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横山秀夫

LV5「陰の季節」

横山秀夫著/文春文庫/470円

陰の季節
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第5回松本清張賞受賞作。D県警シリーズ第1弾。1998年初出。

「まったく新しい警察小説の誕生!」と選考委員の激賞を浴びたらしい。確かに新しい。刑事を主人公にせず、警察組織内のいわゆる管理部門に勤める人間達を主人公にしているのだ。人事課、監察課、婦警、秘書課…。そこに配属されている「サラリーマン」たちを描いているのである。

とはいえ、きちんと警察小説になっているのがスゴイ。刑事ものと変わらぬスリル&サスペンス。裏方の悲哀とひたむきさに心を打たれる。この辺のウェットかつ緻密な描き込みは横山秀夫ならでは。「多少ウェットすぎるかな」とか「ボクらも同じサラリーマンであるが、こんな人間模様は普通ありえないな」とか「ちょっと昭和の匂いがしすぎるな」とか、いろいろネガティブな思いもあるのだが、全体に実によく出来ていると言わざるを得ない。その取材力、構成力、筆力、どれをとっても一級品。

松本清張と浅田次郎と宮本輝が混ざり合った印象だった著者であったが、その中の松本清張部分がぐんと前に出てくると俄然よくなると個人的には思っている。この本はまさにそれ。このシリーズはちょっと追ってみたい(著者の他の本はちょっとウェットが勝ちすぎていて今のところ好みではない。もう少し歳をとったらあるいは)。

2007年03月25日(日) 8:31:25・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV3「クライマーズ・ハイ」

横山秀夫著/文春文庫/660円

クライマーズ・ハイ
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1985年の日航機墜落事故を舞台にした長編小説。

御巣鷹山に飛行機が落ち、地元紙「北関東新聞」の遊軍記者として半ば干されていた主人公が全権デスクに任命される。一方、その日一緒に衝立岩を登るはずだった同僚は意識不明の重体となり病院に運ばれる。このふたつの事件が同時進行系で語られ、そこに父と子の確執、組織内のくだらない縄張り意識、友情、出世争い、報道の意味、被害者の想いなどが濃く濃く絡んでくる。この濃さが逆に鼻につく人もいるかもしれない。人間模様ありすぎではある。しかも相当オーバーである。でも未曾有の大事故を題材にしているだけにこれは仕方ないのかもしれない。よくぞこれだけの要素をまとめきったと賞賛すべきだろう。

ただ、率直に言って、墜落事故前後の臨場感が凄まじい分(この辺の描写は本当にスゴイ)、他の要素を邪魔に感じたのは事実。特に登山のエピソード。タイトルにも関連する最重要エピソードであり小説の骨そのものなのだが、それが柔く甘ったるく感じられてしまうのが小説構成上ちょっと弱いかもしれない。そのエピソードが主人公である悠木への共感につながるのであればまだしも、どうもそこまで行かないもどかしさがボクの中にあった。

人間ドラマ、は、人間を濃く濃く描けばいいというものでもない。ヘミングウェイのように事実展開だけを追っていっても描ける。そういう意味において、多少この本はToo Muchすぎる。でもそれがこの著者の「味」と言えば「味」なのだろう。絶賛する人が多いのも頷ける。

2006年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「半落ち」

横山秀夫著/講談社/1700円

半落ち
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「このミステリーがすごい2003年」と「文春ミステリーベスト10」の両方で1位とされた大ヒット作。直木賞候補にもなっている。

非常に評判がいいので期待して読み始めたが、期待しすぎたのかちょっと乗り切れなかった。文章は上品で構成もよく、細部までよく出来ている。でも、ボクにはラストの盛り上げがtoo muchかつ「よく出来ていすぎて」どうにも白ける部分が出てしまう。まぁ天童荒太の「永遠の仔」みたいな感涙大ヒット作や、「鉄道員」以降の浅田次郎の諸作でも単に「あざとい」と思ってしまうボクなので、これはもう相性が悪いというしかないのかもしれない。いや、まぁ、この本にもちゃんと泣かされたんですけどね。ちょっと涙しながらも、どうにも居心地が悪い感じが残ってしまって。

それぞれの章の刑事、検事、裁判官、記者などの人間模様は実によく書けている。
警察のシステムもいろいろと明解だった。逆に犯人が自白しない理由が一番しっくり来なかった感じ。もうちょっと他の解決策はなかったのだろうか。ちなみに半落ちとは、「全面的に容疑を認めているが口を割らない状態」かな。要するに「落ちきってはいない」状態ね。

2003年02月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

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