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LV5「仏果を得ず」

三浦しをん著/双葉社/1500円

仏果を得ず
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文楽(人形浄瑠璃)の義太夫を題材にしている現代劇。
義太夫語りは落語「寝床」でも取り上げられるけど、その義太夫節を修行中の若者のお話である。古い芸能を伝承していこうとする若者たちが等身大で瑞々しく描かれている。毎章、テーマとなる文楽の解釈に悩みながら成長する主人公がなかなか魅力的(ある意味本歌取り)。知らなかった世界を楽しく知れる、という意味でも、純粋に小説としても、なかなかいい本である。

文楽は去年初めて観に(聞きに)行った。
普通初心者は人形遣いのそのリアルさに関心が向くらしいが、そのときのメモでも書いたように、ボクは最初から義太夫に目が釘付け。人形をあまり見なかったくらいである。竹本住大夫と豊竹嶋大夫。すごかったなぁ。
そういうこともあってか、この本の題材である義太夫は多少身近で、銀大夫の語りなども目に浮かぶようであるし、三味線とのやり合いなども十二分に楽しめた。義太夫語りの舞台裏を楽しく知れるのもうれしい。文楽が急激に身近になる。

とはいえ文楽をまったく知らない人でも楽しめるので大丈夫。読後、きっと文楽が観たくて観たくてたまらなくなること請け合いだ。この本は文楽ファンを急激に増やすだろうなぁ。

全体にさらりと読みやすく、多少漫画チック。というか連続ドラマっぽい(笑)。イケメンを配役すれば充分ドラマ化にも耐えうる内容。
惜しいと思うのは主人公の背景描写がさらりとしすぎている部分。その分シンプルにストーリーを楽しめるのは確かなのだが…。それと題名。読み終わってからだと「なるほど」と思うのだが、これは取っつきにくすぎる題名かも。表紙を漫画にするなど、文楽という一般ウケしにくいテーマの本を読者が手に取りやすい工夫はしてあるのに、題名が抹香臭くて一瞬「難しい本か?」と手が止まってしまう。ちょっと残念。

NHK「ちりとてちん」ファン的には、「この役は加藤虎ノ介しかできん!」という、きわめて四草なキャラが重要人物として出てくるのでお楽しみに。

2008年04月03日(木) 8:17:49・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「木を植えよ!」

宮本昭著/新潮選書/1100円

木を植えよ!
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名著「魂の森を行け」で半生と生き方とその活動を丹念に描かれた宮脇昭が書いた本である。

その破格な人生、そして切実なる森への想い、鎮守の森を守る活動など、実は「魂の森を行け」を読んだ方がよくわかる(感想はこちら)。まだ読んでない方はそちらを先に読んだ方がよい。で、「魂の森を行け」を読んだ人は100人が100人、宮脇昭自身の言葉に触れたくなるであろう。そういう意味ではTOO MUCHなほど触れられるこの本は貴重だし、欲望を心底満たしてくれる。

過激な題名を持つこの本は、哲学や提言というより実践的プロモーションな本である。
とにかく四の五の言わず木を植えよ。理由と背景はこれこれだ。木の選び方はこれこれだ。やり方はこれこれだ。「そんなこと自分では難しい」と思っている人にはこういう方法もある。とにかく植えよ。すぐ植えよ。と、畳みかけてくる。その畳みかけの激しさはちょっとウットリくるほどだ(文章が激しいというわけではない)。

「ヒトは『森の寄生者』の立場でしか、持続的には生きていけないのです。これは、人類が地球上で生き延びる限り永遠に続く冷徹な事実なのです」

……この言葉に少しでも引っかかる人は必読だ。

2007年02月08日(木) 19:24:12・リンク用URL

ジャンル:哲学・精神世界 , 教育・環境・福祉 , 実用・ホビー , 評論

LV5「世界の果てのビートルズ」

ミカエル・ニエミ著/岩本正恵訳/新潮クレスト・ブックス/1900円

世界の果てのビートルズ    新潮クレスト・ブックス
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人口が900万人しかいないスウェーデンで75万部売れたというベストセラー。

素晴らしかった。短編の積み重ねで綴って行く自伝的小説なのだが、そのリアリティと小説的ジャンプとのバランスが良く、自伝のくせに先行きが想像つかないのだ。プロローグ、そして最初の三章を読んで、一回本を閉じた。これは読者自身の想像力を試される本でもある。電車とかで読むのはもったいない。どこか旅先でゆっくり読みたい感じ(まぁ家のベッドで大事に読んだのだけど)。

