何故なんでしょうね。自分で打った蕎麦(そば)ほどうまいものはないんです。

自分で作った料理になかなか満足がいかず不満ブリブリなボクでも蕎麦は別。「あ〜うまい!」とひとりごちちゃいますから、不思議ですよねぇ。

ふたつほど「理由」らしきものはあります。
まずなんといっても「打ち立て」であること。新鮮さですね。 これにはなかなかかないません。
蕎麦屋に打つ時間を聞いてそれにあわせて出かけていって食べる、なんてことも可能ですが、まぁ現実性の薄いお話です。でもそういう贅沢を居ながらにして味わえるのが「自分で蕎麦を打つこと」ですから、まずこれが美味しい理由。

それと、これは感覚でしかないのですが、「手でこねる快感」ってのも理由のひとつだと思います。
陶器を作るのに土をこねますよね。あれって無心になれてしかも「手で何かをこねる」っていう原始的快感があります。あれと同じ感じが蕎麦をこねるときにあるのです。
「手で何かをこねる」時に感じる充実感。これって普段のサラリーマン生活では味わえない快感です。ですから打ち立て(こねたて)を食べる頃には身体がなんかスッとしているのです。ストレスが抜けたような。
一説によると手のツボが自然と刺激されて気持ちよくなっているらしいですが、とにかくこれも美味しい理由のひとつのような…。

通信教育に「蕎麦打ち道場」というのがあるのを知ったのがきっかけで始めました。

初回に道具類(ねり鉢、打ち板、打ち棒、包丁など)とビデオ、毎月いろんな種類のそば粉と打ち粉、割り粉が送られてきて10ヵ月で43900円。高いのか安いのかよくわからないけど、まぁ10ヵ月遊べると思えば安いかな…。
でも道具類が送られてきたときはあやうく夫婦喧嘩になりそうでした。なにしろ打ち板がでかい。最低限の大きさではあるんだけど半畳くらいあるんです。

「いったいどこにしまうつもりなのよ!」
「ひえ〜」
「もっと大きいマンションに引っ越してから蕎麦なんて始めてよ!」
「ひえ〜」

 

で、まぁなんとか嵐も過ぎ去り、打ち始めたらこれが面白かったし美味しかったんです。妻も今では味方です。美味しいから。

毎週は無理ですが、月に1度は打っています。
蕎麦屋に行く回数も増えました。だってどうしても興味が湧きますからね。でも前述したように「自分で打った蕎麦が一番うまい」ので、ボクの中で蕎麦屋の評価は下がる一方です。

でもさすがにプロだなぁ、と思うことがいくつかあります。
その代表が「どうしてぶつ切りにならないのだろう?」ということ。

これはどういうことかというと、棒で伸した生地を3つ折くらいに畳んでから切るのですが、ボクがやるとその時どうしても畳んだ折り目で切れてしまうんです。
包丁を入れている最中か茹でる時かに必ず切れます。つまり折り畳んだ長さ分(こま板の長さ分)しか蕎麦の長さがないことになります。だいたい20センチ弱。
お店に行くとこれが30センチだったりするでしょ。これが不思議。どんな教本を見ても普通に畳んで普通に切っています。でもそうすると切れちゃうんですよ、折り目で。特につなぎが少ないときは。

どうしてかな。
香りは変わらないけど長い蕎麦の方が喉ごしが美味しくなります。ボクのは長くても18センチくらいなので(畳む関係上、短いのは4〜5センチになる)喉ごしがないし、なにより食べにくい。

でもある日「そば打ちの哲学」(石川文康著/ちくま新書)という本に巡り合って救われました。この作者も同じ苦しみを抱えていたんです。
この作者は「そば八寸と言われているようにそばは八寸(24センチ)以上を理想とする」と断った上で世の教本に疑問を投げかけています。その畳み方では必然的に折り目(20センチ弱)で切れてしまう、と。いやいや救いの神です。おんなじ悩みでした。

さて著者が出した答えは「山脈方式」。
これは画期的です。伸した生地の上に打ち粉で山脈を作るのです(写真参照)。こうしておいてそこで折り畳むと折り目は打ち粉により曲線を描きます。ヘヤピンカーブがゆるいカーブに変わるんですからひびが入りやすい生地でも切れにくくなります。

すごい!画期的!よくぞそこに気が付いた!20センチに満たなかった蕎麦はいきなり30〜40センチの長さになります。食べるとツルツル音がでます。ううっ。

ボクは他にもいろいろ失敗を重ねています。前記「そば打ちの哲学」やその他幾多の本に助けられなんとかまともになりつつありますが、簡単にその教訓をまとめると、

  • 加水量は教本通りでなくてもいい。こねながら手で考えよう。
  • 「こね」は100回が目安。
  • 打ち粉をけちるな。贅沢に「え?」っていうくらい使おう!
  • 生地を畳むときは「山脈方式」。
  • こま板に体重をかけないように(集中してくるとかかってしまう)
  • とにかく「でっかい鍋」で茹でましょう。
  • 茹で中は菜箸を入れない。

ボクの蕎麦打ちの様子をウェッブでデジカメ実況しようかと思ったんですが、調べたらそういうページっていっぱいあるんですね。
ですから止めることにして、今回はこれでお仕舞いにします。もう少し腕を上げたらまた違う蘊蓄を垂れることにします。

では。

97.2.23記




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