マリインスキー・バレエ「白鳥の湖」(ヴィシニョーワ)

2009年12月 1日(火) 8:42:48

昨晩、サンクトペテルブルグのマリインスキー・バレエ団による「白鳥の湖」に行ってきた。@東京文化会館(上野)

今回はヴィシニョーワがプリマ(主役の白鳥/黒鳥役)。
ヴィシニョーワは「ロミオとジュリエット」を観たことがあるが、これが実に魅力的なジュリエットだったので白鳥にも大期待だった。先週行ったコンダウーロワの白鳥に比べてどうだろうか。

マリインスキーの「白鳥の湖」全体についての感想は先週書いたのでそちらを読んでいただきたいが、今回も感嘆のし通し。本当に世界最高峰だなぁ…。衣装から美術から群舞からすべて素晴らしい。今回は席が前の方だったこともあり、演技の詳細をきちんと見られたが、手先・足先まですべて気が行き届いていて本当に美しかった。

この、世界最高峰の「白鳥の湖」で、主演がこれまた世界最高峰のひとりであるヴィシニョーワなのに、なんと会場には空席が1割ほども! ありえないなぁ。ロシアからわざわざ来てくれているのに…。まぁでもバレエの現状ってこういうことなのかもしれない。ボクも本場ロシアで衝撃を受けるまでは「バレエ? ケッ」って感じだったし(笑)。まさかここまで好きになる未来が来るなんて10年前には思いもしなかったしな。そのうえチケット高いし。不況だし…。わかるけど。わかるけどモッタイナイ。こんなに楽しく美しい芸術なのに。

でも、メールをいただいただけで3人、ボクを信じてマリインスキーの「白鳥」を観に行ってくれたみたい。3人ともものすごく感激して長いメールをくれた。いやー、本当に今回のマリインスキーの「白鳥」はいい。特に初心者にうってつけだったのだけど。こんなに空席があるのは残念だ…。

それはともかく、ヴィシニョーワの「白鳥」。
マリインスキーで言うならば、以前観たロパートキナの白鳥、そして先週観たコンダウーロワの白鳥と比べてどうだろうとワクワク。ヴィシニョーワは「ロミジュリ」で大ファンになっているので超期待した。

で、第一幕の湖畔のシーンではもう期待を上回る出来で、マジで涙が流れた。
ボクも広告業界で四半世紀生きてきたので、いい加減スレているオッサンなのだが、そのオッサンが泣くくらいなんだから、その良さは想像していただけると思う。白鳥の恥じらいと驚きと歓喜。白鳥の想いが美しい音楽とともに心になだれ込んでくる。ヴィシニョーワは繊細に美しく完璧に表現しわけ、一寸の隙もない。コンダウーロワのは「美しいダンス」。教科書的に美しく隙がなかったが、ヴィシニョーワのはダンスを越えて「素晴らしい演技」だった。あぁバレエとは「言葉のない芝居」なんだと再確認。ダンスは主ではなくて従。演技が主。それを感じさせてくれる表現だった。最高。

それが第二幕では一変してしまったのだから、バレエとは難しい。
まず黒鳥が似合わない。可愛らしすぎて「魔性の女」的な部分が感じられない。しかも王子役のコールプが手を引っ張りすぎてヴィシニョーワが転ぶというハプニングがあり、そこからダンス自体も堅くなってしまった(というか、陶然としていた観客がそこから少しハラハラ観るようになり、その空気を受けてヴィシニョーワ自体も緊張した感じ)。有名なグラン・フェッテに至っては「ミスを取り返すのよ!」って感じの必死さが前面に出てしまい、確かに凄かったのだけどちょっと引いた。あぁいろいろとチグハグになってしまったなぁ。ものすごく残念。

第三幕は落ち着きを取り戻し、なかなか良かったかも。今公演ではハッピーエンドなのだが(この演目、バレエ団や演出によって様々なラストがある)、最後の「白鳥から人間に戻った驚きの表現」がとても上手だった。この可憐な感じはヴィシニョーワの真骨頂だなぁ。

ということで、全体ではコンダウーロワの回の方がまとまっていて満足度が高かったかも。第一幕に限って言えばヴィシニョーワの圧勝だったけど。

王子役のコールプは個人的に顔がダメだった(笑)。ダンスは安定していて良かったかな。でも無難な感じ。
その他のキャストは前回とほぼ一緒(前回のプリマであるコンダウーロワが群舞で参加していた!)。ロットバルト役のイワン・シートニコフは相変わらず素晴らしい。道化のラフェエル・ムーシンが物足りないのも同様。王子の友人たちのヤナ・セーリナとヴァレーリヤ・マルトゥイニュクが良かった。

あとは、8日にラトマンスキー振付の「イワンと仔馬」を観に行って(8日はゲルギエフが指揮する!)、今回のボクのマリインスキー観劇は終了。
人気演目「白鳥の湖」でこの入りだから、「イワンと仔馬」は壊滅的なのかも。まぁ「イワンと仔馬」が面白いかどうかは未知数なのだけど、時間とお財布に余裕があるかたは是非! 最高峰を体感するだけでも価値はあるはず。→公演スケジュール

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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