それにしても活き活きと描かれる村の生活の魅力的なことよ。
フィンランド国境に近いド田舎の村パヤラ。世界の果て。そこで暮らすヘンテコな男たち女たち。少年が起こす事件の数々。サウナと酒と衝撃的体験としてのロックンロール。いまやパヤラはこの本のおかげでちょっとした観光地らしいが、それもわかる。是非とも景色や空気感を共有してみたくなるほどだ。

ちなみに原題ではビートルズではなくて「ポピュラーミュージック」と書いてある(Popularmusik fran Vittula)。でも邦題もなんか詩的でなかなか良いかも。

2006年10月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外) , 自伝・評伝

LV3「本人の人々」

南伸坊著/南文子写真/マガジンハウス/838円

本人の人々
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言うなればナンシー関や高橋春男の実写版である。
15分もあれば読み終わってしまう本かもしれないが、内容は実に濃い。顔マネでは定評がある南伸坊がいろんな「本人」になりきって顔を作って写真に写り、「本人」になりきって文章も書いている。

文章もさすがだが、なんといっても顔がすごい。特徴の切り取り方が尋常ではない。イチローの口元、新庄の目、石井一久の口、寺原隼人の眉(あれ、野球選手ばかり)などの形態模写もすごいが、性格そのものを(ある種の悪意を持って)映し出したその技がまたすごい。村上龍や清原、養老孟司、手嶋龍一、加藤紘一、山崎拓、宮崎駿……いややめよう。ひとりひとり例を挙げても仕方がない。中にはハァ?という模写もあるが、8割方絶品に似ている。

コピーライターになりたてのころ、コピーのコツとして「他人になったつもりで書いてみる」というを習ったことがある。このコピーを長嶋ならどう書くか、林真理子ならどう書くか、桑田佳祐ならどう書くか、など、本人になりきって書いてみるのだ。そうすると意外なほど発想が広がったのを覚えている。この本の効用もそんなところにあるのかもしれない。

2004年01月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ , 写真集・イラスト集

LV5「ニライカナイ 神の住む楽園・沖縄」

三好和義著/小学館/2500円

ニライカナイ 神の住む楽園・沖縄
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上記「岡本太郎の沖縄」が昔の名作だとすると、この三好和義の撮った沖縄は現代の名作かなと思う。

彼の写真集を買ったのは3冊目。例によってリゾート系の彼の写真はきれいすぎるほどきれいで毎回見とれてしまうのだが、この写真集にはきれいだけではない迫力みたいなものがある。深みと言っても良いかもしれない。ボクはもう数十回沖縄に出かけているが、三好和義の目で切り取った沖縄は、ボクの目では見えてなかった沖縄だ。さすがである。

著者13歳〜16歳(1972〜75)のときに沖縄を写した写真も巻末に載っているのもよい。これがあることでとてもプライベートな魅力が出た。彼の中で成長した沖縄が見られる。なかなかオススメな写真集かも。

2003年06月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 ,

LV4「模倣犯」

宮部みゆき著/小学館/上下各1900円

模倣犯〈上〉
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2001年4月発行の大ベストセラー。
ハードカバーですぐ買って、ほぼ2年間も積ん読になっていた。なんつうか宮部みゆきってもちろんスゴイとは思うのだけど、安定してる分「まぁそのうち歳とってからゆっくりはまればいいか」みたいな心情になるのだよなぁ。そのうち鬼平、とか、そのうち藤沢、とか、それに近い感じがボクの中にはあるかも。ということで、ずっと読まなかったのだが、戦争突入の無力感から逃れたくて、圧倒的筆力&読み易さを求めて本棚から光臨。

二段組みで上下あわせて約1400ページ 。
大作だ。なのにダレずにグングン引っ張ってくれるし細部もしっかりしているし平易で読み易いし、さすが。「このミス2002年第1位」を始め、どの賞でもめちゃ評価が高いのもわかる。でもまぁ個人的には「それほどでもなかった」というのが素直な感想。著者に対していっつも感じる「ぬるさ」みたいなのが今回もぬぐえず残念。ある種の「いい性格」というか「お育ち」みたいのが行間に滲み出てしまい、冷たくなりきっていない感じ。今回はそれでもかなり冷たく書いたのだとは思うけど、個人的にはどうしても違和感と物足りなさが出てしまう。

