1995年1月17日(火)AM5:46。
瞬間なぜか「打ちこわしだ!」と飛び起きた。大勢の人が丸太を持ってボクの家を壊しに来たのかと思ったのだ。
「打ちこわし」なんて高校の歴史で習って以来思い出したこともないのに、人間って不思議ですよね。


ボクのマンションは活断層のすぐ近くだったらしい。
ほら、ガルって覚えてる? 揺れの単位。あれによると、ボクの住んでいたあたりは一番値が大きい。つまり三ノ宮よりも長田よりも、ここらへんが一番揺れたということ。
幸いマンションは無事。でも中身は激しくシェイクされ、29インチのテレビが4メートルほどすっとんで、部屋の反対の隅に転がっていた。本棚も飾り棚も倒れてグチャグチャ。CDもかなり割れている。



でも一番ショックだったのは、オーディオ機器がグジャグジャになっていたこと。

 

平面型スピーカーの名器、アポジーのカリパー・シグネチャー

音場がビシッと決まったときのアポジーは、他のスピーカーを寄せつけないパフォーマンスを見せる。
スピーカーとスピーカーの間に、歌手が、楽器が、オーケストラがバーチャルに浮かび上がるのだ。あの快感は他のスピーカーではまず味わえないもの。
高音はあくまでも繊細。低音は決してブーミーにならず、上品に漂う。音量を上げても全然うるさく感じない豊かで懐の深い音質……

そのアポジーが、ゴルフシューズでダンスを踊ったあとのような傷を床に付けて(きっと倒れまいとかなりがんばったのだろうが)ぶっ倒れている。
アルミ箔で出来たその振動板はもちろん無事であろうはずがない。



CDプレーヤーのリファレンス機、フィリップスのLHH1000

飾り棚の上にレイアウトしていたそれは激しく床にたたきつけられ、あろうことかスイッチがビヨヨヨヨ〜ンと飛び出てしまった。
DAコンバーターは無事かもしれないが、もうとても使えない。



プリアンプはチェロのアンコール

友人から買ったとはいえ、これが一番の高額商品(140万くらい)。
繊細きわまりない音を持つこの名器も、飾り棚と共に床にたたきつけられた。アルミの削りだしで出来たその美しい表面に多数の傷。端っこは曲がってしまった。

だが、これは中身は無事だった。後日、おそるおそる通電して鳴らしてみたときのドキドキを想像してみてください。「音、出るじゃん! きれいじゃん!」思わず大声だしちゃいましたよ。



床に置いてあったメインアンプ、クレルのKSA80Bが無事だったのもうれしかった。

でも、この巨大な怪物の存在理由は、そう、スピーカーとの相性。アポジーとは抜群のコンビで長いことボクを酔わせてくれた。
アポジー亡きあと、こんな大きなアンプを置いておくスペースは家にはないし、置いておく理由もない。でも、降りそそぐ家具をものともせず生き延びたこいつを売り飛ばすのもかわいそうだし……クレルは物置行きとなったのでした。



ボクは物に執着するほうなのだろう。
一度愛情を注いだものをなかなか捨てたり売ったり出来ない。でも今回はこれが功を奏して、以前使っていたシステムの復活と相成った。


いま聴いているシステムはメインアンプがマッキントッシュMC7270
プリアンプは壊れなかったチェロのアンコール(そんなに相性はよくない。お互いに個性を消しあってしまった。でもしょうがない)。
CDプレーヤーはマッキントッシュMCD7007
で、スピーカーがハーベスのHLコンパクト

平面スピーカーの陶酔に帰りたいけど、これでも人にどやされそうな素晴らしいラインナップだから贅沢は言えない。ハーベスの音作り、とても好きだし、マッキントッシュはやっぱり濃厚で鈍重で温かいのがいい。

でも、いつかはまたアポジーを……と思っているのです。

あの、官能の定位、音場、音質。
やはり、あそこに帰っていくのだろうなぁ……

 

(生前の愛機たち)

 

97.3.1記(02.9.1、一部だけ改訂)


2002年9月追記;
ちなみに、1999年ころから、アポジー、復活してます。
年月が経つにつれ、アルミ箔が元のように平らに戻ってきたのです。
で、鳴らしてみたら(ちょっと定位に不安があるものの)繊細さは変わらず。よっしゃ!ということで復活しています。
CDプレーヤーはマッキントッシュを引っ張り出してきて、「マッキントッシュ→チェロ→クレル→アポジー」というめちゃ半端でユニークなラインナップで聴いています。方向性めちゃくちゃ!
でも、なんというか、温かい音が出ています。震災を一緒に超えてきた連帯でしょうか(笑



他にも地震について書いたものがあります。

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