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「夢を与える」

amazonいわゆる芥川賞受賞第一作。受賞したのが2004年1月なので、3年近くかけた第一作ということになる。大きな賞を取ったあと時間をかけて第一作を書くというのはかなりのプレッシャーだと思う。そのプレッシャーの凄さを思いながら読んだ。
題名・冒頭からして大傑作の予感に震えた。
特に冒頭の数ページ、主人公が生まれるまでの表現力とテンポ、異化の仕方など、うますぎて舌を巻いた。こりゃすげー。でもその感じは中盤あたりから消え始め、ラストの方にそういう輝きは見られなかった。ストーリーテリングはしっかりしていて、最後まで飽きさせず一気に読ませるので文句はないのだが、冒頭のきらめきは最後の方にはない、というだけのこと。後半は普通の小説っぽい。
虹のように輝く子供が国民的アイドルになっていく過程を丹念に描いているのだが、急に有名になるあたりのリアリティは彼女自身が急に有名になった経緯が大きく影響していると思う。ネットや雑誌でのいわれなき「悪意」も実際に肌で感じたことだったのかもしれない。なかなかのリアリティだ。その経験と違和感と空っぽ感をいま書き残しておきたかったのだと思う。「夢を与える」存在としての綿矢りさの叫びを作品中に何度も感じた。
主人公のモデルはすぐ数人浮かんでしまうこともあるのか、最後の方は想像の範囲内で物語が収束していく。
冒頭にあったような緊迫感はやはりプレッシャーのなせる技(肩に力が入りすぎ)だったのだろうか。ボクはあのままあの調子でずっと書き続けて欲しかったと思ったけど。
2007年03月12日(月) 12:36:37・リンク用URL
ジャンル:小説(日本)
「甘露なごほうび」

amazon渡辺満里奈が「Hanako」で連載している食べ歩きエッセイみたいであるが(Hanakoは読まないので知らない)、なかなか達者でおもしろい。タレント本かぁと思いつつ期待せず買ったのだが、様々な店の食べ歩きをミーハーになりすぎず、落ち着きすぎず、偉そうなところもまるでなく、身の丈で語っていて気持ちいい。ふわふわと漂いつつ気持ちよく読了。
ボクも食べ歩きエッセイを朝日新聞に連載していたことがあるのでわかるのだが、毎週毎週食べ物について書き続けるしんどさはまた格別なものだ。どうしても切り口が似てくるし、事件も起きないし、紹介するの値しない店も多くてセレクトに困るし。著者はそのへんの苦労を感じさせず、天然な明るさで書ききっている。なかなかだなぁ、と感嘆しきり。意外と難しいのだ、こういう技。
2003年12月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「至福のナポリピッツァ」

amazon東京では数年前からナポリピッツァが流行っていて、このごろずいぶん市民権を得てきた。
ピザといえばアメリカから伝わったタイプ(シェーキーズ系とか宅配ビザ)の味と食感、と思っていたヒトがずいぶん「へー、ピザってナポリが発祥の地で、そこではこんな味と食感なんだぁ」とわかってきた感じ。まぁ実際別物と言っても良いくらい違うもんな。あのモチモチ感はいままでのピザと同じとは思えない快感だ。また、ピザという言葉もだんだんピッツァという言葉にとって変わられてきた気がする。ピッツェリアも普通の用語になってきた。
この本は広尾の「パルテノペ」の料理長が書いたオールアバウト・ピッツァの本。
ピッツァの歴史から食べ方、ナポリピッツァの条件や料理法、こぼれ話まで、これ一冊読み終われば即ピッツァ通な本なのである。すげー内容が濃い、というわけではないが、知りたいことは短く簡潔にわかりやすく書かれているし、発見も多いので、ピッツァ好きな方にとっては必読書かもしれない。
個人的に「ピッツァのナイフ・フォークでの食べ方」がめっちゃ参考になった。いっつもどうやって食べればいいか迷うのだ。なるほどなるほどこうやって食べるのが本場ではスマートなのね♪ 教えて下さってどうもありがとう。
2003年07月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:食・酒
「ダイオキシン〜神話の終焉」

amazonダイオキシンよ、お前もか! という感じである。
乱暴にひと言でまとめるなら「ダイオキシンって危険は危険だけど騒ぐほどじゃないよ。海外の研究者はもうほとんど誰も取り上げてないよ。ダイオキシン法なんて亡国法だよ。ゴミ焼却だってよくよく調べてみれば問題がすり替えられているよ。ダイオキシンはマスメディアが作り上げた恐怖なんだよ」である。驚くでしょ? 無批判にダイオキシンを怖がっていたボクらも悪いが、それにしてもダイオキシンだけは本当の悪者だと思っていたよ(笑)
わかりやすい例を上げれば、ダイオキシンは30万日分の含有食物を一気に食べない限り致死量には至らないらしい。
30万日分ってつまり820年分だ。それだけ分の食事をしてようやく致死量(60万pg/kg)に達するのだ。つまり「ダイオキシンでは死ねない」わけ。それに比べてアルコールはワイン4本分、コーヒーは1日50杯でほぼ致死量らしい。ダイオキシンの一般摂取量を抜きにして「ダイオキシンの毒性はサリンの2倍」と騒いでも意味がない。また、一度に大量のダイオキシンを摂取する事故についても騒ぐほどではないことは本書を読めばよくわかる。死に至るもっと大きな毒害は他にやまほどあるのである。
というか、ダイオキシンの恐怖をここまで取り上げているのは日本だけらしい。
ううむ。これから環境問題は眉に唾つけてかからないといけないかも。たとえば2002年、オゾンホールは過去14年間で一番小さくなったらしい。そんなこと誰も知らず、みんなでひたすら怖がっている。環境問題告発本をもう少し読んでみよう。
2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:教育・環境・福祉
「人はどうして疲れるのか」

