小学校5年生までピアノを習っていました。

中学受験をするのでやめたのですが、正直ホッとしたのを良く覚えています。
練習が嫌いだったのです。赤いバイエルと黄色のバイエル、それにソナチネまでは終わりましたが、なんとなく自分なりに限界も感じていました。
なによりもピアノを弾くということに興味を持てなかったのです。全然楽しくなかった。親がしろというから素直にしたがっていただけでした。

中学に入ってラグビー部に入ったボクは、ピアノなんて女子供のするものだと決めつけていました。
クラシックとかポップスとかはレコードでは聞いていたのですが、自分で弾くなんて考えもしなかったのです。第一あの苦しい練習をするなんて考えただけでも嫌でした。ひとつも楽しくないんですから。

でも会社に入って考えが変わりました。
楽器が弾けるということにものすごく憧れるようになったのです。
特にピアノ。
何故でしょうねぇ。なんか会社に入ってレールにのっかってみると人生って見えちゃうじゃないですか。終身雇用制だからあと30年近く会社にいる。30年……。会社人間には絶対なりたくないけどこの30年で会社に毒されないとは限らない。ぜんぜん会社と離れたところで趣味を持ちたい。けど身体はどんどん衰えていくからスポーツとかではちょっと…。ゴルフに至っては会社の延長だし…。とかなんとか考えてピアノにたどり着いたのだけど、本当は「BARでピアノが弾けたらかっこいい」なんていう理由だったりもします。
ほら50歳くらいのおっちゃんがBARでボロロンとピアノ弾いているの、かっこいいでしょ。思いません?まぁ選曲にもよるけどね。「マイ・ウェイ」なんぞだったら最悪だけど。

で、クラビノーバを買ってさっそく始めてみました。
なにしろ練習が嫌いだったから「もう一度基礎から」なんて考えはこれっぽっちもなくJAZZの楽譜を買ってきて弾き始めました。クラシックは今さら無理だし、第一BARでクラシック弾くのって変だし。
でも全然続かなかった。「枯葉」あたりから練習し始めたのだけど難しい楽譜だと読むのにもひと苦労。簡単にアレンジしてある楽譜だとアレンジがかっこわるすぎて乗れない。すぐにボクのクラビノーバはただのインテリアと化してしまいました。

それから3年。
33歳のとき結婚を機に引っ越しました。
結婚した相手がピアノ教師だったこともあって家にアップライトのピアノが来ました。で、それをポロンポロンと触っていたら急にピアノに取りつかれたのです。
やっぱり本物のピアノは違います。音もタッチもクラビノーバとは比べようもありません。「あぁピアノがしたい!」急にまた熱が上がり始めたのでした。

今回は始める前に作戦を考えました。
単純な作戦です。「好きな曲1曲だけに絞ろう」ということです。
前回は、何曲か弾けるようになりたい、特にスタンダードが弾きたい、みたいにわりと目標が高かった。JAZZという分野も悪かった。大体JAZZってアドリブがないと単なるイージーリスニングになっちゃうんです。今回はジャンルにこだわらず「好きな曲」ということにしました。期間も長〜く設定しました。10年後45歳までに1曲完ぺきに弾ければいいや、って。

まずトライしたのは坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」
映画のサントラの方ではなくピアノ用の原曲。坂本龍一のアルバム「アベック・ピアノ」に入っています。
楽譜を買ってきて始めました。原曲はすごく難しい。少しずつ暇を見て続けました。ピアノ教師の妻にはなるべく教えてもらわないようにしました。近しい人に教わると喧嘩になりがちなのは昔母親に教えてもらっていた頃に身に染みて感じていたので。でもどうしても指の動きがわからない時は教えてもらいましたけど。

始めて1カ月くらいで弾けるようになりました。
思ったより指が動いたのと最初の1週間かなりがんばったのがきいたみたい。楽譜を見ないで弾けることが目標だった(だってBARにはこの曲の楽譜ないですから)から難しいかなぁと思ったけど、やっぱり好きな曲だからがんばれるんですね。あとCDのお手本があるというのがミソ。45歳まで、なんて超ロングな計画を立てていたのがうそみたいにあっけなく達成されちゃいました。

「戦場のメリークリスマス」がある程度弾けるようになったことで当初の目的は達したのですが、もうその頃にはピアノが面白くなってきていました。なにより無心になれるのが良い。ストレスが解消される感じなのです。

で、2曲目は「春の野を行く」
村松健のCD「夏のポケットに」に入っている名曲です。1990年前後にミズノのCM(小谷実可子の出演したSPEEDOのCM)で使用されましたから覚えていらっしゃる方もおられると思います。その後、ボクが作ったラジオCMでもこの曲を使用しました。
この曲大好きなんです。「戦場のメリークリスマス」の成功で自分を天才視していたボクですが、この曲にはとても手こずりました。単純そうに見えて奥が深い。そんな感じです。妻に言わせると「戦場のメリークリスマス」の方がよっぽど難しいらしいのですが、当時はこっちの方が難しいと嘆きつつ練習した覚えがあります。途中で挫けそうでしたもの。(でもいまではやっぱり「戦場のメリークリスマス」の方が難しいと思っています)

「春の野を行く」をなんとか弾けるようになった後、さて次は何を弾こうかな、と考えたのですが、意外と弾きたい曲がなかったんです。
「煙が目にしみる」とか「ジム・ノペティ」とかをトライしたんだけど心の底から好きな曲でないと長続きしないんですね。
まぁ2曲も弾けたからこれらにずっと磨きをかけていけばいいか、とも思ったんだけどこの2曲だけを何百回も弾いているとだんだん飽きてくる。でも次に「本当に弾きたい曲」が出てくるまでとりあえずほっておくことにしました。

そしたら出てきましたよ。
JAZZピアニストの大御所ハンク・ジョーンズのコンサートで久しぶりに聴いた「ブルー・モンク」
あ、これ弾きたい!って瞬間に思いました。
JAZZピアノですからアドリブが大事なんだけど、とりあえずテーマだけでもいいや、と。セロニアス・モンクのこの名曲はそれまでそんなに好きではなくCDも持っていたけどそれほどピンときてなかったんですけどね。でもなんか急に心の琴線に触れてしまったわけ。
幸い楽譜も見つかったので早速弾き始めました。テーマだけだと短いのでわりとすぐに弾けるようになりました。これなんかBARで弾いたらかっこいいなぁ、とほくそえんでいます。

これが「ボクが弾けるたった3曲のピアノ曲」です。
4曲目はまだ見つかっていません。昔から弾きたい曲にビリー・ジョエルの「ルート・ビアー・ラグ」があるのですが、楽譜が見つからない。
エルトン・ジョンも弾きたいけど弾き語りは嫌だし、かといってピアノ用にアレンジしたものだとイージーリスニングになっちゃうし。当分この3曲を弾いて楽しもうと思っています。

97.1.1記


追記。
友達の高島さんからキース・ジャレットの「ケルン・コンサート」のスコアをいただきました。
4曲目はこれにしよう、と弾き始めたんだけど、超難解。リズムから指の使い方から異様に難しいのです。ピアノ教師の妻に言わせても「これは難しい」ですから、本当に難しい。 ちょっと弱っているところです。

97.3.1記


これまた追記。
いまはね、「ニューシネマパラダイス」のテーマを練習しています。とても難しい・・・。

99.12.20記




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