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さぬきうどんをCHAIN EATING! 〜風雲篇3

この紀行文は1997年(まだブーム前)にさぬきうどんを求めて家族で香川を彷徨った様子を長々と書きつづったもので、翌年に「うまひゃひゃさぬきうどん」という題名で出版された元原稿でもあります。四部構成になっていて、このページは【風雲篇】のその3です。

【立志篇】12
【風雲篇】1234
【怒濤篇】123
【回天篇】1234






■予定変更!「田村」が近い!


「蒲生」でちょっとがっかりしたボクたちは気を取り直して次の目的地「おか泉」に向った。

いや、正確には向おうとした。
ら、優子が、

「ねぇちょっとお、地図で見ると田村が近そうよ」
「田村?」
「そう、田村。明日行く予定の。でも明日って予定きついじゃない?」
「うん。午前中に6軒だからな。おバカにきつい」
「だったら、今日行かない?」

まぁ結果的にはそうしたのだが、かなり逡巡したのである。
だって「田村」って言ったらかの麺聖が「これぞ、さぬきうどん」と一番に推す大名店ではないか。そんなすごい店にこんなひどい時間に行って良いものか……

「田村」は「山越」と並んで打ち立てを食べてみたかった店のひとつであった。

が、麺聖には評価の高いこの店も、わりと『恐るべき』の筆者である麺通団団長は評価していないのである。
そういう意味もあってなんとなく妥協してしまった。
それに本当に明日の予定はきつかったんである。

「よし!蒲生の雪辱戦だ!田村に行こう!!」



国道11号線に戻り高松方面へしばらく走る。と、県道33号線交差するからそれを飯山方面へ。すぐ綾上方面に向う県道17号線があるからそれを左(南)に入る。そこから3キロも走れば左側に小さく「たむら」と看板が出ていた。


「んん〜? これかぁ?」

 


蒲生と違ってすぐ見つかったが、まるでバスの待合室である。
ここから離れたところに小さく置いてある看板を見逃したらまず見つからないであろう。だって単なるバラックだもんね。悪いけど。

追記:いまでは旗も立ってて、わりと派手なようである。


「蒲生」でおばちゃんに怒られて逆に度胸がついてしまったボクは、気遅れなくその6畳ほどの待合室に飛び込んだ。待合室の奥は製麺所。おっちゃんがひとりで座っていた。


「食べられます?」
「はいはい」


おおおおお〜!
すっごく優しい笑顔のおっちゃんである。こんな時間はずれ(15時前)に訪れても嫌な顔ひとつしない。そりゃ商売だけどさ本来は製麺所なんだから客が来るのが迷惑の場合だってあるだろうに……なんだかうれしいぞ!


「冷たいん? 温かいん?」
「えっと、では冷たいのを」
「はいはい」


壁には料金表が貼ってある。

  小100円
  大200円
  コロッケ90円
  あげ40円
  玉子30円
  てんぷら40円
  ちくわ50円
  ビール280円
  うどん玉70円
  ヤクルト90円

ヤクルトなぁ、それにしても、この有名な「田村」にして、小(といっても普通のうどん屋くらいの量)が100円だもんなぁ…

しげしげと料金表を眺めているボクを見て、コイツは慣れていないと一目で見抜いたらしく、おっちゃん自らうどんを取り冷たいだしをかけてくれた。冷たいうどんに冷たいだし……東京でも大阪でもそんな食べ方はしないよなぁ。おもろいなぁ。

しょうゆだけで食べるのもアリだったらしいが、こちらがそんなこと聞く前にもう出来上がっていた。
厨房にあるせいろにはうどんがいっぱい並べてある。
うーん。やっぱり作り置きかぁ……時間が時間だけど、残念だ。でもなんだかんだ言っても有名なる「田村」である。作り置きでもいけるかも。


さて、姿勢を正してひとくち。 ズズッ。

 


か、か、固い!
なんという歯ごたえだ!
そしてイヨーな重量感!

 


歯ごたえはそのあと香川で経験したどの店と比べてもトップだった。
なにしろ容易には歯がうどんに入っていかないのである。

でも、残念なのはその後。

歯にゴツッとぶちあたってきて「お、これは闘い甲斐があるぞ!」と歯が全身で喜ぶのだが、歯が「ウリャァ〜〜!」と本気を出した途端、ブツッと切れてしまうのだ。

粘りがない。
最後の最後でもうひと粘り、もうひと押し返し欲しいところだなぁ。

でも作り置きでこの歯ごたえはすごい。重量感もすごい。どっしりしている。麺聖が「これぞ、さぬきうどん」と絶賛しているのはこの麺の「強さ」を言っているのだと思う。

「でも、だしがちょっとイマイチじゃない?」
「ん〜。いりこのエグミが出てしまっているな」
「しょうゆをさっとかけて食べたかったわねぇ」


とかなんとか小声で話していたら、ボクたちが食べ終わった途端、おっちゃんが麺を打ち始めたではないか!

