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LV3「ポルトガル夢ホテル紀行」

東海砂智子、マヌエル・ブルッジス著/東京書籍/1995円

ポルトガル夢ホテル紀行
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ポルトガルの素晴らしいホテルの紹介を目的とした紀行文。臨場感溢れる軽快な文章と美しい写真で、普通のガイドブックとは一線を画している。

ポルトガルにはポウサーダ(Pousada:ポサーダ、ポウサダと読むガイドブックもある)という国営のホテルがある。スペインにあるパラドールと一緒で、古城や古い修道院などを改装して泊まれるようにしたもので、大都市から地方の小都市まで国内隅々まで広がっている。この本はそのポウサーダを中心に紹介している。

2007年3月末にボクたち家族はポルトガル旅行をした。そのときにずいぶんお世話になった本である。この中に紹介されているホテルのほんの数軒行けただけであるが、おかげで満喫できた。ポルトガルの日本語ガイドブックは少ないし、内容もいいので、ポルトガルを旅行する人にはオススメしたい。地方の小都市のポウサーダに泊まらずしてポルトガル旅行をしたとは言えない。いや、マジで。

2007年03月20日(火) 19:07:39・リンク用URL

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LV4「おい、ブッシュ、世界を返せ!」

マイケル・ムーア著/黒原敏行訳/アーティストハウス/1600円

おい、ブッシュ、世界を返せ!
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原題は「Dude,where's my country?」。邦題はギリギリの距離感かな。
相変わらず痛快な内容である。というか、前作「アホでマヌケなアメリカ白人」に比べると共和党批判が激しくなっており、ほとんど「みんなで民主党を応援しよう!」になっているので、アメリカ国外に住むボクたちにとっては少し鼻白む部分も多い(特に後半)。が、前半から中盤にかけての論点の鋭さはさすがなもので、ブッシュやネオコンたちにぜひ反論してほしいと熱望するほど。どう反論するのか是非聞きたい。そして小泉首相にも。そんな勢いに満ちた快著である。

この中であるエピソードが明かされている。あのベストセラー「アホでマヌケなアメリカ白人」が発売中止寸前だったというのだ。
あの本の初版5万部はたまたま9.11の前日に刷り上がった。出版社は内容の50%にものぼる我らが愛国的指導者ブッシュ大統領への批判を削除するよう求め、削除しなければ全部パルプに戻すと通告した。一語たりとも変更しないと突っぱねたムーアのせいで、それから5ヶ月間、本は倉庫に眠り続けた。そのことを著者の講演会で耳にした、友人でも何でもないニュージャージー州の図書館司書アン・スパラニーズは、闇に葬られようとしているその本のことを大勢の司書仲間にEメールで教えたのである。メールはネット上を駆けめぐり、数日内に怒れる司書たちのメールが出版社に殺到し、ついに出版社が折れて発売にこぎつける。出版社側はイヤイヤで、何の広告も打たず書評依頼すらしなかったらしいが、この本は発売後数時間でアマゾンの売り上げランキング1位に躍り出て、5日以内に9刷(現在52刷)。アメリカのハードカバー・ノンフィクション部門で年間ベストセラー1位まで行ったという。

ブッシュ批判の数々や「フランスは本当の意味で友達だ」と言及したあたりに並んで、このエピソードが特に印象に残った。ここから何を感じるかはみなさんにまかせますが。

2004年01月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV5「温泉教授の温泉ゼミナール」

松田忠徳著/光文社新書/680円

温泉教授の温泉ゼミナール
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この本はショッキングだった。もう温泉になんか入れない、とすら思った。
だって、なんの疑問もなく浸かっていた温泉たちが、実は「ヘドロのような単なる汚いお湯」だったなんて…(!)。