登場人物の中では前畑滋子に共感できないまま最後まで行ってしまったのが不満。だから結末にも違和感がある。殺人事件の加害者の親族の異様な行動についてはとてもリアリティがあった。この手の本では出色のリアリティかも。

2003年04月01日(火) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:ミステリー

LV5「三人噺 志ん生・馬生・志ん朝」

美濃部美津子著/扶桑社/1400円

三人噺―志ん生・馬生・志ん朝
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中野翠がどこかで「美濃部一家こそ日本のセレブ」みたいなことを書いていたが、志ん生(美濃部孝蔵)とその息子である馬生(清)・志ん朝(強次)の人生を、志ん生の娘である美津子が書いたこの本を読み終わるとまさにその感に満たされる。

落語の世界そのままのどん底貧乏長屋生活を送った志ん生の半生を中心に、美濃部親子の人生が淡々と綴られている。貴重な話も笑えるエピソードもいろいろ出てくる。ゆっくり味読するにたる実に魅力的な本だ。ラストの志ん朝の死の場面では涙を通り越して嗚咽を漏らしてしまった(←歳ですな)。

中身とは直接関係ないが、口絵の写真を何度見ても見飽きない。特に志ん生。こんな顔のジジイになりたいと熱望する。無理だろうが。

2002年12月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , アート・舞台

LV5「新・トンデモ超常現象56の真相」

皆神龍太郎・志水一夫・加門正一著/太田出版/1480円

新・トンデモ超常現象56の真相
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正式には「と学会」の出版物ではないのかな。まぁ著者のうちふたりが「と学会」であるし、題名もトンデモが入っているからそう取ってもいいだろう。トンデモ本のファンであるボクとしては不覚であるが、この本の前に「トンデモ超常現象99の真相」という本が出ていたらしい。その続編にあたる本書だが、続編でもこんなにオモシロイ。

「と学会」のイイタイコトはひとつである。「メディアを信じるな!」である。活字もTVも絶対信じるな、である。それらは我々を愚弄している。その証拠上げがこの本のようなシリーズなのだ。
なにしろTVのバラエティ番組のウソのつきかたは尋常ではない。視聴者をバカにしているどころの騒ぎではない。「ここまでウソついて何のおとがめもないの?ウソでしょ?」の連続だ。超有名な霊能者(クロワゼットやカスタネダら)の経歴の真っ赤なウソさ加減も絶句もの。どうしてこうぬけぬけとウソがつけるのだろう? UFOや宜保愛子の大ウソ、涙を流すマリア像や新しいところでは岐阜県富加町のポルターガイスト事件への疑問まで非常にクリアに晒してくれる。

ある意味大変な労作であるが(資料の裏取りとか)、この本が言うように活字を信じるなであれば、この本の内容も疑ってかかるべきであり、一概にすべてを信じるわけにはいかない。ただ、何事も疑ってかかる、という知性的な習慣をつけるいいキッカケになるという意味では大オススメである。

2001年11月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:雑学・その他 , 科学 , 哲学・精神世界

LV3「至福の味」

ミュリエル・バルベリ著/高橋利絵子訳/早川書房/1500円

至福の味
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フランス最優秀料理小説賞受賞作、らしい。さすがフランス、毎年最優秀を選べるほど料理小説が出ているということか(ホントか?)。

美食の限りを尽くしてきた高名かつ尊大な料理評論家が主人公。彼が死の床で、生涯最高の味を思い出しながら、彼にとって究極の味とはいったいなんだったのかを探す物語。
彼が味わった過去の素晴らしい食事が次々に思い出されていくのだが、その美食の表現が美しくもおいしく、なかなかうならせる。この表現だけで賞をもらったのかもしれない。刺身の項での和食店名が「オシリ」というのが笑わせる(泣かせる)が、とにかく味の表現は通り一遍ではなく、かなり良い。素晴らしい。

ただ、結末、つまり彼にとってなにが一番の味なのか、は、わりと想像の範囲内であった。
たぶんこういう結末だろうなー、と想像できてしまう。また、エスプリを効かせているのだろうが、ネコや石像(!)の一人称語りの章などがあったりするのは、なんとなく流れを止めてしまった気がする。面白い趣向なのだがちょっと白けてしまうんだよね。全体になかなか良い本なんだけど、もうひとつ印象に残らない一冊。惜しい。

