてしまった。


素っ気なさすぎ!
こんなに苦労してたどり着いたのに、せめて、せめて、ごめんなさい、とか、なんとか・・・

「だってほら、ネギも客に抜かせる店だからしょうがないわよ」

そ、そうだな。
この店は、薬味のネギを客に切らせるだけでなく、無くなると「裏の畑で勝手に抜いて」と客に抜かせるという「究極のセルフ」として、いまや伝説の店なのである。


伝説の店「中村」には明日、再度挑戦する。
それにしてもすごいシチュエーションであった。「蒲生」「山内」のシチュエーションを越えていると、ボクは思う。




ということで、2日目も無事に終わった。
読んでくださっている方は22日目の間違いではないかと思うかもしれない。
今日も長かった。
でも、まぁ、とにかく終わったのだ。


え?
まだ15時前くらいだろう、まだ夜があるではないかって?

・・・するどい。

実は夜は高松市内のフレンチレストラン「ボア・エ・デュポン」に出かけたのだった。
ジバランというレストランガイドをしているので、その関係で自腹覆面取材を敢行したのであった。

そのためには腹ごなし。
16時前に日本三名園のひとつ「栗林公園」へ入り、気ままに散歩&響子サービス。
そのあと、ダイエーに行って地元の食材を見たりして(地方のスーパーとか市場を見るのは趣味に近い)18時までうだうだ時間をつぶした。
でも、まだまだお腹がすかない。山内と宮武という重量級がわりとこたえているようだ。
なんだか胃腸が「うどんだらけ」なのである。

・・・いや正確に言うと「うどんだけ」

この夜のフルコースはさすがにきつかったなぁ。
マジでフルコース。かなりのフルコース。腹一杯なのである。


「ねぇ、明日はどういう予定だっけ?」
「ええと、9時 あたりや、10時 中村、11時 彦江、12時 長田。
 んでもって、夜は岡山の吉田さんちでロシア料理&ワイン三昧だ」
「・・・ちょっと異常ね、わたしたち」


ワハハハハ!
普通に生きてどうする!
異常でない人生など、おもしろくないではないか!
明日も、あさっても、しあさっても、ごあさっても、ろくあさっても、異常に生きるのだ!




「あなたの場合、胃腸に生きるのだ! でしょ」
「おお! 座布団一枚!」
    ・
    ・
    ・
    ・
こうして二日目の夜も更けていったのである。






※これで第三部 [怒濤篇]はおしまい。
 次はとうとう最終日、そして再訪の記録である。


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