問題は循環湯である。温泉の使い回し。人が入ったあとのお湯を濾過して何度も何度も使っているのである。で、夜中に循環装置を止めると、湯船のお湯はヘドロ状になるという。そして朝にまたスイッチ入れると30分ほどで透明なお湯になるというのだ。うげげげげ。そこに入って顔とか拭いてたのかよーーー! 循環装置が湯船もしくは排水溝についている温泉宿はほとんど全滅。ヘドロ湯に浸かって「はぁ〜極楽ぅ〜」と言っていたと思って良い。また、源泉量が少ない温泉地帯で必要以上に温泉宿があるところもやばい。町をあげて循環している場合が多いというのだ。うあー。なんということ……。

もう二度と温泉なんか行かない、とすら思い込んだが、日本にもまだまだ循環湯に侵されてないちゃんとした温泉宿があるという。それはどこなのだー!と思っていたら、同じ著者がちゃんとそういう本を出していました。それが次に取り上げた「カラー版温泉教授の日本全国温泉ガイド」。

2003年05月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , 雑学・その他 , 実用・ホビー

LV4「カラー版温泉教授の日本全国温泉ガイド」

松田忠徳著/光文社新書/1200円

温泉教授の日本全国温泉ガイド―カラー版
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ということで、上の「温泉教授の温泉ゼミナール」の著者が書いた温泉ガイド本。
宿のホスピタリティとか食事とかを無視して温泉の質だけを考えた場合、この本だけ読んでいればいいのかもしれない。いや、もちろんホスピタリティや食事もいいところが選ばれているのだが、優先順位の一は「温泉の質」なのだ。著者が肌で選んだ227湯378軒。この中で、この数年で循環湯化する宿もあるかもしれないが、とりあえず2002年(初版)では上質な温泉だ。あとは読者である我々がこの温泉宿たちを育てていくしかないのだろう。温泉好きには必携かも。

2003年05月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , 実用・ホビー

LV5「アホでマヌケなアメリカ白人」

マイケル・ムーア著/松田和也訳/柏書房/1600円

アホでマヌケなアメリカ白人
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なんだかんだ言っても、この本が全米でミリオンセラーになっていることをひとつの希望にしたいと思った。
非常にエキセントリックな文章と展開で、慣れるまではちょいと鼻白む部分もあるのだが、慣れるととても素直に心に入ってくる主張の数々。とはいえ、ブッシュ批判の数々は日本人ならちょいと引くかな。感情的すぎる。でもこのくらい言わないと対抗できないのかもしれない。日本だとここまであからさまな批判は嫌われるが、アメリカではこのくらいやらないと主張は伝わらない部分もあるだろう。
ブッシュ大統領選出問題(話がすべて事実だったらマジで酷い)、イラク問題、教育問題、環境問題などなど、それぞれの主張はとても説得力がある。書名はおふざけだが、内容はまさに真の愛国書。イラク問題を語るなら必読の書かもしれない。

ちなみにマイケル・ムーアは映画監督でもある。もうすぐ公開する「ボウリング・フォー・コロンバイン」はコロンバインでの銃乱射事件を題材に社会風刺をしているという。必見。
※追記:2003年アカデミー賞ドキュメンタリー長編映画賞をこの映画が受賞。授賞式でめちゃめちゃ過激なブッシュ批判をして痛快だった。勇気あるな。全文を載せておこう。

「Whoa. On behalf of our producers Kathleen Glynn and Michael Donovan from Canada, I'd like to thank the Academy for this. I have invited my fellow documentary nominees on the stage with us, and we would like to ? they're here in solidarity with me because we like nonfiction. We like nonfiction and we live in fictitious times. We live in the time where we have fictitious election results that elects a fictitious president. We live in a time where we have a man sending us to war for fictitious reasons. Whether it's the fictition of duct tape or fictition of orange alerts we are against this war, Mr. Bush. Shame on you, Mr. Bush, shame on you. And any time you got the Pope and the Dixie Chicks against you, your time is up. Thank you very much.」

2003年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV5「ラッキーマン」

マイケル・J・フォックス著/入江真佐子訳/ソフトバンク・パブリッシング/1600円

ラッキーマン
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言わずと知れたハリウッド大スター、マイケル・J・フォックスの自叙伝。