amazonこうも日常疲れることが多いとこの題名は見逃せない。疲れ切った夜の本屋で見つけて思わずレジに運んでしまった。
で、しこしこ読み始めたのだが、なんというかあまり目新しいことは出てこなかったなぁ。つうか、疲れる原因はいまひとつ解明されていないらしい。だからこそ疲れを友に、楽しく生きよう、疲労回復にはこんな方法があるから試してみよう、みたいな収束点なのだが、うーむ、そんなことが知りたくて買ったんだっけなぁ…。
医学的な疲れの分析や対策などTVのバラエティででも見た方がきっとわかるし面白い。そんなのではなくて、新書だけに、もっと新しい視点がそこにあるのかと期待してしまったよ。
このごろの新書たち。とりあえず出せる題材は全部ツバつけとこう、みたいな流れを感じてなんだかとてもイヤ。ちょっと前だと「知の新しい切り口」的な本も多かったのに。
2002年06月01日(土) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:健康
「もしも宮中晩餐会に招かれたら」

amazon副題は「至高のマナー学」。
一見堅苦しいマナー集のようだし、だいたい「宮中晩餐会になんか招かれるかい!」ってな感じで、なんか読む気も失いそうであるが、読み始めるとそんな先入観を覆し、なかなか楽しめる。
ええ、ボクだって宮中晩餐会に招かれる可能性は確実に0%だ。でも、ここまでちゃんとシミュレートしてくれると、なんか新しい世界が開けたみたいで興味深いのだ。
そう、実用なんか関係ない。なるほど日本の頂点たる宮中晩餐会ってこういう風に進行し、こういう風に料理が出て、こういう用意がいって、こういう喜びがあるのね、と知れるだけでも楽しいではないか。
著者は元宮内庁管理部大膳課主厨。晩餐会で料理を作った彼によるバーチャル晩餐会。知らない世界を知れるという意味だけでもなかなか面白いよ。
2001年06月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
「それはまた別の話」

amazon映画ファンの中では、和田誠の対談相手といえば山田宏一と決まっていた。ベストカップル。それが今度は三谷幸喜だと言う。ま、彼も大好きだし、いい企画なので素直に喜ぶが、ボクは山田氏とのカップリングの方がやっぱり好きだな。三谷幸喜もいい味出しているけど、対等には渡り合えてなくて、わざと自分の小さなこだわりにツッコムことでなんとか自尊心を満たしている感じ。それを和田誠は微笑んで見ている感じ。
いや、三谷氏も健闘している。でももうひとつ話が膨らまないのが弱い。世代が少し違うからかな。それともこの手の「和田誠対談企画」にボクがちょっと飽きてきているのか。まぁ映画をビデオで詳細に見直せるようになってからは、和田誠の驚異の記憶力も神通力失ってきたしなぁ。
ちなみに題名はボクの口癖でもある。「あなただけ今晩は」や「ネバーエンディングストーリー」で効果的に使われていたセリフ、だよね。
2001年03月01日(木) 12:00:00・リンク用URL
「46億年の100大ニュース」

amazonあまりに「読めない」状態が続いていたので、昔読んで超絶に面白かったこの本を本棚から引っぱり出して再読。結果、やはり名著であることを確認。いやいや、やっぱり面白かった!
これって1993年初版だからもう古本屋でしか手に入らないかなぁ。
著者は放送作家であり、このネタ自体フジテレビ(当時全盛)で5時間スペシャルとして流されたものを全面的に書き下ろしたもの。放送自体は見ていないがたぶん本の方が出来はいいだろう。なにしろ「驚きと発見」の連続なのだ。ヘタに映像がない方がイメージが広がって面白いし、テレビと違って何度も反芻できるではないか。
内容は「地球史上100大ニュース」である。
ただ、視点として面白いのは「今のボクたちから見た大事なニュース」であり、歴史上大事なニュースとは一線を画していること。しかしまぁ、過去のあの事件が現在のボクたちの生活にこういう風に影響を及ぼしているのねーと驚くことしきり。今現在の生活がすべて歴史的裏打ちのもとに総括できる快感。歴史的考証がちゃんとなされていないものもあるかもしれないが、ざっくりと断言した蛮勇はとても評価できる。文章も実に軽く平明。ちょっとホイチョイが入っていて、ボクたちにはちょうどよいのだ。こういう風に歴史を教わったら、どんな子供でもついてくるだろうなぁ。
いろんな意味で大変な労作である。なぜもっと評価されないのだろう。持ってない人、読んでない人、すぐ古本屋へ走れ!!
2000年11月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
「食の女」

