ふと気がつくと、昨日と同じような一日を送っている。
昨日と同じように会社に通い、昨日と同じようにテレビを見、昨日と同じようにビールをグビる。
生活のためとはいえ、そんな毎日を送って老いぼれてくのはゴメン、だよね?

同じ顔した毎日に、ほんの小さな無理ない刺激。

機械的な毎日に人生を牛耳られないために。「オサニチ」。連載中。

 


第25回「オサニチ的胸にチクチクくる言葉(その13)」(2004年04月)


なんとなく「仕事は苦」「余暇や趣味は楽」という図式が一般に成り立っている。 いわば前者はライス・ワークで、後者はライフ・ワーク。つまり仕事は、喰っていくための苦行なのである。

特に会社員にとってはそうだろう。やりたくない仕事も粛々とこなさなければならない。そうしないと給料もらえない。単調な書類作成、儀礼的で退屈な会議、上司やクライアントへのごますり、理不尽なお叱り、遅くまでの残業、毎朝のラッシュアワー通勤……。仕事は苦だ。楽しいこともあるが多くは苦だ。あぁ24時間のうち少なくとも7時間、多いときは20時間も捧げているのに、なんてこったい!

…でもちょっと待てよ。つらくしているのは自分ではないか?

書類作成を単調にしているのも会議を退屈にしているのもイヤイヤごますりしているのも、全部自分なのである。工夫したり前向きに考えたりやり方を変えるだけで、そういったいろんなことがつらくなくなったりする。というか、つらいと思っているのは「他に楽なことがある」と思いこんでいるからつらいのだ。もしくは「仕事は苦」と思いこんでいるから苦しくなるのだ。
とはいえやっぱりいろいろつらいよなぁ、などと、言ったり来たりウジウジ考えていた頃、こんな言葉にぶち当たった。

 

人生の最大幸福はその職業の道楽化にある。

 

日比谷公園の設計者であり林学博士でもある本多静六博士の言葉らしいが、博士のことはよく知らない。ただ、こういう言葉を言ったというだけで、どんな人生を送ったか想像はつく。

道楽というとどうしても老人がのんびりやっている盆栽などのイメージが湧くが、そういう仕事を見つけろと言っているのではもちろんない。この言葉のポイントは「道楽化」の「化」なのだ。道楽と思える仕事を見つけるのではなく、いまの仕事を道楽化しろ、ということなのだ。そうすれば最大幸福が訪れるよ、と。

村上龍の「13歳のハローワーク」という本が売れていて、みんなに「好きで好きで仕方ないことを職業にしよう。そして準備を早く始めよう」と提唱している。題名通り13歳を中心とした青少年向けなのだが、オジサンにもとても売れているという。子供のためにではなく自分のために買うのだ。こんな苦しい毎日の仕事ではなく、どこかにもっと楽しくて自分にあった仕事があるはずだ、と。もう一度探し直してみよう、と。
でも、リアリティをもって考えてみると、道楽と思えるような仕事(もしくは天職)に巡り会える確率はとても低い。転職したって苦労はいっしょだ。どんな仕事でも苦しい部分はあるからだ。そうではなくて「今の仕事を道楽化してみよう」と発想転換してみたらどうだろう。一度くらいそうやって自分のしている仕事を愛してみたらどうだろう。

Love what you do.

映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の主人公は、あんなに好きだった映画を職業として、なおかつ成功していながら(まさに天職だろう)、自分のしていることを愛せずにいた。実はボクたちもそうではないのだろうか。実はシアワセは足元にあったりするのではないだろうか。自分のしていることを愛して、道楽化してみたらどうだろうか。

などと自分を励ましつつ(自分への励ましだったのか)、今年も新年度が始まります。
みなさん、今年度はもっと自分の仕事を愛してみませんか。






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