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さぬきうどんをCHAIN EATING! 〜風雲篇2

この紀行文は1997年(まだブーム前)にさぬきうどんを求めて家族で香川を彷徨った様子を長々と書きつづったもので、翌年に「うまひゃひゃさぬきうどん」という題名で出版された元原稿でもあります。四部構成になっていて、このページは【風雲篇】のその2です。

【立志篇】12
【風雲篇】1234
【怒濤篇】123
【回天篇】1234






■やっと始まる、が。


ここまでたどり着いた方々は不安に思っておられるかもしれない。

なにせ「第二部」が始まったのに、まだ旅が一歩も始まっていないのだ。

「いったいいつまでかかるんだ!前置きばっかりじゃないか!」
「わしゃぁ長い文章は嫌いじゃ!パソコン画面をそんなに長く見とられん!」
「有益な情報が欲しいんだ!はやくそれぞれの店について書かんかい!」
「ま、まさか・・・ライフワークとして一生ねばるんじゃぁないだろうな?」


まぁ憤慨されるのもよくわかる。
でもまぁ店について書き始めたら早いから。すぐ終わっちゃうから。
そんときになってもっと読みたい!名残惜しいと思っても知らないからな!(誰も思わんって)


ということで、具体的に旅を始めよう。

時は9月。
まだ残暑ギラギラの馬鹿暑さである。
冬や春にこれを読んでいる方は、とりあえずスイカでも食べて暑い気分を思い出しておいてほしい(売ってない)。

まぁ暑いのはボクたち夫婦は我慢できる。
なにしろ「念願のさぬきうどん」が待っているからである。

が、かわいそうなのは2才半になる響子だ。

これは児童虐待ではないのか?

ふと不安になる。 だってほとんど愛車のチャイルドシートに縛りつけっぱなしで山中を走り回り、降りたと思ったらズズッと食べてまたすぐチャイルドシート。そんなことの繰り返しなのだ。
彼女は異様な食欲の持ち主とはいえ(詳しいことはこちらを参照)(←あとの展開を楽しむためにも一度読んでおいてください)、うどんばっかり食べ続けることに楽しみを見いだす歳とは思えない。(大人だって普通はそんなことしない)

しかもこの暑さ。

彼女の精神状態、健康状態、胃袋状態がとっても不安ではあるが、でも、だからといって自分達の「うどん欲」を犠牲にする気はない!(きっぱり)

子供は親の背中を見て育つ。

将来こういうバカなことに情熱を持てる破天荒な娘に育ってくれ!

ということで、平たく言えば「子供は無視」ですね。
メールとかで心配してくれた方々、親の欲望の前に子供は無力なものなのだ。
それが子供の人生である。
諸行無常。南無。



■「蒲生」〜1軒目から大迷い〜


さて。
神戸から山陽自動車道〜瀬戸大橋を通って香川までは約200キロ。車で3時間弱でつく。

本州から香川県に入ってくるとまず目に付くのはその独特の山並み。 山がなんだか尖っているのだ。 例えれば「ピグモンのトゲを抜いて地面に刺した感じ」。 九州の山もわりと独特だが、その独特さ加減は四国の方が感じるなぁ。
その尖った山々を横目で見ながら高速を坂出インターでおり、東へ向う。
今日1997年9月18日の予定は坂出市にある「蒲生」「おか泉」を食べ、その後高松市内に入って「大圓」「讃岐家」「五右衛門」の計5軒。

まずは「蒲生」である。

この店、名著「恐るべきさぬきうどん」にはこう書いてある。

  「まったく感動的なロケーションでありました。
   文字では説明できませんと逃げておく、と。
   初めて行く人、店が見えた瞬間おお!と思います」

そう。味もさぬきうどん10名店に入りながら、かつイヨーに感動的なロケーション、秘境というべきところにあるらしいではないか! かの村上春樹もここを取材して、かなりそのロケーションを気に入ったらしいし、これは期待できるぞぉ!