2001年09月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(海外)

LV4「不肖・宮嶋 踊る大取材線」

宮嶋茂樹著/新潮社/1500円

不肖・宮嶋 踊る大取材線
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週刊文春の愛読者なら誰でも知っている不肖宮嶋カメラマン。
彼のフリーカメラマンとしての修羅場の数々がここに書かれていて非常に面白い。関西弁そのままに書いた文章はちょっとアクが強すぎて長く読んでいると飽きも来るが、内容がいいから許せる。フライデーや文春でスクープした時の裏話が特に興味深い。あぁあの何気なく見飛ばしているグラビアページの裏にはこういう攻防があってこういう苦労があるのかぁ、と初めて知ったボクである。知らない世界のことを知るのは面白いなぁ。そういう読書的快感が味わえる一冊だ。

ただ、やっぱり文体がちょっと下品めかも。文春のルポで読む彼の文章にはわりと格調(日本人が失った戦前文体的な)を感じたものだが、書き下ろしとしての文章はイキオイを重視したのか、格調は感じられない。だからといってその分面白くなっているかと言われるとそれもハテナ。それだけが残念、かな。

2000年01月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , ノンフィクション

LV3「クラシック千夜一曲」

宮城谷昌光著/集英社新書/680円

クラシック千夜一曲―音楽という真実
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先月に続いてクラシック紹介のいい本に出会った。
著者はご存知のように中国古代史系の作家。音楽は専門外である。しかし、だからこそ素直でしがらみのない音楽評が読めるのである。全部で10曲しか紹介していないが、著者はそれぞれに複数(時には10枚強も)のCDを聴き比べ、それぞれについて「自分の言葉」で論評してくれている。自分の実体験を交えつつ、一門外漢として「外への言葉」として論じてくれているのだ。

専門家たちによる専門用語の羅列されたライナーノーツやCD選集とはひと味もふた味も違ったクラシック推薦盤エッセイ。自分の言葉・視点で物事を表現することがいかに大切か、再確認させられた気がする。

2000年01月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:音楽

LV4「のり平のパーッといきましょう」

三木のり平著/聞き書き・小田豊二/小学館/2100円

のり平のパーッといきましょう
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今年の1月25日に亡くなった喜劇役者三木のり平の「聞き書き一代記」。のり平の言葉がしゃべり言葉でそのまま書かれているのがユニークかつ素晴らしい。そのしゃべり言葉のリズムを読むだけでも儲けモノの一冊だ。

三木のり平に特に思い入れのない人々(ボクを含めて)が読んでもピンと来なかったり面白くなかったりする部分は確かに多いが、その豊富なエピソードから浮かび上がる昭和という時代がとにかく面白いのだ。書かれているギャグとかはイマイチずれちゃっているんだけど、そんなこと読んでいる間はまるで気にならない。

後半の手紙の引用や途中で出てくる芸事に対する一家言、喜劇やネタに対する考え方など、彼でなければ語れない言葉も多く、なるほどこういう人を失ったのだな、と改めて残念な気持ちになる。ひと言で言えば非常に「粋」な本だ。

1999年12月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , アート・舞台 , 映画・映像

LV1「料理研究家たち」

宮葉子著/NHK出版/1400円

「料理研究家」たち
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題材よし。藤野真紀子、有元葉子、上野万梨子、北村光世、枝元なほみというそれなりに名前のある料理研究家をインタビューして、その生き方をルポしたものだ。近頃人気の職業だけに時事性には申し分ない。また、ルポとしては浮ついてなく静かな筆致でしっかり書かれており、ある種の好感は持てる。

が、問題は、なんか読んでいてときめかないことだ。静かすぎる。暗い、と言ってもいい。5人の料理研究家たちはそれなりにはずんだ人生を送っているのだが、どうもそれが伝わってこないのが致命的だ。表現的にも、ちょっと純文学調も入ったりして、どうも自己陶酔的ニュアンスを感じてしまう。題材はいいんだけどなぁ。

1999年12月01日(水) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , ノンフィクション

LV5「ミア・ファロー自伝 去りゆくものたち」

ミア・ファロー著/渡辺葉訳/集英社/2500円

ミア・ファロー自伝―去りゆくものたち
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ボクはミア・ファローが好きである。
知らない人もいるのかな? 実に素晴らしい映画女優だ。どちらかといえば地味系。真面目系。で自伝を読む限りにおいて本当に地味で真面目で真摯である。でも。でもでも。結婚相手が派手なのだ。一人目がフランク・シナトラ、それからアンドレ・プレヴィン、そしてウッディ・アレン。あ、ウッディ・アレンとは長年に渡る同棲だけど。

