ろ
「泥棒はライ麦畑で追いかける」

amazon「泥棒バーニイ・シリーズ」の9作目らしい。ボクは初読。泥棒のバーニイが推理に活躍するシリーズで、その大半が実際の著名人にまつわる事件になっている。
この本は、題名からわかるとおりサリンジャーをモデルにしており、ジョイス・メイナード(「ライ麦畑の迷路を抜けて」)がサリンジャーからもらったラブレターをサザビーズのオークションにかけたという実際の事件を下敷きにしているようだ。
とっつきは悪いがなかなか楽しめる推理小説。古い推理小説文法をしっかり守った感じが逆にいい味になっている。
サリンジャーをモデルにした本としては「シューレス・ジョー」(映画「フィールド・オブ・ドリームズ」の原作)がまず浮かぶが、サリンジャーの描き方自体は遜色がない感じ。彼がいかにアメリカで愛されているかがよくわかるなぁ。ただ、そこらへんの興味をさっ引くと、この小説はいきなり魅力を失うかもしれない。原題は「THE BURGLAR IN THE RYE」。
2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「ギグラーがやってきた!」

amazon愛読している書評サイト「なまもの!」(←ダジャレたれ流しギャグ系裏日記がまた抜群)でガンガンに薦められていた童話。
その薦められ方がガンガンだったせいもあり、期待に胸膨らましすぎてしまったというのが実際のところかも。充分愉快で奇想天外で印象的な本だが、おかしみの方向性や、読者(子供)イジリの仕方がボクの好みと少しずつズレている感じ。ハマる人にはハマるかもしれない。
英国でもっとも権威のある文学賞ブッカー賞を受賞した作家ロディー・ドイルのはじめての童話らしい。
破天荒な章構成と「子供にひどいことをした大人は、ギグラーという生き物によって犬のうんちを踏ませられる」というテーマが秀逸なのだが、読んでいる子供たちへのサービスの仕方がちょとくどい。はしゃぎすぎ。同じ英国の子供向けでも、ハリー・ポッターのはしゃがなさの方がボクは好きである。ま、対象年齢が少し違うのだろうけど。
2002年05月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
「夜のフロスト」

amazonフロスト・シリーズ第三作。
前二作ともにいろんなランキングでベスト1とか取っている名作。本作も当然どこかでベストに入るであろう出来映えだ。相変わらず750ページ超という大作なのだが、飽きさせず、かといってハリウッド的ジェットコースターというわけでもなく、ダラダラ~とした不思議な牽引力で読者を最後まで引っ張っている。お見事。
今回も著者は主人公に試練を与える。流感大流行でデントン警察署が壊滅状態なのだ。で、嫌みのように次々起こるおぞましい事件…。流感からも見放された名物警部フロストのゴマカシやいかに!(活躍やいかに!とならないところがこのシリーズの秀逸なところ)というところだが、なんと今回のフロスト、アクション場面までこなすのだ。まぁアクション場面に関してはさすがにサービス過剰と思われるけど。
読者は、フロストの昼も夜もない激務と大きなポカを一緒に経験し、時に一緒に自殺したくなるほど情けない気分にさらされる。でもこれはこれで勇気を与える書だな。劣悪なる労働環境、かんばしくない才能と成績、その異様なまでの仕事中毒……そんなフロストの毎日は、我が身を顧みさせるに十分なのだ。サラリーマン的価値観がはびこる現代人の共感を得る現代的ニューヒーロー(?)である。
2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「永遠に去りぬ」

amazonゴダードの第8作目。2001年2月に出た邦訳である。
誰でも認める稀代の語り部は今回も健在。600ページ超の長さを読者を飽きさせず二転三転させ、破綻なく結末まで織り上げ導く手腕は相変わらずである。
ただ、詩的趣味というか言葉を華麗にしすぎる趣味はデビュー当時より強まっており、訳者はその感じを出そうとしているのだろう、小難しい漢字や言い回しを多用している。効果は発揮しているが多用しすぎかもしれない。ボクはちょっとうんざりした(ゴダードの訳者たちはどうしてこう凝るんだろう。原文の雰囲気を出そうとしているのはわかるが…)。
今回の作品もまた、主人公がある偶然の出会いによって事件に巻き込まれていくものなのだが、他の作品に比べてちょっと主人公が巻き込まれる感じが無理矢理。最後まで主人公にカタルシスを感じなかったのも難。
また、前半がまだるっこしいし(静かな伏線としてはゴダード調ではあるのだが、ちょっと長すぎる)、ラスト近くの登場人物たちの行動も疑問。長編の収束点が人間の詩的な一言に集約されていたりするあたり、ひとつ間違えると自己満足でしかないギリギリの線を行っている。二転三転するストーリー自体はさすがなものだったが、結果的にはまぁゴダードにしてはもうひとつかな。
2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「一瞬の光のなかで」

