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矢野誠一

LV3「戸板康二の歳月」

矢野誠一著/文藝春秋/1600円

戸板康二の歳月
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中野翠著「会いたかった人」で書いたようにボクは山口瞳に無条件降伏しているのだが、彼の著書の中に繰り返し出てきたのが戸板康二の名前。「ちょっといい話」を書いた人、としか知らなかったし「とさかこうじ」と呼んでいたりして(本当はもちろん「といたやすじ」)非常識きわまりなかったボクなのだがこの本を読むともっと早く知っておくべきだったという後悔で一杯になる。

その含羞、都会的なエスプリ、紳士なる振舞い、そして知性。中野翠ではないけれど生きている内に「会いたかった人」だ。戸板氏を本当の意味で先生と慕っていた著者は悲しみに逆上することなく冷徹に彼を偲んでいて読者を静かな気持ちにさせる。山口瞳もいなくなっちゃったし、本当に昭和が遠くなったなぁ、と老人みたいにつぶやくこの頃なのである。

1996年07月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝

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