まぁあれだけのスターなのだから本が売れるのはわかるが、この本がアメリカで大ベストセラーになったのには違う理由がある。著者にとって人生の頂点でもあった30歳のとき、彼はパーキンソン病に冒され、俳優生命もあと10年持たないと告知されたのである。その内情を含め、これからの人生、仕事、家族への思い、闘病生活などが彼のスターな半生とともに語られるのだもの、そりゃ売れるわ。そしてボクも買ってしまった。それほどファンでもないのに。

パーキンソン病に冒されたのに、題名がラッキーマンである理由を彼はこう言っている。
「この病気にならなければ、ぼくはこれほど深くて豊かな気持ちになれなかったはずだ。だから、ぼくは自分をラッキーマンだと思うのだ」。
思い上がっていた大スターとしての生活から一変してどん底へ。そして人生の深みを知りそれを本にする……厳しく言えばとってもありがちな本でもあるのだが、この本がそこらへんのありがちな回顧本と違うのは、文章と内省具合とその後の立ち直り、そしてパーキンソン病への理解と貢献がとてもよく書けているから。これは彼の性格の良さもあるのだろう。

2003年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

LV3「だからアメリカは嫌われる」

マーク・ハーツガード著/忠平美幸訳/草思社/1600円

だからアメリカは嫌われる
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原題は「The Eagle's Shadow:Why America Fascinates and Infuriates the World」。邦題とはニュアンスが違うが、反語的でどちらも面白い。

帯に「米国人ジャーナリストが、あえて自国の無知・非常識ぶりを明らかにする!」とあるように、著者は世界19カ国を巡った経験からアメリカの勘違いと非常識ぶりを事実に基づいて書いていく。世界の人々がアメリカをどう思っているか。アメリカが世界になにをやっているか。それをアメリカ人は知っているのか…。本書の中盤に出てくる「じつに厄介なことに、アメリカ人の大半は外の世界のことをほどんど知らず、とりわけ、政府がアメリカ人の名を借りて何をしているかという情報が不足しているのである」という一文がこの本の嘆きのほとんどを言い尽くしている。

なるほどな。アメリカ人は無知でマッチョなだけなのだな。一般アメリカ人の本音は「われわれはこんなに世界に貢献し、ちっとも悪いことをしていないのに、なぜ一部の国から嫌われ攻撃されるのか。ぜーんぜん理解できん!」なのだ。それが本書でよくわかった。そして著者は「いやいや、こうこうこうだから、アメリカは嫌われているのだ」と愛国者の立場で客観的に語っている。アメリカ人たちに是非読んで欲しいが、どうなのかな、売れているのだろうか?

2003年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際

LV4「iモード以前」

松永真理著/岩波書店/1400円

iモード以前
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先月「iモード事件」を読んだのは、なんとなくこの本が読みたかったからその前哨戦としてだった。ま、面白かったのだが、やはり本命と思っていたこの本の方が良かったな。iモードで成功するまでの著者の仕事遍歴、そして勤め先の「リクルート」で出会った魅力的な人々のことがくわしく書かれている。著者の肉声も前著よりはよく伝わってくる。

著者のビジネス上の成功がゴールとしてわかっているので、書き方によっては自慢になってしまう題材だが、上手にその辺の嫌味を排除してある。逆に「こういう環境とすばらしい人たちに助けられたんです」的嫌味が出てきているくらい。でも確かにいい環境だな、リクルート創成期って。どうしてもリクルート事件を連想してしまってダークなイメージになるのだが、当時のリクルートみたいな環境があれば、日本はもっと多彩な人材がいろんなところから出てきていたであろう。それを知るためだけでも読む価値はあるし、ビジネスの現場で壁にぶち当たっている人たちが読むと即効性がありそうな本でもある。ただしなんでも他者のせいにしがちな人にとっては逆効果かもしれない。

