ふと気がつくと、昨日と同じような一日を送っている。
昨日と同じように会社に通い、昨日と同じようにテレビを見、昨日と同じようにビールをグビる。
生活のためとはいえ、そんな毎日を送って老いぼれてくのはゴメン、だよね?

同じ顔した毎日に、ほんの小さな無理ない刺激。

機械的な毎日に人生を牛耳られないために。「オサニチ」。連載中。

 


第29回「オサニチ的胸にチクチクくる言葉(その17)」(2004年08月)

 

新入社員のときだから、もう20年近く前になる。

配属先の大ボス(部長の上)はとても独裁的な人で社内でひどく恐れられていた。新入社員にとっても怖くないはずがない。なにしろよく怒鳴る。しかも怒鳴る基準がよくわからない。仕事が順調な時に急に「おまえらアホか!」とかキレるし、かと思うと、二日酔いで大事な会議に遅れてうわっ絶対怒鳴られるぞーと思っていると、逆にニヤッと笑って許してくれたりする。今考えれば彼なりの基準も少し見えてくるのだが、とにかくわかりにくいタイプだった。

一方で彼はなかなか名言家で、ちょくちょくイイコトも言った。で、新入社員当時、彼から何度も厳しく言われたこと。それが今回の言葉である。

 

社外の人間と飲め。社内の人間とばかり飲んでるヤツはバカと思え。

 


このあと「先輩だろうが上司だろうが同じ会社の人間とばかり飲んでるヤツはバカだ。バカとつきあうな。とにかく社外の人間と飲め。勉強と思って飲め」みたいに続く。

そんなこと言われても、先輩や上司から誘われたら断れない。仕事上必要な時もあるし大事な宴会もある。ただ、なんとなく彼のイイタイコトがわかるような気がしたボクは、素直にその言葉に従った。もちろん社内とも飲みに行くが、社外の人間とも無理矢理飲みに行く機会を作り続けた。社内と一回飲んだら社外と三回飲むようにした。今でもだいたいそのペースを守っている。


そして。
40歳を越えてこの言葉の威力を実感している。
いままで20年近くこの言葉を守ってきて本当に良かった。なんといろんな人に教えられ、なんといろんな展開があったことか。

ボクは今、社外に友達がたくさんいる。会社とは関係ない社外プロジェクトもいっぱい持っている。その多岐にわたる繋がりがボクの人生をとても色濃くしてくれている。これはたぶん彼のおかげだ。

そりゃ環境も価値観も近い社内の人間と飲んでいる方がラクだろう。が、やっぱり話題は狭いし刺激も発展性もほとんどない。愚痴の言い合い、上司の悪口、そして目先の仕事の話ばかり。
しかも社内の地位職階をそのまま酒場に持ち込むから、自分がどんどん狭くなっていく。そんな無駄なことに時間を多く費やしているより、フラットに社外の人間とつきあって視野を広げた方がずっといい。

そう、サラリーマンは生きている社会が意外と狭いのだ。だから視野も狭くなり、過労や自殺も起こりやすくなる。アフター5くらいまったく環境の違う人間とつきあって、いろんな世界を知った方がいい。そういう生活を数十年続けることが長い間にどれだけ大きな差になるか。


その後、彼は、あまりに社内とつきあわなすぎたのか(笑)、失墜してどっかに左遷された。
でもきっと、社外の友達たちと豊かな老後を楽しんでいると思う。逆に社内にしか友達がいないタイプの人たちの老後はどうなっているだろう。社内の地位を失ったらその後どうなるのだろう。

みなさん、いまからでも遅くない。社外の人間とつきあいましよう。社内でもせめて違う部署の人間とつきあいましよう。社内の身近な人々とは、一日8時間、仕事でつきあえば充分なのです。






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