amazon副題は「食のプロと呼ばれる女性十人の生きる知恵」。
岸朝子、今田美奈子、本間るみ子などの著名な食の女(ひと)を生き方、そしてその半生をさらりとルポタージュした本だ。
読めばその人の大ざっぱな半生や考え方は知れる。それはそれでこの本の目的は達しているのだと思う。十人の中に無名な人もいるから、そういう意味では総花的にその人を紹介せざるを得ないのもわかる。字数が限られているという事情(雑誌の連載コラムをまとめたものらしい)もわかる。それらをわかった上で書くが、その総花的さ加減がやっぱり物足りない。手のひらでさらりと撫でるだけなら履歴の域を出ない。食の女ばかり十人インタビューしたのだから、あるテーマを持って(たとえばそれは「なぜ食なのか」でもいいし「男社会を生き抜く辛さ」でもいいし「プロ根性」についてでもいい)掘り下げて欲しかった。
求心力があまりなくて、さらりと他人の半生を読まされて、読み終わっての印象がほとんど残らないのが残念。
2000年02月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
「赤塚不二夫1000ページ」

amazonなるほどー、赤塚不二夫の天才さってこういうことを言うのだなぁ!と再納得できる本。
彼のめちゃめちゃ多い作品の中から和田誠が1000ページ分選び出したもので、「おそ松くん」「もーれつア太郎」「天才バカボン」「天才バカボンのおやじ」「レッツラゴン」「ギャグ・ゲリラ」から数編ずつ収録してある。
キャラの造形力がものすごいこともあるが、なによりその思考停止的展開力が素晴らしい。なんでそうなるの?的、なにも考えてないでしょ!的、そんなハチャメチャなのアリ?的な展開に呆然とすることしきり。以降のギャグ系はすべて赤塚のマネであると言われるのが納得できるその作品力。
「おそ松くん」あたりにはさすがに古さを感じるし、超真面目な昭和時代あってこそのギャグも多いし、冗長な作品も見受けられる。そういう意味でただ赤塚賛美するものでもないが、この人の凄さにまだ触れていない人はぜひ。入門編にはいい。というか、いまから「おそ松くん」「もーれつア太郎」あたりを手に入れるのも大変だろうから、まずこれからどうぞ、ってところかな。
1999年08月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:漫画
「渡辺文雄のどこへ行っても美味珍味」

amazon「食いしん坊俳優」という職業柄であろう(どんな職業や!)、いろんな体験を積んでいる著者の日本全国美味紀行エッセイ。
わりと「体験総まとめ」風に書いてあるのでわかりやすく読みやすい。
ただ、その分イキオイはない。ぐぐっとつり込まれて「うぅ、食べたい!」と思うような描写や表現がない。その点がちょっと残念と言えば残念。こういうエッセイは「どこまで上手に自慢するか」がキーだと思うのだが、著者はちょっと枯れて書きすぎているかもしれない。
面白い章はあるのだが、全体に「そそられない」のが食エッセイとしては弱いところ。まぁ目新しい事実が特になかったせいもあり、ちょっと内容が薄く感じられた。
1999年06月01日(火) 12:00:00・リンク用URL
「似顔絵物語」

amazonまぁなんというか、サラサラした本だ。まるで著者の似顔絵のようである。
山藤章二が書いたら濃厚にして毒のあるものになろうし、高橋春男が書いたら饒舌でデフォルメされたものになるだろう。そういう意味では画文一致。著者の本はほとんど読んでいるが、今回ほどそれを顕著に感じたことはなかった。
不満としては、似顔絵にまつわるいろいろをなぞっただけの内容の薄さと、挿し絵(似顔絵の例)の少なさ。著者による映画についての本などの内容の濃さ・着眼点の素晴らしさに比べるとどうしても見劣りがする。自分の本業な分だけ書きにくかったこともあろうが、もう少しつっこんで書いて欲しかった。
なお、表紙の絵はパターンを変えて5つこの本の中に出てくる。著者からのサービスですね。
1999年02月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
「Portrait in Jazz」

amazon和田誠のイラストに村上春樹の文章でジャズを描く、となれば冬の一晩を楽しく過ごせること請け合いだ。
まず和田誠によるジャズ・プレイヤーのイラストありきで、それに村上春樹がエッセイを乗せていっているのが普通の本と逆。プレイヤーの個性をつかんだ上質のイラストに刺激されて(プレイヤーの人選がまたすばらしい)、実にリズミカルにエッセイがスイングしている。村上春樹はこういう企画ものでも大変丁寧に書き込む。しかも新しい視点を各編ひとつは読者に与えてくれる。やっぱりすごい文筆家なのだなぁ。
というか、ジャズを好きに書く、という場を得て、イキイキしている感じ。すばらしい。
1998年02月01日(日) 12:00:00・リンク用URL