2002年10月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:経済・ビジネス , IT・ネット

LV4「iモード事件」

松永真理著/角川文庫/457円

iモード事件
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文庫になったので読んでみた。というか次作「iモード以前」を読みたかったので、いまさらながらにこのベストセラーを買って読んだのである。ま、順序として。
よく売れた本だし、著者もいろんなメディアで取り上げられ話題になったので、いまさら感想を書いても仕方ないが、内容は実に上手に客観化されてあり、どう仕事が進みどう著者が悩みどう成功したかがよくわかるおもしろい本だった。ビジネス書・教訓書としてよく出来ている。が、著者自身の体臭みたいなものは意外と伝わってこない。著者とその仲間たちがこう動いたから成功した、という一種の人的テクノロジーは書いてあっても、著者自身の肉声が意外と読者に届かない。というか、目的がビジネス書的なのだろうからそれでもいいのだろうが、ボク的にはちょっとだけ肩透かしをくった感じ。
著者の肉声に関心があるボクは、次作に期待。批判的に書いたが十分面白かったので「LOVE!」。

2002年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:経済・ビジネス , IT・ネット

LV5「君の鳥は歌を歌える」

桝野浩一著/角川文庫/590円

君の鳥は歌を歌える
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自称「日本一の特殊歌人」桝野浩一が、他人が作った映画や小説やエッセイや演劇をその内容をふまえつつ短歌にしてみた、という「鳩よ!」連載の企画を一冊にまとめたもの。題名はビートルズの「And your bird can sing」から。ボクがビートルズの曲の中でもっとも愛する一曲である。それにも惹かれて熟読。

実際、熟読に値する。 もともと実にクレバーである著者が、彼が良いと思って選んだ元ネタのエッセンスを抽出してくれたうえに、その本質を短歌にしてくれるわけで、つまりは人生のエッセンス満載なのだ。なんというか赤ペン持って線引きながら読みたい気分になるくらい啓示的な文章に満ちている。
そして肝心の短歌が実にしっくりくるのも参る。名作もいくつかある。いや、いくつもある。読み終わるのに4時間かかるような本より、一行の短歌の方が強いことがあることを改めて知った気分。著者のファンたちにとっては今更何を褒めているのだ?だろうが、まぁ今更にしろ、彼にちゃんとのめりこんでみたいとちょっと思ったのでした。

2002年07月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:詩集・歌集など , エッセイ

LV3「印刷に恋して」

松田哲夫著/内澤旬子イラスト/晶文社/2600円

印刷に恋して
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印刷の現場をルポルタージュした本。
詳細かつわかりやすいイラスト(内澤旬子)が効いている。「本とコンピュータ」という、興味あるヒトはみんな知っている季刊誌に連載していたコラムをまとめたもので、消えゆく運命にある(?)活字・写植の世界を中心に、変わりゆく印刷業界への哀惜を込めた名ルポになっている。

印刷所は新入社員のときコピーライターをしていた関係でボク自身何度も出入りした。あの頃はまだ活版だった。魔法のように刷り上がってくるのを見ていちいち興奮したのを覚えている。色校正の現場も職人ぽくて格好よく見えたものだ。
そんなこともあってボクは普通の人よりは印刷的な知識があると言ってもいい。惜しいのは、そういうボクにとっても、ちょっと難解な本になっていたことだ。専門用語をいちいち説明してはいられないだろうが、著者は読者を置いてきぼりにしてどんどん深く印刷の世界に入っていってしまう。印刷にちょっと興味がある程度の読者にはかなり辛いのではないだろうか。

印刷技術の歴史と現状はなんとなく理解できる。未来はこうなっていくのだろう、という展望も見える。これをもうちょっとだけ素人にもわかりやすく書いてくれたら……。本好きな素人層は意外と印刷に興味を持っているものだ。そこらへんを取り込むいいテーマであっただけにちょっと惜しい。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , エッセイ

