模倣からの自由

2009年6月16日(火) 8:26:18

昨日寝るときに考えていたこと。

全盲のピアニストって、楽譜が読めないのだから、曲を覚えるときに誰かの演奏をCDで聴いたりして覚えるんだよね? そしてその演奏の「解釈」や「表情」を模倣するところから入る。特に超絶技巧系の曲だと、最初に聴いたCDを正確に再現するところから入るはず。つまり「誰かの解釈」を完全模倣して記憶するのが第一歩になる。

模倣は芸術の母だ。目が見える人でもそれは変わらない。でも、楽譜がなく、「誰かの演奏」が記憶のベースになるとき、その「模倣」からどうやって自由になるのだろう。
例えば生まれてから一度も地下室から出たことがない人がいるとして、「空」という概念をゴッホの絵で覚えたとする。まずは完全模写で「ゴッホの空」を覚える。あぁこれが「空」というものなのかぁと。 その後シスレーやらターナーやらの「空」も見るだろうけど、彼の「空」のベースは「ゴッホの空」。ある強烈な個性と完成度を持った「空」。そこから自由になって「彼自身の空」を描くに至るにはいったいどんな過程を経るのだろう。

バン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した全盲のピアニスト、辻井伸行さんの偉業を思うたびに頭に浮かぶ命題。いや、彼や全盲の人を貶めているわけではなく、純粋に演奏に感動したから書いている。たとえばルービンシュタインの偉大な演奏の完全模倣から入ったとき、どうやってルービンシュタインの偉大な演奏から自由になるのか、なれるのか、そこが知りたい。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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