で、シナトラやプレヴィンとのエピソードも興味深いが、なんといってもアレンによる性犯罪の赤裸々な記録が書かれているのがショッキングである。文章が静かで達意なのであまりワイドショー的にはなっていないが、十分扇情的。あら、結局告発の書だったの? と、そんなことをまるで期待していなかったボクはちょっと鼻白んだんだけど、個人的にはビートルズとのインドでの共同生活やアレンの監督手法が読めたのが特に面白かった。

ちなみに訳者は椎名誠と渡辺一枝の娘。労訳です。

1999年05月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:自伝・評伝 , 映画・映像

LV0「電脳暮し」

水上勉著/哲学書房/1900円

電脳暮し
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高齢にして原稿用紙をコンピューターに換え、電脳の恩恵に預かりだした水上勉がその顛末を書きつづっている。

当然読者はそこに著者なりの電脳生活への考え、想い、思想、人生観への影響、などを期待する。
が、すべてはもろくも裏切られるであろう。普通すぎる。思わせぶりにこんな題名をつけないで欲しい。字のサイズがめちゃくちゃ大きいのは許容するが(逆にDTP的シズルがある)、この内容と字数で1900円は暴利だと思う。高すぎる。内容も繰り返しが多く、うんざりする部分が多い。著者が悪いのではない。編集者が悪いのだ。そう思う。

1999年05月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV4「見仏記 海外編」

いとうせいこう・みうらじゅん著/角川書店/1900円

見仏記 海外篇
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「見仏記」のファンとしては海外編も当然読む。

古寺仏閣少年だったボクは仏像に対してある種の愛情を捧げてきたが、みうらじゅん氏のような卓越した仏像の捉え方は、自分の中の仏像観の崩壊であり、そしてなにより「物事を自分の視点で見ること」の象徴でもあった。それまで世間一般的な仏像の見方をしていたボクは、それほど彼の仏像の見方にショックを受けたのである。そのショック以降、「見仏記」はボクの中である種特別な位置を保っているのだが、これはその海外編。韓国・タイ・中国・インドと、仏像伝来逆ルートを歩いて行く。

いとうせいこう氏の文章が海外取材のせいかがんばっちゃっていて少々理屈っぽくなった気もするが、みうら氏は相変わらず肩の力が抜けていて良い。今月タイに出張しておきながら(仕事の忙しさにかまけて)仏像をあまり見なかった自分が疎ましくなる。

1999年02月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル: , エッセイ , 雑学・その他 , アート・舞台

LV3「死語コレクション」

水原明人著/講談社現代新書/800円

「死語」コレクション―歴史の中に消えた言葉
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副題は「歴史の中に消えた言葉」。
いわゆる死語の辞典風なのだが、別に50音順になっているわけではない。この本がユニークなのは、明治天皇崩御から時系列を追って死語を追っていることで、項目ごとの死語の解説もきちんと読み物になっている。つまり1ページ目から読んでいって最後まで、順に読んでいくと日本の近代史が浮かび上がってくる構造になっているのだ。しかも順に読んでいくことがあまり苦痛にならないのがいい。

難点は近代史を浮かび上がらせようとするあまりなのか「おい、これはまだ死語ではないだろう」というような言葉が数多く見られること。「死語認定」は難しい作業だろうが、勝手に殺された言葉たちはちょっと可愛そう。

1999年02月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:雑学・その他

LV1「我らが隣人の犯罪」

宮部みゆき著/文春文庫/390円

我らが隣人の犯罪
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宮部みゆきのわりと初期の短編作品集。
文庫になったのを機に読んでみたのだが、評判ほど感心しなかった。なんというか、甘ったるく感じてしまう。別にハードボイルドにしてほしいというのではないが、中学生向けミステリー文庫的甘さを感じてしまっていまいち楽しめなかったのだ。
プロット自体もひとつもびっくりさせられるものがなく、細部で面白いところがあるだけで、全体にはちょっとがっかり。そんなに当たり外れのある作家じゃないと思うのだが…。他の短編に期待。

1999年01月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:小説(日本)