LV1「ぬるーい地獄の歩き方」

松尾スズキ著/文春文庫/514円

ぬるーい地獄の歩き方
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面白い。世の中にある「公然とつらがれない地獄」、つまり「ぬるい地獄」に焦点を当てて、ぬるい地獄のまっただ中にいる人(もしくは経験者)と対談しながら、そこでの地獄のぬるぬる具合を楽しむ、という企画自体がまず面白い。

たとえば「子役」の世界。
どうやら地獄らしいが、公然とした地獄ではない。いったいどういう世界なのだ?みんなどこに消えた?そして消える前になぜ太る? そんな疑問を胸に著者は子役出身の訳者にインタビューしていく。「ぬるい地獄ってなんだ?」と読者は思って読み始めるが、読み始めてさえしまえばその意味はすぐわかる。そんな説明しがたい環境に、著者ははじめて焦点を当てた……。

そう、企画は面白いのだ。だが、出てくるテーマがどれも突っ込み不足でもうひとつなのがこの本の難点。惜しい。企画は最高なのに…。痔や若ハゲや付き人はわかる。ぬるい地獄だ。が、メディカルアートってなんだ? いじめや失恋は本当にぬるいのか? もっと他にテーマはないのか?
とても好きなタイプの本なだけに惜しいなぁ。いくらでも突っ込める題材なのに。倍くらい厚くして、テーマもより吟味して、改訂版を出して欲しいと切に望むボクなのである。

2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 雑学・その他

LV2「人生を救え!」

町田康・いしいしんじ著/毎日新聞社/1500円

人生を救え!
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町田康が毎日新聞紙上で連載した人生相談をまとめたものが前半。後半はいしいしんじと一緒に浅草とかを歩きながら対談したものだ。

前半の人生相談が圧倒的に面白い。
なんつうか、まぁしょーーーもない相談が多いのだが(スカートがはきたいとかネコがいなくなったとか何をやっても続かないとかうちのテレビが壊れたとか)、そのしょーーーもない相談に町田康が例のパンク文体で確信犯的生真面目さでトツトツと答えていくのが笑える笑える。特に、展開が読めない書き出しの妙、が見事。相談への答えなのに、質問を受けないで文章が始まる。そこらへんがうまいなーと思わせる。

いしいしんじ氏については実はよく知らない。要注目作家らしい。後半の散歩対談はそんなに面白く感じなかった。

2002年03月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 対談

LV5「6月の軌跡」

増島みどり著/文春文庫/514円

6月の軌跡―’98フランスW杯日本代表39人全証言
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副題「'98フランスW杯日本代表39人全証言」。
アジア予選を劇的に突破してW杯初出場し、3戦全敗で敗退したサッカー日本代表。その本戦のためのヨーロッパでの合宿、22人枠のために現地でカズや北澤がはずされた経緯、本戦での選手の気持ち、戦い終わっての岡田監督の辞任……98年6月に起こった様々な出来事を、著者が選手・監督・コック・コーチ・ドクター・サプライヤーなど全39人に詳細にインタビューし、時系列で構成しなおした労作。
スタッフはもちろん、言葉少ない選手達にまで、しっかり話を聞き、きちんと記録に残したことは最大限に評価されてもいいと思う。著者による日頃のコツコツとした信頼の積み重ねを感じる。信頼を勝ち得た著者にしか出来なかった仕事である。

ボクはもともとラグビー派なのでサッカーにはいまいち思い入れがないが、この本は2002年W杯前に読んでおいて良かったなぁと実感している。ピッチでなにが行われているか、どういう心理で選手・監督たちが戦っているか、どういうスタッフがそれに関わっているか、が非常によく理解でき、ちょっと感動すらした。
39人のインタビューの中では、相馬、中田、名波、そしてコックの人のものが印象に残っている。2002年本戦前に、もう一度再読したい本でもある。

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:スポーツ

LV3「アフガン褐色の日々」

松浪健四郎著/中公文庫/743円

アフガン褐色の日々
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ある掲示板で薦められた本。著者が1975年から3年間、アフガンで生きていた頃のノンフィクション・エッセイである。83年初版の少々古い本で本屋には置いてないだろうが取り寄せて読むことは出来た。

