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矢作俊彦

LV5「ららら科學の子」

矢作俊彦著/文藝春秋/1800円

ららら科學の子
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前半から中盤にかけては傑作。
後半少し著者の思い入れ過多となり読みづらくなってくるが、全体に流れるリリシズムと悔恨と諦観に、ある年齢以上(40歳以上かな。特に安保闘争年代)の読者は実に気持ちよく共感できることだろう。安保闘争で警官を殺してしまい逃げるように中国に渡った主人公が中国の山の中から30年ぶりに東京に戻ってくる(タイムマシン的設定)。その50歳の主人公が感じる浦島具合のリアリティと深い失望。日本がこの30年に歩んだ荒廃の道がそこに浮き彫りにされる。まさに科学の子と言ってもいい日本国の精神の荒廃が深く淡々と描かれていく中盤がすばらしい。

安保闘争やその世代(ある理想に生きた世代)を描いた本や映画はたくさん出た。でも誰もその結果とか答えを今に与えていない。この本は敢えてそれに挑んだ力作と言える。昭和の匂いを少しでも覚えている読者ならあのころの熱を思い出すとともにアレらはいったいどこに消えてしまったのだろうと感慨を持つだろう。そういう内省を自然と起こさせてくれる本でもある。
残念なのは、会話の主体がわかりにくいこと。カギ括弧内の発言が誰が言ったのかがすっと頭に入ってきにくい書き方なのだ。途中そこで何度もひっかかり、物語の流れを寸断した。

題名がいいなぁ。ららら科學の子。もっと重い題名もありえるのに、アトムに象徴させた上に「ららら」をつけたのが秀逸。

2003年12月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

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