ただ心配なのはもう13時半なのだ。前にも書いたように、もう死んだような麺しか食べられない時間である。

……まぁいいや。
とにかく「蒲生」に向かおう。



高速を降りて地道に入る。
「恐るべきさぬきうどん」(以下『恐るべき』)に書いてある地図はあまりにもいい加減な上に略しすぎているので、あらかじめ「麺聖のうどんグルメの旅」からもう少し詳しい地図をプリントアウトしておいた。

ナビは優子である。
ハッキリ言ってかなり優秀なナビであるが、 右と左をたまに間違えるのが難である。


「次の角を左。
 じゃなくて右。
 あれ? あ、あ、お箸持つ方って左だっけ?
 え?右? あ、あ、じゃぁ右! あーあ、通りすぎちゃったじゃない!」


ぶぁかもん!「通りすぎちゃったじゃない!」じゃない!


焦ってくるとごっちゃになって

「そこ、ひぎ!」
「つぎ、みだり!」

とか言い出す。
ここまで事故を起こさないでこれたのは、ひとえに運転者であるボクの冷静沈着さのたまものなのである。

「あ、次の建設会社の前を左よ!」
「お箸を持たない方か?」
「えっと、そうそう!」
「うむ」

インターから国道11号線を高松市に向かって走り、線路を越えて川も越えて道なりにガキュッと直角に右に曲がってしばらく行くと右側に山樋建設が見えてくる。ここの斜め前の小道を「お箸を持たない方(右利きの方のみ適用)」に曲がるのだ。
いきなり田んぼだらけの場所に出た。 いくらなんでもここではないのではないか? 『恐るべき』には300メートルくらい行ってカーブミラーを左と書いてある。 んー。150メートルくらいのとこにひとつカーブミラーがある。ここか?

グゲ!曲がれないほど狭い! 曲がって帰ってこれるのだろうか?

窓から顔を出して用心しいしい曲がる。不安だ。 無事曲がって、ずんずんあぜ道を行く。とうとう家すらなくなってしまった。

「おい、なんかおかしいな」
「うん。なんかおかしいわね」
「本当にお箸を持たない方か?」
「……こっちの手が左だよ、ね?」
「うん」
「じゃぁあっている」
「……」

これが大人の会話だろうか?
まぁいいや。
とにかく結局迷ってしまったのである。


迷い走ること30分。とにかく目に付くあぜ道はすべて入ってみた。『恐るべき』に書いてあるシチュエーションからして、どのあぜ道もあやしげに見えるのだ。
30分後、森で迷ったときの基本「最初の場所に戻ってみる」(ここは森かよ)を思い出し、国道11号に戻ってもう一回山樋建設に行く。そして今度はそのちょっと南にある「加茂町」と書いてある信号を左に曲がることにした(この辺に加茂町という交差点はなぜか3つもあるので注意)。
ん?良い感じ。300メートルくらいいったら右にカーブミラーがあった。 左側には自動販売機。上にサイレンが回っている。

「この自動販売機の横を左ではないか?」

かなりの確信を持って狭すぎる道を左折したら……



そこに「蒲生」はおわしたのである。



店の前にははるかに田んぼが広がり、水戸黄門様御一行が歩いてきそうな風景である。
予想に反して「手打うどん」とでっかい看板がかかっているが、建物は木造でかなり古びている。外のテーブルではお客さんが数人、座ってズズズとやっている。田んぼの向こうには山が広がり、なんというか……ド田舎だ(まんまやないの!)