松浪健四郎~?と最初は懐疑的であったが、読み終わって、アフガンも著者自身も身近に感じている自分に気付く。アメリカ同時多発テロ事件の時節柄、他にもアフガン関係の書物はいっぱい出ており(この辺が日本人の好奇心の健全さを表しており頼もしい)、それらのきちんと突っ込んだアフガン分析に比べると本書はかなりお粗末に感じられるのも確かだが、ここには著者が肌で感じたアフガンの空気がある。シズルがある。平和の美しさがある。
著者自身、文庫版あと書きで「当時の情感のまま筆をとどめておくべきだと考え」直さなかったと書いていることでもわかるように、文章的には若く稚拙で、分析も甘い。でもその良さがいい方に出て、臨場感たっぷりの好著となった。

それにしても松浪健四郎が日本人初の国立カブール大学講師とは知らなかった。そしてこれだけ(まさに)肌でアフガンに接してきたとは…。時節柄、アフガン先駆者としての著者の「いまの」意見を聞きたいと思うのだが、マスコミに何故かほとんど彼の露出はない。マロムセイ、もっと発言を!

2001年12月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション , エッセイ , 時事・政治・国際

LV3「裏バージョン」

松浦理英子著/筑摩書房/1300円

裏ヴァージョン
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期待高まる松浦理英子7年ぶりの新作。

「親指Pの修業時代」以来待ちこがれていたが、結果は、うーむ、期待しすぎたかしら、であった。
いや、構成的には斬新・新鮮・血も踊るである。でも斬新な仕掛けには斬新な結末を期待してしまうのが読者の常。導入の第一章の一番最後の行を読んで「おや?」となり、章を追うに従ってどんどん「おお?」が広がり、構成の妙が理解できてきた途端に爆発する結末への知的期待…。

うーむ。結果的に、構成の新しさのみ印象に残ってしまったのがこの本の弱いところ。感心はするが感動はしない感じ。望みすぎなのはわかっている。感心するだけで充分かもしれない。でもなぁ…。惜しいところ。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「耳そぎ饅頭」

町田康著/マガジンハウス/1500円

耳そぎ饅頭
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雑誌「鳩よ!」に連載されていたエッセイをまとめたもの。
エッセイより小説の方が面白いと思っていた町田康であるが、このエッセイ集はとても良かった。「偏屈」というキーワードのもと、著者の世間に対する目線、普通に暮らしてみようと試みる奮闘が実にリズム良く描けており、最後の方になるとこのリズム感から離れるのが惜しくてもっともっと読みたくなってしまう麻薬性すら感じさせる。ま、ちょっとだけくどいところとかもあるんだけど、このパンクのリズムに乗れる人ならまず楽しめると思う。

例えばお馴染みのゲームソフト「タワー」を描いた章など、この著者の筆力の底力を見た気がした。自分なら同じ題材でこう上手に書けるだろうか。もちろん書けるはずもないのだが、題材が身近なだけに彼我の差がより浮き彫りにされてしまう。うーむ。

2000年06月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV5「屈辱ポンチ」

町田康著/文藝春秋/1143円

屈辱ポンチ
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エッセイがいまいちで「あれ?」と思っていたが、こうして小説を書くと文句ナシの筆力を見せる町田康。2編入っているが、特に「けものがれ、俺らの猿と」がいい。

町田康の小説は終わり方が好きである。ド頭から盛り上がり、そのまま文体の力でダラダラと盛り上がり続ける小説だからだろう、後半になっても〆が予想できない。しかし著者は忽然とあざやかに幕を下ろすのであり、その終わり方は音楽で言ったら後奏なしのサビ終わり、という感じだ。