amazon読み応え、という言葉があるけど、ゴダードの一連はまさにそれ。
久しぶりに読むゴダードだけど(読みはじめるとドップリ作品世界に浸っちゃうので忙しいときなど手を出すのに勇気がいるのだ)、二段組470ページを急かせず飽きさせずジンワリジワジワ味わわせてくれる筆力はさすがなものだ。そう、飽きさせない本はいくらでもあるけど「急かせない本」は意外と少ない。謎また謎ではあるのだけど、先を急ぎたくないストーリー展開。うーん、これってやっぱり細部の描き込みかなぁ。どこまでもじっくりつきあいたくなる本である。
男が恋に落ちたあと理不尽に放り出されて、そのあと真相に向かってさまよい歩いているうちに謎が謎を呼び、過去と現在が交差し、そして思いもかけぬ結末へと収束していく…、というゴダード小説のある典型をこの小説も持っている。いろんなエピソードがこれでもかと織り込まれ、それが無理なくオチに向かう様相は見事のひと言。写真を題材とした本作は、「千尋の闇」などの過去の大傑作群に比べればちょっと落ちる気がするものの、ゴダード・ファンには十分楽しめるもの。でもゴダード初読の方は「千尋の闇」あたりから入った方がいいかもしれない。
2001年06月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「金持ち父さん 貧乏父さん」

amazonこの手の「経済ベストセラー本」を読むのは非常に久しぶりだが、この本はそれなりに面白かった。
というか面白かったのは「資産」と「負債」の考え方、のみなんだけど。この考え方を知れただけでこの本は価値がある(ボクにとって)。そしてその考え方を知るためだけだったら、全体の1/3もあれば知れる。あとの2/3はその考え方を知っていれば自然に導き出せる方法論。
後半は実践編なんでそういうのを有り難がる方もいらっしゃると思うけど、ま、後半はカッパブックス的かも。そういう意味ですごく水増しして書いてある本でもある。でも、なんつうか、著者から見ると、その1/3を元手に展開して3倍のページ数にし、定価を高くしてより印税を増やす、という風に自著をまさに自説通り「資産」として活用したわけで、なんつうか、してやられたわけです。
他には彼の説く「すべての元凶としての恐怖」も参考になった。
うん、そう、ボクはどこかで恐怖と闘いながら、「武士は食わねど高楊枝」みたいな意識にそれを変換してお金を「卑しいもの」として見るようにして逃げてきた。でも、資本主義国に暮らしている限りそれは単に「現実を見てないバカ」である、ということに今さらながらに気づき、反省。もうちょっとマネー・リテラシーを磨いておくべきであった。あー、でももう遅いかも。「負債」増えすぎ!
2001年04月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
「東京アンダーワールド」

amazon導入部はもうひとつ。あぁこういう風に事実を羅列して「東京の裏側にこんな奴らがいたぜ」みたいなルポルタージュとして終わるのかなぁ、とちょっとうんざりしつつ読み進めていたら、1/4あたり、そう、力道山やニック・ザペッティが出てくるあたりから、物語は一気に活気を帯びだし、あとはもう最後のページまで息も尽かせぬ勢いで駆け抜ける。ふぅ、面白かった。
主人公はそのニック(六本木のニコラの店主)で、戦後すぐから20世紀最後あたりまでの東京の裏の世界を「東京のマフィア・ボス」と呼ばれた彼の行動を中心に活写しているのだが、これがなんというかやけにイキイキと面白いのである。
生々しく蠢く周辺人物もいいし、著者が海外からの視点で書いていることで、妙に客観的な匂いもついて、読者を浮遊状態にさせてくれるのもうれしい。当時の日本の流れも著者特有の断定的見方がユニークでいろいろ感心もさせられた。いろんな史実が絡み合ってくるのでちょいとゴチャゴチャしているし、たまに時系列もわからなくなるのだが、そのゴチャゴチャ感も東京ぽくてよろしい。うん。とっても面白かった。
2001年02月01日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ノンフィクション
「フロスト日和」

amazon「クリスマスのフトスト」に続く著者の第二弾。
前作が面白かったからこの本も買ってはあったのだが、文庫とはいえ700ページ超の厚さになんとなくほってあった。
けど読んだらやっぱり面白いなぁ。名物刑事というかボンクラオヤジというか、とにかく個性豊かな主人公フロスト警部の忙しすぎる毎日を描いていて、単なる推理ものではない魅力を放っている。なにしろメインの事件以外にも別の事件が次々起こっていき、それとは別に内部資料、残業統計などのデスクワークもたまりにたまり……フロスト警部のみならず読者もその忙しい日々に翻弄され疲れ切っていく。この、読者の上手な巻き込み方もこのシリーズの勝因のひとつだろう。うまい。
第三弾、第四弾と訳が進んでいることを願っている。早く次が読みたい。
1999年08月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「神が忘れた町」

amazonミステリー。ロス・トーマスは初読だが「巨匠」なのね。知らなかった。
淡々と硬質でありながらどこかで甘い文章は破綻もなく安定感を持って結末まで導いてくれるが、読者と不思議な距離感がありいまひとつのめり込めないところがある。訳のせいでもあるのだろうか。
物語的にはアメリカの司法制度をちゃんと知らないとなんだかよくわからないところが多々ある。
元最高裁判事も冒頭でかなり魅力的なキャラとして出てくるわりには最後までそのキャラが爆発しない。犯人像にしても書き込みが足りないし、怖くもない。元弁護士のキャラも最後まで立ってこない。うーん。いまいちかも。
1999年07月01日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「クリスマスのフロスト」