なんという残念なタイミング。


もう一杯!もう一杯その打ち立ての麺を、しょうゆで食べさせてくれ〜!


その叫びが口から出かけるのを必死で押さえ「いや、まだいまから夕方だけで2軒。夜に2軒。計4軒回らないといけないんだ。ガマンガマン」と自分に言い聞かせ、ボクは田村を後にしたのであった。

よし!
次は「おか泉」だ! 伝説の「冷天おろし」だ!

 

■「おか泉」、逃げる!


「おか泉」である。

ここは『恐るべき』に「芸術品の冷天おろし」と書いてある。もうベタ褒めなのだ。

もともとのきっかけとなったメールをくれたうーさんも、「ここは冷天おろし(850円)を。これは絶品。讃岐ではかなり高めの値段ですが文句はとても言えません」と書いている。

確かに「一般店」なので値段は高いなぁ。
もう財布が"香川県"になっているので、この世のものとも思われぬくらい高く感じる。だって他は一杯100円とかなんだぜ。
でも本当に美味しいらしいのだ。一般店だからこんな悪い時間でも「追加打ち」しているかもしれないし、こりゃ大期待。


地図によると、JR坂出駅のまん前。駅前通りに面している。
こりゃぁわかりやすいぜ。迷いようがない。国道11号線をひたすら西へ戻る。
え?なぜインターに近いこちらに先に行かなかったのかって?
ヘヘヘ。ここは一般店だからこの時間(16時前)でも営業しているが、「蒲生」はセルフの店だったから14時には行かないといけなかったのだ。これでもいろいろ考えているのである。

駅前通りにでて、駅に向かう。


「えーと、ここらへんだわ」
「右側だよな、っと、あれ、駅に着いちゃったよ。Uターンしてみるぞ。今度は左側」
「えーと、左側の、宮脇書店の隣よ、ね、・・・ん?」
「ん?」
「んん?」
「んん?」
「んんんん?」
「んんんん?」
「んんんんんんんん?」
「んんんんんんんん……………って遊ぶな!!

 


ないのである。



「おか泉」がないのである。



もぬけの殻だ。
確かに営業していたような、元うどん屋のような雰囲気は漂っているのだが、全くもぬけの殻なのである。 住所もあっているぞ。


さては、逃げたな?
さとなおが怖くて、勝負を避けたな?


優子「なんという自意識過剰・・・」
ボク「いや、生きていくために必要な思い上がりだ」


でもホント、慌てふためいて店をたたんだって感じなの。
どうやら閉店したようである。それとも移転か? 単なる改装か?

追記:後でわかったが、宇多津町の方に移転したのでありました。次の旅行で食べに行ったけど、めちゃうまかったっす。感想などは「さぬきうどん店リスト」を。

とにもかくにも今回は「冷天おろし」は食べられなかったわけだ。
くそぉ!
なんだか悔しいぞ!!!逃げずに闘え!「おか泉」よ!!!

くそぉー!
こうなったら「大圓」に期待だぁ!

 

■「大圓」〜持久力のある筋肉のような〜


坂出から「高松坂出道路」という有料道路(普通車250円)を突っ走ること30分くらい。 あっけなく高松に着いた。

それにしても香川には「うどん屋」が多い。

もうびっくりするくらいである。
六本木で外人を見かける確率よりも高い。

「香川県人の身体にはうどんが流れているの」と川島なお美が言ってもあっさり信じるくらいの数である。


「あ、あそこにも!」
「おお、こんなところにも!」

夫婦で指さし点呼しながら市内に入る。

今日の泊りは高松市内の厚生年金会館である。 なにしろ安い。家族3人でツインを使って8000円なのだ。 1杯100円のうどんを食べにきた我々にはぴったりの宿である。 市内に入りついでにホテルの前を通ってみる。 うん。なかなか清潔そうだ。いいいい。GOOD。充分だ。


