武蔵小山「イリッサ」

2007年5月12日(土) 19:12:08

武蔵小山の「イリッサ」に行った。チュニジア料理店。

駅前ながらも場末っぽい飲屋街にポツンとある、手作り感漂う小さな小さなレストランで、チュニジアから来日したメリティーさんという若い女性がひとりで切り盛りしている。味もたいへん良かったが(原宿「ハンニバル・デュー」より上かも)、なによりもこのメリティーさんがいい。彼女のお人柄と夢と愛情が店の中に溢れている。料理をいただきながら、なんだか胸が熱くなった。

2004年の浜名湖花博にはチュニジア・ブースがあり、そこで料理を作るシェフを決めるためにチュニジアで料理コンテストがあったらしい。結果それはとても倍率が高いコンテストになり、100人以上の候補者が集まったという。メリティーさんはその高倍率を見事勝ち抜いて来日し、そこで料理を作り続けた後、原宿の「ハンニバル・デュー」でシェフを務め、昨年末に独立してこの店を開いたのである。腕も確かだが、なんというか、遠き異国でたったひとり、チャレンジを繰り返して着実に一歩ずつ夢を実現していっている姿に感動する。

アフリカ大陸のチュニジアから見たら、日本はファーファーイーストのちっちゃな異文化離島である。そこに女性ひとりでやって来て、小さな店を構えるに至ることがどれほどハードルが高いことか。
日本語はまだまだたどたどしく、意志の疎通は難しい。場末っぽい飲屋街のせいもあって昨晩も「酒飲ませろ」系の酔客が入店してきて大変だった。場所柄、チュニジア料理がどういうものかなんて興味もない客たちも多いだろう。でも彼女は母親に教わった家庭的チュニジア料理を毎晩ニコニコ作り続ける。

舌だけでなく、心がおいしい店だった。

年齢のせいなのか、最近料理を食べて胸が熱くなることが増えてきた。
以前は単に表面的な「うまい」「まずい」を重視して食べていた。店の背景や苦労などには敢えて目をつぶり、客にとってどうなのかだけを見ていた。それは相手をプロとして見ることでもあるし、レストラン経験を積む上で必要なステップだったとは思うが、そんな長い時期を通過して、ボクもようやく「作っている人」を食べられるようになってきたのかもしれない。

…いや、単に歳をとっただけか。歳をとるとやたら涙もろくなるって言うし。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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