相変わらず文学でパンクロックしているのだが、読後感がこんなにいいのは何故か。文体のリズムもあろうが、この幕の下ろし方も大いに影響している気がする。次作も即買い。

1999年02月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「悪意と憂鬱の英国式週末テニス」

マデリーン・ウィッカム著/岡田葉子訳/早川書房/2200円

悪意と憂鬱の英国式週末テニス
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なんとなく表紙と題名に惹かれて買ってしまったボクはご多分に漏れず英国好きなんだけど、これは大当たり本でした。

ただ、惹かれたくせに言うのはなんだけど、邦題はどうなんだろう?(原題はThe Tennis Party)
内容を表していないし妙にシニカルにしすぎる。実際の内容はもっともっと奥深いし、「善意と爽快」も随所にある。

昔ロンドンの同じ通りに住んでいていまでは境遇がいろいろに変わってしまった数組の夫婦が久々に週末のテニスパーティに集まって愛憎を繰り広げる…という感じのストーリーなんだけど、何より面白いのは彼らの内面描写。ある意味人間の本質である「イジワルな本音」がこれでもかと出てきて、キレイゴトに満ち溢れた小説が多い中、実にすっとする。おすすめ。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV5「イエスの遺伝子」

マイクル・コーディ著/内田昌之訳/徳間書店/1800円

イエスの遺伝子
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確かに新人作家とは思えない構成力とドラマタイズ。
読者は著者の思うがままに引っ張り回される。分野的には遺伝子ミステリーみたいな感じだろうか、遺伝子という切り口から見た救世主の姿がとっても新鮮だ。たぶん発想のもともとはそこだと思うが、そこからここまで楽しめるミステリーに仕立て上げるとは並々ならぬ力量だと思う。

物語半ばまではその新鮮さと筋立ての巧みさに惑わされてめちゃめちゃ楽しめる。
が、後半はちょっと疑問。まず主人公が都合よく助かりすぎるし、結末の砂糖菓子みたいな甘さも気にくわない。この甘さがあるからこそ「ディズニーで映画化決定!」となるのだろうが、なんだかJ.P.ホーガンがときおり見せるような底なしの性善説で終わっているところがいかにもアメリカ的でちょっと白けてしまう。ま、とはいえ、抜群に面白かったのですけどね。

1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「へらへらぼっちゃん」

町田康著/講談社/1600円

へらへらぼっちゃん
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町田康という「文体」は、ストーリーもしくは決められた字数という枠組みがあった方がぐっとしまって活きる気がする。
この本はエッセイなのだが、あの文体がだらだら続く魅力は認めながらも、やっぱり要所の切れ込みというか唄で言うなら「サビ」がないから、読んでいて衝撃が薄いのだ。なんだか才能がドバドバ垂れ流されているような、そんなもったいなさを感じる。おいおい、こんなとこでそんなすばらしいフレーズ出すならそれ小説で使ってくれー!と叫びたくなったりして。

後半の書評とかはとっても面白い。そう、こういう風に制約があった方がいいのよ、町田康は。

1998年10月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV5「くっすん大黒」

町田康著/文藝春秋/1429円

くっすん大黒
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パンク歌手「町田町蔵」が書くぶっとびの純文学。
漫画とロックとTVドラマのスピード感を持った文体で無意味なる倦怠を突っ走る出色の現代文学。読んでいて映画「ストレンジャー・ザン・バラダイス」を思い浮かべた。あの倦怠感が紙面にしっかり定着しているのだ。そして連続する語り。生活・精神にメリハリがなく気分で流れていくイマの気分がその連続語りできれいに切りとられていく。

表題作は亀の爆発から笑い転げるまでのイメージが鮮烈だし、表題作より面白い「河原のアパラ」もラストの爆発が強烈な印象を残す。あー、面白かった。いけるじゃん。文学でもロックが出来るじゃん。そんな感じ。評判は聞いていたんだけどようやく読めた。お気に入りのひとりになりそうである。