高松に宿を取っていることもあって、高松市内でこれから3軒、うどんを食べる予定である。
16時半には「大圓」に行き、ホテルにチェックインして一休み。20時に「讃岐家」、21時には「五右衛門」に行く予定だ。
もう「おか泉」の悔しさは忘れて将来のことしか考えないことにする。


前出しまくっているうーさんは「大圓」を「高松の雄。ぶっかけの大圓といえば有名です。ぶっかけうどんなら何でも旨い。ボクのオススメはスペシャルぶっかけ(550円)です。納豆がいけるなら納豆ぶっかけもいってみては」と書いている。ぶっかけとは麺につけ麺用のだしを文字通りぶっかけて食べる食べ方だ。


『恐るべき』も

「こーれーはーいける!
 さすがぶっかけをメインにするだけあって麺は抜群!
 コシもツヤも一級品!しかもかけるダシが何とも旨み十分の
 それでいてあっさりした絶妙のコンビネーションなんである」

と絶賛。
16時半という大中途半端な時間とはいえ、期待できそうだ。うん。そろそろ本場さぬきの実力を見せてもらおうではないか。



ホテルから住所を頼りに目星をつけて行った。
都会だから住所もわかりやすいだろうし、だいたいの位置はわかっているので大丈夫だと思ったのだが……見通し甘し。全然甘かった。またしても迷いまくり。
住所は高松市今里町1-28-27である。
んん〜。ない。いや今里町にはわりとスカッと出たのだが、そのあとが迷いまくり。

目印となる大チェーン店、宮脇書店がないのである。


(余談だが宮脇書店というのは四国の大チェーンみたいだねぇ。どこにでもある。それどころかこのまえ宮崎県に旅行に行ったときも宮脇書店を見つけた。本州では見かけたことはないが、これは非常に大きな勢力をもつ影の実力者のようだ。品揃えもわりといい。 ※本州にもあるそうです。少なくとも岡山には。メールで教えていただきました。ありがとうございました)


30分ほど迷う。
歩きの30分ではなく車で、しかも市中、しかもそんなに繁華ではないところでの30分。 まぁ迷いまくりといってもいいだろう。

思い余って、歩いている田中康夫似のオバサンに聞いた。

「あの〜すいませ〜ん、宮脇書店を探しているんですが」
「高松だけで2〜30あるんじゃないかねぇ」
「……」
「……」
「あの……一番近い宮脇書店は?」
「ここらへんだけでも2つ3つあるねぇ」
「……すごいですね」
「そうなのよぉ」

お〜い!世間話するな〜!

「あの、とにかく、一番近いのは?」
「あそこを右に曲がって次の角にひとつあるねぇ」
「……参考のために二番目に近いのは?」
「……知らないねぇ」



ひとつしか知らんのかい!
なら最初から教えい!



というわけで(どんなわけじゃ)、「大圓」に着いた。
宮脇書店の斜向かいのビル(ガソリンスタンドの前)の1階にこっそりそれはあった。

一般店だ。先客が2組。こんな時間でも高松ではうどんを食べるのである。
メニューは「ぶっかけ」がほとんど。 さすが「ぶっかけ」の雄である。


「納豆ぶっかけ」410円を頼む。優子はお腹をさっぱりさせたいということで「しょうゆうどん」350円。

わりと出てくるまで時間がかかった。厨房の方を覗くと、おお! いま打っている模様!
とうとう打ち立てが食えるのか!!!


来た。
まず響子に一口あげて口封じをし(そうしないと「おなかすいてぃあぁ〜!」と叫んで他の客の迷惑になる)、期待のひと口目。ズズズ。



う、う、う、 うま、い!

 


麺はつるつるのピッカピカ。
ゴチっと歯に当たる固さはなく、ムニムニのやわらか麺。
持久力のある筋肉のような歯ごたえ。
押し戻しが実に心地よい。
歯をやさしく押し戻してくるのだ。
喉ごしも素晴らしい。
で、その上ここのは味がある。麺に見事な味があるのだ。


おーし!
やっと麺らしい麺に巡り合えたぞ。

 


「蒲生」「田村」と裏切られ続けたあげく(あんな時間に行ったコッチが悪い)、やっとうまいうどんに出会えたボクはちょっと舞い上がってしまっていた。
だってこのままずっとダメだったらどうしよう、と、かなり青くなっていたんだもん。
でもまぁ翌日食べた「驚異のさぬきうどん達」に比べたら、ここもわりかしオコチャマだったんだけどね、結果的に。


うん、まだまださぬきうどんは奥が深いのである。


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