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星野博美

LV5「謝々!チャイニーズ」

星野博美著/情報センター出版局/1400円

謝々!チャイニーズ―中国・華南、真夏のトラベリング・バス
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「転がる香港に苔は生えない」で大宅賞を取った著者のデビュー作。写真集をふくめて著者の本はほとんど購入しているボクであるが、デビュー作が一番最後になってしまった。

で、感想はというと「一番おもしろいじゃん!」である。よくデビュー作にはその著者のすべてが入っているというが、まさにそんな感じ。訥々とした静かな語り口と、若くして人生の軸がぶれない安定感が全編を貫き、読者は安心して星野博美ワールドの中に埋没していくことが出来る。

副題は「中国・華南、真夏のトラベリング・バス」。
ベトナム国境の街東興(トンシン)から上海までバスを使って彷徨っていくノンフィクションだ。トラブル続きのバス旅行。いまの流行で行けば、ハイテンション・カルチャーギャップ紀行文にするのが一番お手軽なのだろうが、著者は性格の暗さ(?)もあって、じっくり足を踏みしめる。そのことが、この本を「こんな旅行をした」という単なる紀行文ではなく「こんな人生を生きた」という著者自身の物語にしている所以だろう。何度か読み返してみたくなる名ノンフィクションである。

2002年06月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション ,

LV3「銭湯の女神」

星野博美著/文藝春秋/1524円

銭湯の女神
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「転がる香港に苔は生えない」で大宅賞を取った著者の受賞第一作。
香港から帰ってきて日本に違和感を感じたまま書きつづった日常エッセイだ。「転がる香港…」がとても気に入ったボクは、続けてこれも読んでみた。結果的には予想を裏切らぬ好エッセイであった。

焦点は銭湯とファミレスに当たっている。
このふたつを中心に、彼女の回りに起こる様々な物事を通して世の中を、そして違和感だらけの日本を分析している。同じ題材を群ようこが書いたら抱腹絶倒ものになるであろうが、星野博美が書くととても内省的なものの見方になる。お昼のワイドショーとラジオ深夜便くらいは静かさが違う。もともと活発なタイプでないのだろうが、その活発でない部分を自分の中で肯定的に捉え、積極的に前面に押し出しているのが彼女の個性である。無理に明るく書くエッセイストが多い中、すがすがしくさえある。さすが写真家(本業)というべき描写力もなかなか良い。
明るい日常エッセイはそこらじゅうに溢れているが、この本のようなエッセイは著者しか書けない。その武器を最大限に使用している気持ちのよいエッセイであった。次も読みたいな。でも寡作なのだろうな。

2002年03月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV5「転がる香港に苔は生えない」

星野博美著/情報センター出版局/1900円

転がる香港に苔は生えない
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2000年4月初版の本で、大宅賞もとっており、前から読みたかったのだが本屋で見つけてやっと読んだ。581ページの大部。中国返還の前と後、激動の香港の、現地人でも住むのをためらうような地域に2年間住み込んだ著者の貴重なノンフィクションである。

取材目的で入ったのではなく人生生活として香港に入ったことがノンフィクションに厚みを与えている。しかも著者は現地語(広東語)がある程度しゃべれる。危ない場所や汚いところもあまり物怖じせず入っていく。そして現地の人とかなり濃いふれあいを重ねている。そういう貴重な体験を、ちょっと内省的だが素直で精緻な文章で表現し、ボクたちに伝えてくれている。対象を客観的かつ肌感覚で捉えられ、それを静かな筆致と心地よいリズムで表現できる日本人の書き手があの時期の香港にいたことを、同国人として幸せに思う。

題名がいい。動的で勢いのある題名なので中身もそうかなと思って読み始めるが、中身はわりと静かで分析的。そのギャップに戸惑いながら読み進むと、だんだん著者が題名に込めた思いが見えてくる。そして「さざれ石の巌となりて苔のむすまで」変わらない安定を望む日本人との鮮やかな対比が(結果として)見えてくる。

これはあの時期の香港を語った都市的ノンフィクションというよりは、「苔むす」日本人である著者が「苔の生えない」香港人の中に混じることで自分を見つけていく(もしくは見失う)、模索と喪失の物語だ。だから美しく切ない。堪能した。著者の視点と同化して他にもいろんなものを見てみたい。他の作品も読んでみよう。

2002年02月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション ,

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