が、30分ももっとすごいシチュエーションを走り回ったせいだろうか、『恐るべき』に書いてあるほど感動的ロケーションとは思わなかった。
期待しすぎたのかもしれない。
でも、田んぼを前にして、なぜこんなところで「うどん屋」が営業できるのだ?やっていけるのか? と心配になるロケーションではあるなぁ。まぁうどん屋ではなくて製麺所なんですけどね。

「おなかすいていあぁ! なんか食べゆ!」

はいはい。
響子を4時間ぶりにチャイルドシートから下ろしていざ入店。

店内もかなり古い。黒ずんでいて暗い。左半分が製麺所。右半分の6畳ほどの広さのところにテーブルがあり、客が4人ほど座っていた。緊張する。
なにしろ本格的セルフの店は初めてなのでかなりびびっているのだ。 段取りを間違えて大恥かいたら嫌だなぁ…こりゃ臆病な人なら引き返すぞ。

先客の目が気になる。え、ええと、 まず丼を持ってうどん玉をもらうんだよな。
お、ここに丼が洗って置いてあるから、これを持って……

「丼には触らないで」

ヒェ〜〜〜〜ッ!
いきなり店のおばちゃんに怒られたぁ。

「こちらでやりますから。で、小?大?」

あ〜、びびった。店の人が湯がくところまではやってくれるようだ。ふーん、セルフでもそこまではやってくれる店もあるんだな。
本当は湯がかずに冷たいうどんを食べたかったのだが(冷たい方が麺の良さがわかるから)、もうそんなこと言う勇気がない。


「あ、えっと、あの、ボクは大で、えっと」
「えっと、私は小をお願いします」
「響子のはどうしよう?」
「私のを少し上げるわ。まだ先は長いし」


丼にうどんを湯がいて入れてくれた。 だしは自分で入れるようだ。奥の流し横に置いてある鍋からお玉ですくって入れる。
お?おあげさんも置いてあるな。よしこれも取ってと。

店の外のテーブルに丼を持ち出して食べる。


とうとう、ついに、念願の、1年ぶりの、本当の、さぬきうどんが食べられるのである。


そのうどんは角が鋭角に立っていて期待を抱かせる。

最初のひとくち。ズズズ。

 


うーん……

 


やっぱり14時なんて時間に来たボクらが馬鹿だったかなぁ……
長く作り置かれた麺のようだ。製麺所が午前中で仕事をほぼ終えるというのは本当なのだなぁ。

麺は角が立っているわりに歯に対する抵抗が少なく、すぐに歯に身を許してしまう。
歯が入っていった後の粘りはなかなかあるが、タメがない。最後の最後、薄皮一枚のタメがないのだ。
これこそ「打ち立て・茹で立て」を食べたら全然違うのであろう。

「大阪で食べるのよりはうまいけど…」
「小縣家の衝撃がちょっとないわねぇ」

ただ喉越しはよく、だしがちょっと甘めでうまい。東京や大阪ではお目にかかりにくい「いりこだし」が香り高く抜群。 それとおあげさんも最高だった。全体に味が甘いが、運転に疲れてお腹もすきまくっていたボクにはちょうど良かったのである。


ここ「蒲生」については、打ち立てを食べてないので評価はできないが、ロケーションといいその味といい、ハッキリ言ってちょっとガッカリ。
やっぱりなぁ、期待しすぎてはいけなかったんだなぁ、そう、ボクはいつも過大に期待をしてしまう癖があるんだよなぁ、うーん、ボクたちは香川までこんなものを食べるためにわざわざ来たのかぁ、なんだかなぁ……



1店目からイマイチだったのはちょっとこたえた。

少し肩を落としながら残っただしを流しに捨て、丼を返し、お金を払ってまた愛車に乗り込んだ。うどん一杯100円。おあげさんが70円。
ボクはこのおあげを買い占めて帰りたいくらい気に入っていたが(後でだんだんわかってくるが、セルフのうどん屋はおあげや天麩羅やおでんがどこもやけにうまいのだ)、なんだか意気消沈していたのでそんな元気もなく、とりあえず次の目的地「おか泉」に向けてエンジンを始動したのでありました。


駐車して食べていた時間はわずか15分。
エーもう乗るの、と子供は不機嫌顔である。


「おなかすいてぃあぁ〜! なんか食べゆぅ〜〜!」

満腹から程遠い響子は、逆におなかが刺激されてしまったらしく泣き叫んでいる。アメをあげてなんとかこの場をしのぎ、急いで2軒目に向かうことにしよう。


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