1998年08月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV1「醜形恐怖」

町澤静夫著/マガジンハウス/1400円

醜形恐怖―人はなぜ「見た目」にこだわるのか
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副題「人はなぜ見た目にこだわるのか」。
現役の精神科医が「顔やスタイルが人より悪い」と必要以上に悩む現代人の病理を解説している本で、そこに載っている様々な例はある意味非常にショッキングだった。なんてことだ…呆然とする。ただ、以前鈴木蘭々が「やっぱり人間、見た目ですから」とあるTVで言っていたが、そういう時代なんだなぁという感慨以上のモノをこの本からは得られなかった。
「醜形恐怖」という新しい言葉をスキャンダラスに紹介している本、というレベルで終わってしまっているのがちょっと残念。

1998年01月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:雑学・その他 , 時事・政治・国際

LV5「ひ弱な男とフワフワした女の国日本」

マークス寿子著/草思社/1600円

ひ弱な男とフワフワした女の国日本
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イタタタタ!まったく耳が痛い本である。
優れた日本文明批評であり(日本にいま、文明があると仮定してのことだが)、地に足のついた人生論でもある。これを読んでいると日本というオコチャマな共同体に属しているのが本当に嫌になってしまう……

と、素直に感じてしまったら著者の思うつぼだ。それこそ精神的にひ弱な証拠となってしまう。こういう本こそ無批判に読んではいけない。が、しかし、現代日本を縦横無尽になじってみせる著者の目は平明でモグラの目すら開かせてしまう力を持っている。一読し、納得&論破してみてほしい。問題意識を刺激する秀作である。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV2「マンタの天ぷら」

松任谷正隆著/二玄社/1300円

マンタの天ぷら
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ユーミンの夫にしてアレンジャーにしてCGTVのキャスターでもある著者のはじめてのエッセイ集(ちなみに愛称がマンタ)。

期待しないで読んだ。で、前半は「ハ? やっぱりね、こんな程度かな」って感じだったけど、後半、実にきっちり取り戻したのである。筆圧の弱い文章でなんだかふわふわしているのだが、結果的に気持良く読了した。この人の持ち味なんだろうなぁ。慣れてくるとどんどん自分が出てくるタイプ。慣れるまではどうにも自分が出せない感じ。
だから最後の方はちゃんと体臭まで匂ってくる感じで楽しめた。ほとんど私生活が聞えてこないユーミンについての描写もボクには面白かった。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV0「手鞠唄」

益田洋介著/潮出版社

手毬唄
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はっきり言って、益田洋介の前作「オペラ座の快人たち」は傑作であった。この必読エッセイに魅了されたボクが彼の著作を買わないわけがない。で、買った。ううむ。期待が大きすぎた分、わりとがっかりしたかも。

「オペラ座の快人たち」の頃からその自慢癖がちょっと鼻についてはいたのだが、小説になるとまた格別で、嫌味を通り越して逆に読者を納得させてしまうところはある。出てくる小道具から登場人物からすべて、そこまでしなくていいだろうにという程ブルジョア趣味。あまりにそこにこだわったせいか主題も拡散して見える。主人公の経歴からして作者の写しとわかるのだから究極の自慢ではあるなぁ。さぞ気持ちよかっただろうが、読者としてはやっぱりついていけない。含羞という言葉を贈りたい、とちょっと思ってしまった。

1996年09月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV2「ニューヨーク竹寿司物語」

松本紘宇著/朝日新聞社/1553円

ニューヨーク竹寿司物語
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いまではアメリカにも鮨が浸透してきたが、そんなアメリカ鮨界にも先駆者はいる。

東大を出てサッポロビールに勤めた著者が、会社を辞めて単身アメリカへ。そして1975年春、ニューヨークで最初の鮨屋を開くまでを描いた半生記。まさに裸一貫、NYで成功するまでの物語で、一編の青春記になっている。清々しく、楽しく読めた。誰かが「いま東京よりニューヨークの方がうまい鮨が食える」と書いていたが、その店はココらしい。食材を手に入れるのも大変、アメリカ人に理解されるのも大変、といった中、よくぞここまで辿り着いたものである。勇気と根性に敬服する一冊。

1995年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 食・酒

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