amazon94年の文春ミステリー第1位作品だから、何を今更って思う方もいらっしゃるでしょう。
でもこれミステリーで1位を取るってイメージではないなぁ。警察小説ではあるけれど特に推理に目を見張るわけではないし、複雑ではあるけどミステリアスな部分はそんなにないし。
ただ、面白さは抜群。主人公のフロストをはじめとする魅力的な登場人物たち、ぐんぐんひっぱるストーリー、ある意味でとってもイギリス的な筆致など、楽しめる要素に満ちている。ちょっと散漫な部分が随所にあることはあるんだけど、全体の勢いが読者を引っ張るタイプ。今年出た第二作をすぐに読もうと思わせる。
あ、そうそう、この物語、なんと「結末」から始まるんだけど、それが逆に複雑な全体をシンプルに見せていて成功している。緊迫感と期待を持って最後まで突っ走れるのだ。作者はなかなかの才人だ。
1998年11月01日(日) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「蒼穹のかなたへ」

amazonこの頃ゴダードばっかり読んでいるような気がする。
その中でもこれは出色だ。相変わらずちょっとドジな男主人公のシーク&ファインドな物語だが、今回はより読後の余韻が長い。そして衝撃的なラストシーン……これぞゴダードだよなぁ、と嘆息させられる内容だ。名作「千尋の闇」に迫っている。
いつもに比べて歴史的要素も少ないし、陰謀の首謀者も途中で読めてくる作りなのだが、ラストのインパクトが強くとても印象的な小説となった。オススメ。ちなみにこの主人公は最新作でまた活躍するとか。ゴダードお気に入りの主人公らしい。楽しみ。
1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「リオノーラの肖像」

amazonイギリスのメージャー元首相の「一番好きな小説」らしい。
多分に反戦記述の部分を意識しての発言だと思うが、やっぱり、やっぱりそれでもゴダードはデビュー作「千尋の闇」に尽きる、と思う。ただこれも間違いなく三ツ星級なのである。二転三転するストーリー、ラストにかけての畳み込みの見事さは彼ならではだし、キャラクターの独特の存在感にも感服する。本作で惜しいのは読後の余韻が少々足りないところで、人生に対する自己憐憫的快感をもっと味合わせて欲しいと個人的には思うのである。まぁこれも傑作「千尋の闇」と比べてであるが。
それにしても全作に共通するのは主人公(男。女はなぜか利口に書いてある)の間抜けさ。わざと間抜けに描いて展開を二重三重にしようとしているのだが、こう間抜けだとちょっと唖然とするところがある。
1997年09月01日(月) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「さよならは言わないで」

amazonデビュー作にして偉大な名作「千尋の闇」には到底かなわないのであるが、これはこれでやっぱり三ツ星級なのである。
騙りの連続で読者をどんどん煙に巻く手法はこの本ではちょっとうすいが、相変わらずの人間絵巻。充分楽しませてくれるのだ。ただ、主人公を始めとする登場人物たちが腑に落ちない行動をたびたびするのが残念。思い入れを邪魔されるところがある。
最後に注意!
裏表紙に書かれた粗筋を読んではいけない。絶対に。ほとんど筋が書いてある。扶桑社にクレームを付けたいくらい。どういうつもりなのだろう。必ずブックカバーを書店で付けてもらうこと。
1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「千尋の闇」

amazon素晴しい。傑作だ。小説の魅力を満喫できる。映画ではこうはいかない。
一読巻置くあたわず。寝不足になること受け合い。騙りにあふれたストーリーテリングの妙。キャラクターの見事な立ち上がり方。ストーリーテリングだけに終わらない美しい叙情性。哲学。トレヴェニアンを読んだときのような圧倒的な諦観に包まれる。この本は著者の処女作だが他の著作も急いで読みたい。
敢えて言えば、邦題に納得がいかないかも。原題は「Past Caring」。この作品にこの邦題でいいのだろうか。
これについては文庫版の訳者あとがきで説明がされているがいまひとつ納得がいかない部分がある。しかも千尋を「ちいろ」と読ませるという狙いもどうなのだろう? 個人的には少し小難しくしすぎな気がした。
1997年05月01日(木) 12:00:00・リンク用URL
ジャンル:ミステリー
「オークションこそわが人生」

amazon本を読む楽しみに「違う世界を垣間見ることが出来る」があるとするとこの本などその典型。
オークションという今まで知らなかった世界をぐっとボクの人生に近づけてくれた。
TVの「なんでも鑑定団」「ハンマープライス」などの元はすべてこの人にあるといってもいい著者の半生記である。描写にタルイところがあるのは愛敬としてもなかなか読ませる。多分内輪うけ楽屋落ちなどいろいろ罠が仕掛けられているのだろうが、悲しいかな、日本人にはもちろんわからない。
1997年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL




