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LV5「モーレツ! イタリア家族」

ヤマザキマリ著/講談社/700円

モーレツ!イタリア家族 (ワイドKC)
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ある宿命的な出会いをもって、イタリア人の旦那さんを持つことになった漫画家ヤマザキマリさんの「イタリア嫁生活体験記」漫画。

著者のスタンスは「まぁイタリアは日本で大人気のようっすけど、実態はこんな感じっすよ」である。愛しつつも冷めている。客観的に「ありえねー」と思っている。その距離感が笑える。爆笑系エピソードも多く、何度も楽しめる内容。巻末にはご丁寧にも簡単なイタリア語会話集がついている。

著者が嫁いだのはイタリアの大家族。お金持ちの家のようだが、登場する人がそれはそれは個性的で、その中にひとり飛び込んだ日本人妻の苦労が実に偲ばれる内容。が、読者はしんみりするわけではまるでない。著者による客観的な俯瞰視点が随所に活かされているので、明るく笑って軽快に読み進められる。実際この漫画は登場人物たちにも読まれちゃっているらしいが、彼らを怒らせない程度にデフォルメして描いているバランス感覚が読者にもちょうどいい。これ以上すると読者も引くかも、のギリギリラインを上手に渡っていく。うちでは中一の娘が特に気に入り、一時は始終持って歩いていた。

実はこの本を読んだ後、著者のマリさんと知り合う機会があり、ポルトガルの自宅(現在ポルトガル在住)に遊びに行った。
彼女の周りには「漫画的エピソード」が溢れている。そういう人生を送る人っているのである。存在が面白い人の漫画はそりゃ面白いのだ。続編が待たれる。

2007年03月20日(火) 17:54:47・リンク用URL

ジャンル:漫画 ,

LV3「2050年のわたしから」

金子勝著/講談社/1200円

2050年のわたしから
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副題が「本当にリアルな日本の未来」。イラスト:ヤマザキマリ。

2005年における現実の統計を使って、その平均的傾向をグラフ上でずぅっと2050年まで延長してみるとどういう世界になっているか、ということをシミュレーションした本。だから少子化もこの減少率を保って45年続くので、0.11になっている。巨人戦の視聴率は0%。国民年金の納付率は20年前にゼロ。大卒就職率ゼロ。農家もゼロ。商店街もゼロ。日本は落ちぶれきり、アメリカも落ちぶれ、中国がナンバーワンの世界…。

もちろん単純計算なのでありえない数値なのだが、この本では2005年に20歳である主人公を狂言回しに2050年の社会をわりとドラマチックに報告しているので、意外とリアルで怖いのだ。

第三章では、そうならないための逆シミュレーションもしてくれる。第四章では著者の論説も展開されている。だから救いもあるし、読み終わると「あぁ脅かして安心させて自説を主張するプレゼン・パターンね」と気づくのだが、でもまぁこのうちのいくつかは本当にそうなってもおかしくない感じではある。

意外とさらっと読めてしまって物足りないが、現代日本について問題意識をわかりやすく持つためにはなかなか良い本。頭を整理し、問題点を絞るのに有益。

2007年03月17日(土) 18:02:52・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 評論

LV5「仏像のひみつ」

山本勉著/朝日出版社/1470円

仏像のひみつ
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あ〜全部わかっちゃったよ、仏像のこと。すっきりしたなぁ。

全部ってオーバーか。もともと東京国立博物館に勤務していた著者が「親と子のギャラリー 仏像のひみつ」展を企画しその内容を本にしたもので、つまりは子供にもわかるように書かれていて、枝葉末節は省略してある本なのだ。だから1時間もあれば読めてしまうし、もちろん「全部」はわからない。とはいえイイタイコトが極限まで絞ってあり実にクレバーに整理してあるので、スコンッと頭に入っちゃうのである。

いままでこの手の本をいくつか読んだことがあったが、学術的すぎたり詳しすぎたりで、どこかボンヤリした部分が残ったものだ。わかったつもりになったというか。理解してもすぐ忘れちゃったというか。
でもこの本はもう最低限のことしか書いていない。最低限なんだけどココがちゃんとわかるとすべて理解できるという部分を短くわかりやすく書いてある。ここまで絞って整理してくれるとイヤでもわかっちゃうなぁ。もう忘れない気がするなぁ。下手に詳しいよりこういう方が結局役立つんだよなぁ。この著者、受験参考書とか書かせてもきっと名人だぞ。

もともと般若心経を覚えてしまうくらいは古寺仏閣少年だったボク。
仏像も大好きで、たとえば奈良法華寺の十一面観音なんかはアイドル視していてわざわざ何度も会いに行ったくらいなのだが(というか部屋に小さなポスター貼っていた:笑)、まぁなんと長いこと仏像のことを理解せずにいたことか。近場の鎌倉でも行って、もう一度いちからいろいろ見てみたい気分。この本と「仏像は当時のロックスターだ」という珠玉の切り口の「見仏記」あたりを娘に読ませて、一緒に古寺仏閣めぐりをしてみたいものだ。めっちゃ老人くさいけど。

2006年12月27日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台 , 哲学・精神世界 , 雑学・その他

LV5「ららら科學の子」

矢作俊彦著/文藝春秋/1800円

ららら科學の子
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前半から中盤にかけては傑作。
後半少し著者の思い入れ過多となり読みづらくなってくるが、全体に流れるリリシズムと悔恨と諦観に、ある年齢以上(40歳以上かな。特に安保闘争年代)の読者は実に気持ちよく共感できることだろう。安保闘争で警官を殺してしまい逃げるように中国に渡った主人公が中国の山の中から30年ぶりに東京に戻ってくる(タイムマシン的設定)。その50歳の主人公が感じる浦島具合のリアリティと深い失望。日本がこの30年に歩んだ荒廃の道がそこに浮き彫りにされる。まさに科学の子と言ってもいい日本国の精神の荒廃が深く淡々と描かれていく中盤がすばらしい。

安保闘争やその世代(ある理想に生きた世代)を描いた本や映画はたくさん出た。でも誰もその結果とか答えを今に与えていない。この本は敢えてそれに挑んだ力作と言える。昭和の匂いを少しでも覚えている読者ならあのころの熱を思い出すとともにアレらはいったいどこに消えてしまったのだろうと感慨を持つだろう。そういう内省を自然と起こさせてくれる本でもある。
残念なのは、会話の主体がわかりにくいこと。カギ括弧内の発言が誰が言ったのかがすっと頭に入ってきにくい書き方なのだ。途中そこで何度もひっかかり、物語の流れを寸断した。

題名がいいなぁ。ららら科學の子。もっと重い題名もありえるのに、アトムに象徴させた上に「ららら」をつけたのが秀逸。

2003年12月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV2「生ける屍の死」

山口雅也著/創元推理文庫/980円

生ける屍の死
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山口雅也は読まないとな、と思ってはいた。
特にこの本は「このミステリーがすごい!'98」の「過去10年のベスト20(国内編)」でベスト1に選ばれているのだ。そんなに話題になったっけ?と思いつつ、やっと読んだ。

舞台はニューイングランドの片田舎。日本じゃないのね、登場人物も外人ばかりなのね、と鼻白みつつ読み進むが、「過去10年のベスト1」という期待が大きすぎるせいか、なんだか違和感や欠点ばかり目について集中できない感じ。展開も手に汗握るものではないし、読後もなんというか「創元推理文庫の海外モノの佳作を読んだ感じ」程度の印象しか残らなかった。というか、「生ける屍」の謎がさぁ!(あとはネタバレになるので書かない)。

まぁ「死なない屍」にとって殺人とはなんなのか、という命題は提示しているのかな。よくわからないけど。あと、98年当時ではかなり実験的で常識覆し系だったのかなとは思う。「けたぐり」としてはとてもよく出来ているし、文章も博識具合もたいしたものだし。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV4「最後の波の音」

山本夏彦著/文藝春秋/1600円

最後の波の音
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しつこくイジワルに(でも目は笑って)世の中とは人間とはをボクたちに教えてくれていた昭和のおじいさん、山本夏彦が2002年10月23日に87歳で死去した。著者の本は近年のものは結局ほとんど読んでいるのかな。これはその最終作。癌と闘いながらの執筆であった。

近年の作品をだいたい読んでいるヒトには「はいはい、そのお話もすでに伺いました」 が多い本。
それはここ数年の出版作には常につきまとっていたお約束みたいなものなので特に不満はない。それを承知で買っているし、しつこいジジイというスタンスを楽しんでもいたから。と、思っていたら巻末にそういうしつこさは「寄せては返す波の音と思え」とあった。そうか……でも、しつこく寄せる波の音は、もう二度と聞こえない。こんなに淋しいことはめったにない。淋しさのあまり彼が通ったという銀座の「Jolly」に行って酒を何度か飲んだ。でも波の音は聞こえない。

最後に、著者から学んだことの最大は「ふまじめ」ということだとボクは思っている。誤解を恐れず、自分の中だけでのまとめを言えば、著者の言説はこのひと言に集約されるとさえ思う。これからも精一杯ふまじめに生きようと思います、先生。

2003年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 評論

LV3「現代アート入門の入門」

山口裕美著/光文社新書/750円

現代アート入門の入門
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アート・プロデューサーである著者による現代アート入門。
よく出来た新書である。ちょっと小難しく感じがちな現代アートの現状を知る入門書としても、アート自体の見方を養う教科書としても、現代アートとのつきあい方を知る実用書としても、アート美術館はどこへ行けばいいのかを知る旅行書としても、アートを蝕む現代風潮の告発書としても、現代アートとは何かを知る哲学書としても、すべてにそれなりに使える。広範囲にサービス精神を発揮したところがこの本の良さでもあり弱さでもある。ボクには少々物足りなかったが、表題にあるとおり「入門の入門」としてはとてもよく出来ている。

著者は「現代アートのチアリーダー」として現代アートを応援するウェブを立ち上げているが、その中の「トウキョウトラッシュ宣言」が素晴らしい。是非読んで欲しい。その中の一節に「アートは問いかけであり、答えや結果ではありません。」とある。個人的に肝に銘じたい言葉である。

2003年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV5「コンピュータのきもち」

山形浩生著/アスキー/1500円

新教養としてのパソコン入門 コンピュータのきもち
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副題「新教養としてのパソコン入門」。
帯には「なぜパソコンはこんなに世話がやけるのか? コンピュータには使い方の知識だけでは片付かないもっと大事な考え方があります。それがコンピュータのきもちです」。うしし。コンピュータのきもちだって…‥おたく臭っ。だいたい入門書なんていまさら読むかいな。などと思いつつ、なぜか本屋で手にとり、ちょっと立ち読みし、すっとレジに持っていってしまったボク。

実は名著です、これ。
エッセイっぽいやさしい語り口調につられてすぅっと読みすすんでいくと、普通人でも自然とコンピュータおたくの発想法に近づけるようになっている。いや、そう、あなたはおたく発想などしたくないだろう。でも本の冒頭で「コンピュータはおたくによって作られた」という衝撃的な事実が明かされていることでわかるように、おたく発想が出来ないとコンピュータが何を考えているかがわからないのだ。永遠にコンピュータを使いこなせない。使いこなしたいなら、おたくたちがどう発想してコンピュータを作ったか、そしてどう育ってきたかを知らないといけない。知っておきさえすれば、かなりの疑問が氷解する。なかなか画期的な本なのだ。

なんつうか「アメリカ人はこういうときこういう発想をします」とかよく聞くじゃん? ボクたちはアメリカ人とつきあうとき、彼らの言語法と発想法を頭の中で整理して彼らにわかるようにコミュニケートする。そうしないと永遠にわかりあえない。それと同じような発想整理をコンピュータに対してもしてやろうということ。よりコンピュータとのコミュニケーションがスムーズになってくる。トラブル・シューティングの時にも、きっと威力を発揮する。

ええ、ボクはコンピュータ入門者ではありません。それでも、読んでいろんなことが頭の中で整理された。初心者にはもっと有用だろう。特に「コンピュータってわけわからない!」とコミュニケーションを投げてしまっているアナタ! とってもお気軽な本なので、一読をオススメします。

2002年11月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:実用・ホビー , 評論

LV5「異形の者」

柳蒼二郎著/学研/1700円

異形の者
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いわば戦国ハードボイルド。
長篠の合戦で細川忠興子飼いの忍び・丹波に拾われた赤子が主人公だが、生まれながらに異形で「こぶ」と呼ばれ、物を言うことを禁じられる。そしてこの「こぶ」、生まれながらに忍びの才能を発揮するのだが…。

豊臣の世から徳川の世へ移り進む時代を背景に、こぶの忍びとしての成長と、丹波・細川幽齋・細川忠興・細川ガラシャの生き様が見事な明暗を持って絡んでいく。
ちょっと文章が歌いすぎている部分はあるし、こぶの心を描かずに物語が進んでいる分カタルシスに欠ける部分はあるが、ストーリーも細部の描写も時代の描き方もとてもしっかりしていて素晴らしい。飽きずに最後まで一気読み。ラスト近くの意外な展開も、後味が悪く唖然とさせられるが逆にリアリティは増している。ラストのどんでんは逆に愉快。いろんなバランスを上手に取った、良くできた歴史小説である。

全体にリアリティが抜群な分、忍びの技のリアリティのなさが目立ってしまうのはご愛敬か。
忍びにまでリアリティ持たせてくれたらもっと面白かった気はする。でも忍びがリアリティ持ってもなぁ。ま、いずれにせよ、久しぶりに歴史空間を堪能できた。おすすめ。

2002年03月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:歴史小説

LV5「紙婚式」

山本文緒著/角川文庫/533円

紙婚式
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うまいねどうも。こういうのを書かせたらこの作者はやっぱりハマるなぁ。
ボクは「あなたには帰る家がある」を読んで山本文緒を好きになり他のも読み始めたのだが、「恋愛中毒」などのこのごろの山本文緒の著作はイマイチ好きではない。なんか狙っている感じがイヤだし、著者の細やかさが悪い方に出ていると思うのだ(直木賞作家をつかまえて偉そうだけど)。でも、この短編はいい。98年に出た単行本の文庫化だが、あのころの山本文緒は好きなんですね。キャッチーなものを狙わずに地味な題材をじっくり書いている。

この本は結婚のいろいろなカタチを創作した短編集なのだけど、結婚生活の空洞加減を上手に浮き彫りにしていてやるせない。結婚現体験者として「そうか~?」ももちろんあるが、著者はかなり結婚を理解していると思う。こういった山本文緒をもっと読みたいと思うボクなのでした。

2001年08月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV3「似顔絵」

山藤章二著/岩波新書/940円

カラー版 似顔絵
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なるほどねー。『似顔絵は「そっくり絵」ではありません。盛り場でよく見かける、商売としての似顔絵はそれでいいのですが、自己表現としての似顔絵は別の方向を向いています。相手の方に近寄るのではなく、逆に、自分の手元に全部引き寄せてしまう。「オレにはこう見える」という「人物論」--それがぼくの考える似顔絵です。』(本文より) これにすべてが言い尽くされているなー。「似顔絵=自己表現」。うーん。とっても共感する。そう、どんな発信も自己表現なのだ。結局自分がどう見たかなのだ。

この本を読んでそこらへんの感じが一気にクリアになり氷解した。
ありがとう、わかりやすく解いてくれて。そんな気持ち。
時代を意識したテクニックやジャーナリズムじゃなくて「オレにはこう見える」・・・。そういう目で改めて彼の作品群、似顔絵塾塾生の作品群を見ていくとまた違ったものが見えてくる。「似てるねぇ」と単純な感想ではないものが見えてくる。テレビの物まね選手権がつまらない理由も一気にわかったボクなのであった。

2000年12月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 , エッセイ , アート・舞台

LV1「翻訳はいかにすべきか」

柳瀬尚紀著/岩波新書/660円

翻訳はいかにすべきか
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「翻訳夜話」とは趣が違う翻訳論だが、内容的にはかなり味があるものだし、翻訳者の苦労話が舞台裏を見ているようで面白い。
ただ、訳例が二葉亭四迷から始まったりするあたり、とっつきにくい。翻訳という作業を個人的体験として平易に解いていった村上・柴田の著作に比べると、ちょっと大上段に振りかぶりすぎているのである。

翻訳はいかにすべきか、という題名にもそれは表れる。上からものを言ってくる感じで、なんというか翻訳は苦行か、とすら思えてくる(まぁヒトによっては苦行なのだろうが、村上・柴田のスタンスとずいぶん違うので)。そこらへんがこの本を固くしている。文春と岩波の違い、ということかな。内容的には部分部分面白いところがあったけど、本としてはイマイチ楽しめなかった、そんな感じ。

2000年11月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論

LV1「コンピュータはそんなにエライのか」

柳沢賢一郎著/洋泉社y文庫/680円

コンピュータはそんなにエライのか
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帯には「インターネットがもたらす変化は本当に産業革命につぐ大革命なのか、IT革命なんて本当に起こっているのか、それらは人々を幸せにするのか」と書かれている。
ま、ありがちな本なのだけど、インターネット系の職場に移って四六時中ネットにどっぷりつかっていると、こういうアンチテーゼ的本を読まないとなんかバランスが取れなくて怖いのだ。

細かいところに「なるほどね」という部分はあったが、あまり目新しい論は出てこなかった。
どんなものでも明と暗の部分はある。個人的にはコンピューターに初めて触って6年、「明」の部分が「暗」の部分を大きく凌駕していると感じている。便利な道具なのだ。使い方次第である。いまや電気やガス、車や冷蔵庫、テレビがない生活なんて考えられないでしょ。それと一緒。それらは人間を幸せにしたであろうか。一概には言えないのである。それと同じ。

2000年08月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論

LV1「完本 文語文」

山本夏彦著/文藝春秋/1524円

完本 文語文
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夏彦節は気持ちいいが、くどい。彼の読者なら「またこの話題かよ」というネタが山ほどここには出てくる。それを楽しむ度量を持っているつもりではあるが、ネタを広げることによって論点がずれていくのはどうにも心地が悪いものだ。

文語文という格好の主題をもって書かれたこの本をボクはかなりの期待を持って読んだ。実際、文語文の美しさやリズムをこれによって見直された。音読を前提とする文語文の美しさが失われたことは、日本の精神構造自体にもかなりの影響を与えたであろう。その辺りを(ネタをへらへら広げずに)著者はもっともっと突っ込んで書いて欲しい。ちゃんと労作にしてほしい。これでは単なる「老人の感想文」である。

ま、あとがきに「例によって調べて書くことは学者諸君にまかせて」とあるように実感的感想文であることは著者も承知の上だし、文語についていろんなところに書いたエッセイを寄せ集めたものだから求心力を失うのも仕方がない。が、文語についていま読者を共感させつつきっちり書ける数少ない書き手なのだから、(寄せ集めではない)きっちり腰を据えた読み物にしてもらいたかった。いろいろ勉強になる部分は多かったが、ちょっと中途半端に感じた一冊。

2000年06月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論

LV2「落花流水」

山本文緒著/集英社/1400円

落花流水
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「恋愛中毒」が面白かったから、次作もさっそく手に取った。一部でまたしても激賞されているらしいが、うーん、これはいまひとつ面白くなかったな。

1967年から10年ごとに7章、つまり2027年まである女性の生涯を追った物語で、章ごとに人称が変わり視点も変わる構成は非常に新鮮で面白い。
ただ、大長編ならいざ知らず、250ページ程度の本でそれをすると主人公の人格につながりが見えてこなくなり、なんだか不可解な思いのまま最終ページに行き着くことになる。それがつらい。例えばスポイルされた少女という設定で始まる第一章の記述で少女をそれなりに理解しようとした読者は2章以下の彼女の行動・性格に違和感を感じる。その間の飛び方は実生活では当然なのだが、中編小説ではなんというか読書感情に破綻を来すような気がするのだ。あ、それと、2027年とかの描写は「実際はもうちょっと違った世界になっていると思うな」みたいなSF的視点が読者に芽生えてしまうのもつらいな。

著者は相変わらず文章がうまいが、最後までカタルシスが感じられなかったし全体に散漫な印象を持った一冊。着眼点はとてもいいと思うのだけど。惜しい感じ。

2000年01月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「誰か『戦前』を知らないか」

山本夏彦著/文春新書/690円

誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答
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副題が「夏彦迷惑問答」。

雑誌「室内」の連載をまとめたもの。
20代女性の聞き手と著者が会話するというカタチで進行するが、聞き手がなかなか上手で著者の味を見事に引き出している。この会話形態は著者の成功パターンのひとつであろう。一人称ぼやきエッセイより格段にリズムが出るし、なにより読者が置いてきぼりをくわずにすむ。注意して避けてもくどい説教になってしまう時がある題材なだけに、特に若い読者(この著者の場合50歳以下すべてか)にとっていいと思う。時になかなか笑えるし(著者が意識しているほどではないのだが)。

内容的には「戦前真っ暗史観」を実に明快に切り崩していて気分がよい。
戦前戦中共に飢えてはいなかった。これも明快。その他、忘れ去られつつあるいろんな物事を釣瓶落としに語ってみせる術は驚異的なものだ。資料としてもある意味一級。この著者がなくなるともう昭和ですら「時代劇」になってしまうのだろうな、とちょっと薄ら寒くなる。

1999年12月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 時事・政治・国際 , 評論

LV4「恋愛中毒」

山本文緒著/角川書店/1800円

恋愛中毒
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著者の本を読むのは3作目。「あなたには帰る家がある」で大好きになり「みんないってしまう」で失望。もう一冊読んでみようこれがダメだったらサヨナラかも、って読んだこの本はとても面白かった。うん、次も読むぞ。

先月小池真理子の「恋」を読んだが、恋愛感情についての描写は「恋愛中毒」の方がずっと上手い。非常によく書き込んでありリアル。
特にP28からP29に至る表現なんて好きだなぁ。それと中盤までの主人公に対する読者のカタルシスが、結末にさしかかるにつれてなんとなくほどけていく感じも(確信犯的に表現していると信じるが)見事だ。ミステリーだと思わずに読み始めたら実はミステリーだった、というのも軽い驚きだった。

ただ、題名が内容と合致しないのが難。よく出来た題名なだけにちょっと騙された感が残る。この内容だと「中毒」というよりは「依存」なんだな。「恋愛依存」じゃ題名にならないけど。なんというか、中毒的にいくつもの恋愛が描かれていると思ったら、結果的に2つの恋愛しか書かれていないのがなんだかはぐらかされた感じがして損なのだ。

1999年11月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本) , ミステリー

LV5「路地裏」

梁石日・黒田征太郎著/アートン/1500円

路地裏
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あまり語られることのなかった黒征の一生がきっちり本人の口から語られている。
それだけでも個人的には買い。梁石日(ヤン・ソギル)についてはまだ著書を読んでないから思い入れがないのだが、著者ふたりの体臭みたいなものがしっかり匂ってくる対談・エッセイ集で、ボクはとても興味深く読んだ。いや、興味深いなんてもんじゃない。かなり刺激を受けた。

文章の端々に彼らの根っこが見えてくる。彼らの行き方の骨みたいなものが浮かび上がってくる。「ろくでもない人生」を精一杯「おもしろがって生きている」彼らの背筋の伸び方にうらやみを感じない人はいないだろう。ボクは嫉妬した。でも「まだ間に合う、まだやれる、まだ追いつける」とも思った。黒田征太郎は60歳。20歳以上年上である。20年あったらなんでも出来る。20年後を見ていろよ。久しぶりにめちゃめちゃ前向きにさせてくれた一冊。

1999年09月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:対談 , 自伝・評伝

LV4「柳生十兵衛死す」

山田風太郎著/小学館文庫/上657円下657円

柳生十兵衛死す〈上〉
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なにをいまさら、の有名本。
実は山田風太郎って読みたい読みたいと思いながら初読。文庫になったのを機に読んでみた、というわけです。

剣あり、能あり、250年のタイムトラベルあり、一休さんあり、足利義満あり、そして世阿弥に二人の柳生十兵衛あり…。
「奇想天外の大幻魔戦」というのはウソではなく、まぁ時代劇を現代のエンターテイメントで塗り直して見事に再構築した逸品なのでした。全体的に作者の淡白さが目につくし、ラストがどうもあっけないのが腑に落ちないし、後日談ももうちょっと読みたいと思うのだけど。くだらない、と言う人もいるかもしれないが、これはこれ。ちゃんと値段以上分楽しめた。

1999年07月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:歴史小説 , SF

LV3「メイク・ミー・シック」

山田詠美著/集英社文庫/419円

メイク・ミー・シック
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時間つぶしのために書店に入り題名が気に入って買ったのだが、短編集かなと思ったらエッセイ&写真集の文庫化だった。

山田詠美ファンにはたまらないであろう写真がいっぱい入っている。
ああボクは山田詠美ファンかも、と再確認してしまった。内容的には恋愛指南的エッセイが多い。ちょっと時代的に古いのが難だが、作者がやんちゃに書いている様が匂ってきて好ましい。一般的に恋愛指南的エッセイは愚劣な物が多くほとんど読まないボクであるが、山田詠美が書くとひと味違って感じられるから不思議だなぁ。

退廃、自堕落、享楽的…、そんな生活の中でしっかり地に足が着いていて流されない生き方。恋愛指南と別の面でなんだか参考になってしまった。

1999年07月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 写真集・イラスト集

LV2「新潟はイタリアだ」

柳生直子著/ネスコ/1700円

新潟はイタリアだ―躍る食材テンコ盛り
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副題「躍る食材テンコ盛り」。
新潟の食を「イタリア」に見立てて詳しく深く掘り下げている本で、内容的には興味ある人には面白い部分も多い。新潟を見直すにも役立つ。行ってみたくなる。

ただ、惜しいのは「レポーター文体」だ。
きゃーきゃー騒いでいるテレビのレポーターがそのまま紙の上に乗り移ったかのようである。なんというか、バラエティ文体とでも言うのか…。まぁ実際に著者はBSN新潟放送のレポーターなのだから、それが個性だと言われればそれまでなのだが、読んでいてちょっと辛い部分が多かった。マイクを筆に持ち替えてここまで書くのはかなり大変であったと推察させられるのだが、全体にもう少しだけトーンを抑えて欲しかったかも。新潟に行ってみたくはなるのだが…。

1999年05月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 ,

LV0「君等の人生に乾盃だ!」

山口瞳著/講談社/1700円

君等の人生に乾盃だ!
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95年に亡くなった山口瞳の「新刊」である。
というか、編集者よ、頼むからこんなもの出すな。サントリーの広告に書いたものを含めていろんなところに掲出した文章から警句・名言と言われそうなものだけ短く引っ張ってきただけのもの。帯に「スピーチ、贈る言葉に最適」とある。笑止千万。

というか、いくら山口瞳ファンだからって、こんなの買うなよオレ。山口瞳全集まで持っているのに。なんというか、本屋で山口瞳という背文字を見ただけで舞い上がって買ってしまったんだけど、こうして部分部分だけ抜き出したものを読むと、これはボクの好きな山口瞳ではない、という苦い後味が残るだけ。著者も草葉の陰で泣いておろう。

1999年04月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV1「社交界たいがい」

山本夏彦著/文藝春秋/1429円

「社交界」たいがい
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山本夏彦が「文藝春秋」や「諸君!」に掲載した文章を集めたもの。

週刊新潮の名物連載「写真コラム」と同じネタがものすごく多いのだが、文字数を削りに削りまくった新潮連載の方がずぅっと面白い。長く書くとつまらない。なぜだ? やっぱり老人(失礼!)のお説教のたぐいは簡潔な方がいいからだろうか。長いと妙にダラダラするのである。

ボクは山本夏彦が大好きで常々応援しているが、なんというか、この本はもうひとつでしょう。あ、「山田正吾」を知ったのは良かったな。うん、良かった。

1999年04月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:評論

LV5「死ぬの大好き」

山本夏彦著/新潮社/1400円

死ぬの大好き
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山口瞳の「男性自身」亡き後、週刊新潮の良心と言ってもいい長寿コラム「山本夏彦の写真コラム」の何回目かの単行本化。

まぁ長いこと愛読しているコラムで(週刊新潮はコレを読むために買うことが多い)、わざわざ単行本を買わなくても大体内容は知っているのだが、こうしてまとめて読むとまたいろいろ目をこするところがあって、精神を平明・公平・明鏡に保つだめにはやっぱりたまには山本夏彦をまとめ読みする必要がある、と実感するのである。

山本夏彦とか曾野綾子とかは、ボクのような定見のないものにとっては薬である。定期的に服用したほうがいい。もちろんすべて効くとばかりは言えないのだが、自分の視点を持つきっかけを作ってくれるのだ。

1999年03月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV1「昭和恋々」

山本夏彦・久世光彦著/清流出版/1600円

昭和恋々―あのころ、こんな暮らしがあった
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この超絶共著でこの評価、というのは、期待をかなり裏切った、ということです(期待しすぎ?)。

書き手抜群。昭和という故郷を失った我々が、昭和を恋々と懐かしむ際の語り部として彼らはまず最良の人選。題材も抜群。いまこそ「昭和」を語るべき。写真もなかなか良し。あー、ボクたち(S30年代以前生まれ)の小さい頃はこうだったよなーとの感慨…。

だのに、なんでこんなに面白くなかったんだろう。
古い記憶自慢大会みたいになったからかなぁ、「懐かしのメロディ」的番組を見ているような行き場のなさを感じてしまった。「懐メロ」としては良く出来ている。この本の役割も価値もわかる。だが、このふたりの書き手を擁しておいて「懐メロ」に終わらせるのはもったいなさすぎるのだ。「老人のマスターベーション」に終わらせるには、書き手も題材も良すぎるのだ。惜しい。

1999年02月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 写真集・イラスト集

LV2「フランスワインガイド」

山本博著/柴田書店/5400円

山本博フランスワインガイド―2100シャトー・ドメーヌ・醸造元総覧
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フランスに限定して生産者別にワインを分類したもの。
写真はまるでないが、事典としてはかなりの充実。分厚いが、それでもすべての生産者を網羅するわけにはいかなかったようだ。ただ、各地区において著名・老舗・新鋭など、重視できる生産者はすべて載せていると書いてあるだけに、ラベルを見てこの本で検索し、その生産者が載っていればまぁちょっとだけ安心、ってなところだろうか。簡単な紹介文も載っているが、これはすごく便利というほどのものではない。これまた労作ではある。値段もかなりだが。

1998年12月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV3「インド ミニアチュール幻想」

山田和著/平凡社/3400円

インド ミニアチュール幻想
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ミニアチュールというインド独特の細密画を御存知ですか? 

ボクはこの本を読むまで実はよく知らなかった。こういう絵があってそれをとりまく世界があってこういう有象無象がうごめいている……という「いままで僕の人生とは全く関係なかったこと」が急に生活に入り込んでくるところが本の醍醐味でもあるよね。テレビ番組だと通りすぎてしまうんだけど、本は少なくとも数日はかけるから心まで入り込んでくる。ミニアチュールはこの本によって確実に僕の人生に入ってきた。ものすごく好きになってしまったのだ。買えないまでも展覧会とかないだろうか…。

あ、書評だったですね。えーと、そうなってしまうくらい面白い本(笑)。ちなみにこの本は1997年度の講談社ノンフィクション賞を受賞している。

1998年02月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:アート・舞台

LV5「今日からちょっとワイン通」

山田健著/草思社/1400円

今日からちょっとワイン通
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ワイン本乱立。でもろくな本がないよなぁとぼやきながら一応すべてチェックするようにしているが、この本は久しぶりの快著であった。

ワインはおいしいけどこの頃のブームはなんだか違う気がするなぁ、本当にこんなことが大事なのかなぁなどと思っていたもろもろのことがすべてこの本に書いてある。するどくも痛快な切り口と書き味。ワインうんちくのウソがいっぱいわかると同時にワインの本当もいっぱいわかるのだ。著者はサントリーで長くワインに携わっている人。その本音のトークがわかりやすい文体と共に好感が持てる。おすすめ。

1998年01月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV3「ソラミタコトカ」

山本ちず著/フォレスト出版/952円

ソラミタコトカ―会社つぶれてしもたがな!
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副題「会社つぶれてしもたがな!」。
著者のホームページで連載していた抱腹絶倒の物語を出版したものだ。HP連載当時からボクはたまたま見つけて愛読していたので本屋で見つけたときはオオ!っと喜び、お祝いの気持ちも込めて購入した。内容はだいたい知っていたのだがHP(横書き・モニター上)で読むのと紙に刷ったもの(縦書き・冊子上)を読むのとで同じ内容でどう違うかというのも興味があったからだ。

結果としては本だといまいち笑えなかった。なんか本にすると手軽に前後のページに行き来できるせいか、HPを読んでいるときの「秘密のものを読んでいるようなワクワク感」がもうひとつない、というのもあるかもしれない。とにかく本にするならもう少し内容を突っ込んで厚みのあるものにするべきだったかも。題材がとてもいいし、HPではマジで抱腹絶倒だっただけに惜しまれる。

ちなみに、HPの内容を本にしたのは、世の中でこの本が一番早かったのではないだろうか。

1997年12月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ノンフィクション

LV5「4U」

山田詠美著/幻冬舎/1400円

4U(ヨンユー)
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「ヨンユー」と読ませるらしい。「フォーユー」かと思ったよ。

ま、それはともかく、著者会心の短編集。
人間の衝動としての「ラブ」を実に丁寧にそして軽やかに描いている。設定も展開も見事。ふっと読み飛ばせる軽い短編から丹念に字を拾いたくなる 重い短編まで取り揃えてたいへん楽しいときを過ごさせてくれる。
かといってブティックのように「ラブ」をおしゃれに並べているだけではない。その底に「人生に尻軽でありたい」著者のストレートな主張が貫いているから、読む方も気が抜けない。それにしても山田詠美は現代の気分を切り取るのがうまいなぁと感心するのである。狙いが見えてしまう村上龍なんかより自然で的をついている。いや、村上龍もすごいんですけど。

1997年10月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「室内40年」

山本夏彦著/文藝春秋/1472円

『室内』40年
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大変面白い。
著者が「室内」というインテリア雑誌を主宰していることを知らない人がいるかもしれない。その雑誌の40年を語ったインタビュー構成の本だが、著者の「確信犯的脱線」により戦後40年の日本が見事に浮かび上がってくる。昭和時代の語り部として著者は最高の役者なのである。
豊富なボキャブラリーと正確な記憶、平明な視点、批評の立脚点の確かさ。良く出来た芝居を読んでいるような気になってくる。聞き手の女性の素直なつっこみも面白く、ニコニコ読めて勉強にもなる。だいたいが説教口調の著者だが今回はすっとぼけた味が勝っている。

1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV2「ワインの言葉」

矢沢大輔著/小学館/1300円

ワインの言葉
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ソムリエ兼コピーライターの著者が書いたワイン用語の優しい解説集。
初心者を相手にしているがなかなか目のつけ所が良いと思う。「猫の小水」「火打石」「キューピー」などわけわからないワイン表現用語の解説をしつつ読み終わるとわりと通ぶれる仕組みになっている。
これ以上噛み砕けないというところまで表現を優しくしてはいるし、下手な入門書より「近道」を通れるとは思うが、読後感が薄いのが残念。構成面でメリハリがあればもっと印象的な本になった。

1997年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

LV1「親子三人」

山口正介著/新潮社/1442円

親子三人
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山口瞳ファンとしては彼の親子関係とか普段の生活は覗きみたい。息子である著者がそれを息子の視点で書いてくれるのであれば是非読みたい。絶対読みたい。ということで購入。

言いたいことはよくわかる。でも、「山口瞳の子供でいることがどれだけ辛いかわかってよ、生まれながらに小説の登場人物なんだよ、だから僕はこうなっちゃったんだ」とかきくどく‘言い訳’と‘甘え’がずいぶんつらい。山口瞳を題材にするということは、山口瞳ファンを相手にするということだ。その辺を自覚して‘言い訳’と‘甘え’を出さずにきちんと書いてほしかった。ちょっとみっともない印象を持った。

「喫茶『風琴亭』のころ」という私小説も載せているが、随所に山口瞳の世界を意識して継承しすぎている部分が見られ、これもちょっとつらかった。ちょっと古臭い構成と題材。というか、こういう風に山口瞳と比べられてしまうこと自体のつらさを書いたわけで、うん、よくわかるよ。でもその辺は読者も承知している。大変だろうなと思っている。だからちゃんと書いてほしいと願うのだ。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 小説(日本)

LV1「みんないってしまう」

山本文緒著/角川書店/1442円

みんないってしまう
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著者には「あなたには帰る家がある」という素晴らしい小説があり、それもあってすごい期待して読んだのだが、期待が上回ってしまってちょっと残念だった短編集。
短編によっては、同じ人が書いたとは思えない印象もあった。思わせ振りなエピソードが続き、いまひとつ盛り上がりにも欠ける。筆力がある人なのだからもっとじっくり書き込んで欲しいなぁ。あまり流した仕事をしてほしくない作家のひとりである。

1997年03月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV2「山際淳司スポーツ・ノンフィクション傑作集成」

山際淳司著/文藝春秋/4893円

山際淳司―スポーツ・ノンフィクション傑作集成
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先日夭折した山際淳司の傑作選。約80編入っている。高価だがコストパフォーマンスは良い。

「江夏の21球」という超弩級スポーツ・ノンフィクションで実質的デビューを飾って以来、第一線で活躍してきた著者ではあるが、改めてすべてを読み返してみると、誤解を恐れずに言えば「この人は決してうまくない」と言わざるを得ない。もちろん、これは、と言う短編もある。でも「こんなにいい素材だったら他もっと面白くなるはずだ」と思わせるストーリーが意外と多いのだ。

そう、彼は素材採集の天才ではあったがライターとしては素朴なタイプだった。というか、変な「小説的技巧」や「バラエティ的盛り上げ」を排除した文体なのだな。その辺は逆に評価すべきなのかもしれないが、題材がスポーツであるだけに、スポーツ自体の派手さに文章が負けている部分が多いと感じた。そういう意味では、この本は文章より素材を読んで欲しい。「目からウロコ」がいっぱい詰まっている。

1996年01月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:スポーツ , ノンフィクション

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