たぶんボクたちは「飽きている」のだ

2010年10月26日(火) 9:28:37

昨晩は「ツイートアカデミービジネスセミナー」というセミナーを聴講してきた。

18時30分頃から始まって22時20分頃まで。座学形式としては長丁場だが、講師陣がよく、最後まで飽きなかった。講師陣は全体進行のナカヤマンさんのブログで確認できる。全部で11名。とてもいいブッキング。セミナーにはちょこちょこ参加しているが、なかなかこれだけの人を集められないものである。

テーマは「ソーシャルメディア時代の広告論」だったので一応専門領域。いまの最前線を確認すると同時に俯瞰目線を手に入れるために出かけた。前線で競って走っていると視野が狭くなり全体が俯瞰できなくなる。他の方の走り方を見ることで自分の走り方を矯正できるし、多少の俯瞰が可能になる。目的をそこに絞って聴いた。

前半は企業の中の実践者を中心にしたプレゼン。アクティブサポートの実例と「強力な味方づくり」(カトキチの「置いて」と「ドロリッチなう」)がポイント。理解しているのと実践できるのは別物。実践者たちの生の声は強い。

後半はパネル・ディスカッション。
まず、いまやソーシャルメディア第一人者となったループスの斉藤徹くんがコトラーの「マーケティング3.0」を軸に、とても感動的な動画とともにプレゼンテーション。というか、コトラーの「マーケティング3.0」はもうみなさん読んだだろうか。9月に邦訳が出たばかりだが必読の本だと思う。斉藤くんは、この、ちょっと理想を追いすぎなように思える文脈を軸にした「性善説なソーシャルネットワーキング」を、客観的な観点から熱く説いた。

前にも書いたが、斉藤くんは中学高校の同期。つまりは同い歳の49歳である。甘っちょろい校風の高校を出た同士ということもあるし、同年齢ということもあるのだろうが、ボクと考えがひじょ〜に近い。ボクも性善説的マーケティング3.0肯定派だ。

それに対し、ボクらから見たら圧倒的に若い方々(イケダさん、アドマン)が、ソーシャルメディアの未来に希望を持ちつつも、コトラーに非常に懐疑的な見解を熱く語ったのが印象的だった。もちろんパネリストとしての役回りもあったとは思うが、「現場はせいぜいマーケティング1.05程度」「マーケティングとはそもそももっとシビア」「田舎のお兄ちゃんはネットすら見ない」云々。そこに徳力さんとモデレーターの津田大介さんがバランスある冷静な意見を被せていく、という構成だった。

結果的に斉藤くんが「甘い側」として孤立した感じになったが(笑)、ボクは心の中でエールを送っていた。ボクなんかもう一歩進んで「甘くて何が悪い派」である。

現実は百も承知。たぶん登壇した若い方たちと同じかそれ以上には現実のシビアさに打ちのめされている。斉藤も同じだろうと思う。

でもね、たぶんボクたち(斉藤とボク)は「飽きている」のだ。
ウェブが普及し始めて約15年。ずっと変革に向かって走ってきたし、希望を持ってきたし、死ぬほど壁にぶち当たってきた。特にウェブ初期など酷いものだ。無理解と無慈悲の中で死屍累々だ。その中を歩いてきた。しかも、バブル期を含めて、貨幣経済を中心とした「行きすぎた資本主義」の現実にも四半世紀くらい痛いほど晒されてきた。

そして、我慢して我慢して堪え忍んだ挙げ句、ようやく「人と人との共感をもとにしたソーシャルメディア」「世界をより良くしようという意識が生まれやすいマーケティング3.0の世界」が現れてきたのである。15年間、仲間が少ない中で闘ってきて、待ち続けて、ようやくここまで来たという思い入れ(思い込み?)がある。

だから、気分的には「ソーシャルメディアで何かが変わるか」「マーケティング3.0の世界は本当に起こるのか」ではなく、「ソーシャルメディアで変える!」「マーケティング3.0の世界を実現する!」なのである。我々は評論家ではなく当事者だ。変わるかどうかを眺めている側ではなく「変える側」なのだ。

というかですね、そろそろそうなってくれないと、そういう世界を見る前に死んでしまうですよ(笑)。そんなのイヤだ。もう1.0とか2.0の世界には飽きた。老い先短い我々にその次の世界を見せてくれ!的な。

斉藤くんを一緒にして悪かったけど、少なくともボクは、実践し啓蒙し動き回り、ソーシャルメディアの流れを活用して、世の中を少しでも良くしたい。ええ、ええ、甘い。甘っちょろい。日々「やっぱり無理か」と思うことの連続だ。でも「共感」と「連帯意識」を元にした大きな変革の流れを信じたいし、その小さな小さな1プレイヤーとして機能しつづけたい。参加を募り続けたい。

セミナーの趣旨とはちょいと違うのだけど、そんな思いで会場を後にした。冷静な意見としては徳力さんの「マスマーケティングの100年が異常だった。あまりに強力すぎた」という意見にアグリー。いま、矯正・治癒の時代に入っているのだと思う。しかも世界全体をつなげることが可能なプラットフォームを手に入れた上で。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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