トップ > おもしろ本 > 著者別一覧 > >

LV4「フランス料理を料理する」

湯浅赳男著/洋泉社/740円

フランス料理を料理する―文明の交差点としてのフランス料理
amazon
フランス料理分析の本は巷にわりとある。が、この本がわりといいのは、フレンチにあまり詳しくない異分野学者(比較文明史)である著者が、詳しくないからこそ書けるわかりやすさでフレンチのいろんな魅力に踏み込んでいるところ。門外漢的であるからこそ気がつく切り口もあり、ボクにはとっても新鮮であった。
フレンチに詳しい人にはすでに知っている話題も多いだろうが、頭を整理する意味で非常に役に立つし、新たな発見も多かった。そして、西洋史的なものがフレンチという切り口でスッと整理できるのも快感。

個人的には、スープに関する諸考察、もともと料理とは見せ物であったという事実、カトラリー系の歴史的ブラウズに目を開かれた。
なるほどーである。ま、個人的興味としての二つ星なので、あまりフレンチに興味がないひとにはもとより面白くない本かもしれない。ただ、内容的には非常に優しく書いてあるのでフレンチ初心者でも楽しめる。

2002年06月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV3「ソウルボート」

遊田玉彦著/平凡社/1600円

ソウルボート―魂の舟
amazon
沖縄の風水を取材に行ったライターがそれをきっかけに宮古島のユタと関わり、祖先との因縁を追う魂の旅に出る……精神的シーク&ファインド小説であるが、著者の実体験を素材にしているのか、かなり濃く印象的な物語である。

フィクションなのかノンフィクションなのか判別がつかないままストーリーは進む(一人称ではないのでフィクションっぽいが、内容的にノンフィクションっぽい)。前半は妙に自意識過剰な感じがし、終盤はなんだか肩すかし感があったが、中盤は力ある展開に非常に惹きつけられた。
ただ、ノンフィクションならユタの存在や言葉にもっと突っ込んでほしいし、フィクションなら終盤で読者を置いてきぼりにしないで欲しいし、どちらとも取れないその構成が全体を中途半端にしてしまった感はある。どちらとも取れない構成だからこそ非現実的な話にもついていけるという部分は確かにあるが、読者的カタルシスがもう少し欲しいかも。
最後まで、出来事をすべて信じていいのか、それとも創作なのか、読者的スタンスを決められなかったのが残念なところ。スタンスが決められないから、魂を探す主人公の盛り上がりにいまひとつついて行きにくい。

とはいえ、個人的には非常に興味がある題材である。現実感のない毎日にふと立ち止まるには格好の内容だ。著者デビュー作らしいが、今後の作品も読んでみたい。ちなみに「ゆうでんたまひこ」と読むらしい。

2002年06月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「肩ごしの恋人」

唯川恵著/マガジンハウス/1400円

肩ごしの恋人
amazon
2001年下半期の直木賞受賞作。
読み始めは「うーん、ありがちな現代女性元気もの? こりゃ退屈かも」と思ったが、進むに従ってその描写力、キャラの立ち方、わざとらしくなく類型的でない女性の本音の出し方(←男性として読んでいても自然な本音と思える)、そして人生の主導権を社会にも男にも渡さない感じ……すべてによく書けていることに気がつく。直木賞もだてではない。

あ、でも、最初は「わざとらしい」と思ったんだった。類型的とも思ったんだった。それなのに読み終わる頃には逆の印象を持っている。そう、読み始めは主人公に違和感を与えつつすごいスピード感で導入しておいて、読み進むに従ってじわじわと外堀から主人公たちに共感を覚えさせていく感じがうまい。第一印象が悪い人ほどいい友達になる、という言葉が当てはまるような本かも。

性格の違うふたりの女性の幸せ探し物語と言ってしまうとそれまでなのだが、全体に妙にリアリティがある。設定も展開もリアリティがないのに、これだけリアリティを感じさせるのはやっぱりキャラの立ち方かなぁ。肩ごしの恋人に男を選ぶ必要もない感じとか、結論としての結婚を選ばない感じとか、妙に自然でリアリティがあるのだ。それは著者の筆力のなせる技なのかも。普通っぽく見えて侮りがたい筆力だ。

2002年04月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV4「ゴールド・ラッシュ」

柳美里著/新潮社/1700円

ゴールドラッシュ
amazon
14歳の少年の殺人、という酒鬼薔薇事件を彷彿とさせるような題材を、真摯に誠実に驚異的な集中力で書き上げた長編。

ある時期の村上龍のような行間の濃さを感じる。壮絶なる想像力のたまものだ。そう、別の意味でも、壮絶。主人公のキレ具合にすらカタルシスを感じるような筆力でラストまで緊張感を途切らすことなく引っ張っていっている様が壮絶なのだ。著者が髪を振り乱しながら書いている様が目に浮かぶような感じ。わかる? 
そういう意味では生理的に受け付けない人もいるかもしれない。ボクは受け付けたのだが、でも14歳の主人公への著者の寄り添い方が濃厚すぎて、逆に読者を冷めさせるところがあるのが残念かもしれない。14歳の心情を理解しよう、書ききろう、と涙ぐましく努力した痕跡が見えてしまう感じがちょっと…。「14歳」をアンファン・テリブル的に描くようなミスは犯していないが、やっぱりある種のイノセントさを押しつけている気はする。

筆力には敬意を表したい。行間から壮絶さが抜けたらまたひとレベル上の文学になると思う。はい、生意気です。すいません。

1999年12月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

ページの先頭に戻る

メニュー

Follow satonao310 on Twitter @satonao310

satonao [at] satonao.com
スパム対策を強化しているので、メールが戻ってきちゃう場合があります。その場合は、satonao310 [at] gmail.com へ。

ページの先頭に戻る

Google Sitemaps用XML自動生成ツール