LV5「最後の昼餐」

宮脇檀著/根津りえ絵/新潮社/1800円

最後の昼餐
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根津りえの絵と俳句がとてもいい。この挿絵がなければこの本の魅力は半減であろう。まぁこの絵自体が執筆動機なのだからそんな仮定はありえないのだけど。

根津りえが描いているのは、著名な建築家である著者との「料理絵日記」である。
どちらかが料理を作りそして彼女が描く。それがある程度まとまったので著者が文章をつけたわけだ。大変楽しそうな食卓がページに広がっていて読んでいるこちらも楽しくなる。では文章も浮かれきっているかと言えば、これはそうでもない。透明で静かな文章が続く。これは本の最後の方でわかるのだが、著者が癌に侵されてから書いたものだからだろう。

静かで充足したセンスのいい日常が終息していく様がここにある。まだ著者は健在だが、「一番愛していた時間」をこの本に凍結保存しておきたかったのではないか。読み終わってそう思った。

1998年06月01日(月) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , エッセイ , 写真集・イラスト集

LV5「私のひめゆり戦記」

宮良ルリ著/ニライ社/1236円

私のひめゆり戦記
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沖縄戦の第三外科壕、今のひめゆりの塔がある場所で奇跡的に生き残った著者の手記である。

沖縄出張の予定が入ったボクは沖縄戦についてあまりに知らないのを恥じて、まずこの本を読んだのだが、途中つらくて読めなくなるところが数カ所。淡々と綴ってある分だけ文章の意味は重く心にのしかかってくる。もし手に入ったらぜひ読んでほしい本だ。

ただ、これを読むとわかるのだが、彼女らは立派な戦士であった。女学生だからということで後生の人がお涙頂戴的に「ひめゆり」などと名を付けてたたえたことについてはちょっと違和感が残る。

1998年05月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:時事・政治・国際 , 自伝・評伝 ,

LV1「カスハガの世界」

みうらじゅん著/講談社/1600円

カスハガの世界
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「週刊モーニング」連載時から大変楽しみにしていた読み物。
カスハガとは「カスのような絵ハガキ」のことで、とにかく異様に腰が砕けるカスハガが満載されている。コンセプトや良し。発見や良し。非常に好きな世界である。
ただ、読み終わって、どうしても「は?それだけ?」というカスな気分に陥る。もっとなにか突っ込みようがないのだろうか……まぁないか。というか、カスの腰砕けを説明したりエッセイにしたりするのも、本格的カスとは言えないだろう。仕方ないのかも。
とにかくカスな本だが、そういうコンセプトな本なのだからカスでいいや。

1998年05月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:写真集・イラスト集 , 雑学・その他

LV1「東京エピキュリアン」

見田盛夫編著/講談社/1600円

東京エピキュリアン―厳選126店フランス料理店ガイド
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フレンチレストランのガイドブックである。
毎年、見田盛夫が審査して星をつけていたのだが、今年は見田盛夫以外の6人の調査員が「調査員であることを秘して調査にあたり、もちろんきちんと料金を支払いました。こうすることによってこそ、調査の公正さ、正確さを保証できると信じているからです」らしい。そう帯に書いてある。いままでは公正・正確ではなかったということでしょうか? なんかボクが主宰しているジバランを意識していると思うのは自意識過剰かな?

内容はというとあまり去年と記述が変わっていないところも多く、覆面で行って本当にこの星の数?と、個人的には疑問に思うレストランも多い。なんだか視点が中途半端なのだ。これなら「フレンチの大御所見田盛夫個人が審査するフレンチガイド」の方がずっと読みたい。
なお、いままでのしっかりした装丁から一転して安っぽく読みにくくなってしまった。これも実用性を狙ったのかな? はっきり言って読む楽しさが減ってしまった。また、いままで載せていた関西の店もカットし東京に絞った。フレンチの東京集中を助長する行為だと思う。この2つに関しては非常に悲しく思っている。

1998年02月01日(日) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 実用・ホビー

LV3「わからなくなってきました」

宮沢章夫著/新潮社/1300円

わからなくなってきました
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名著「牛への道」で初めて知った著者の最新エッセイ集。
といっても97年の5月に出ているのでホントに最新かどうかは知らない。

相変わらずの新鮮きわまりない切り口。でんぐりがえった視点。まわりくどくこだわり続ける文体。それらが期待通りの面白さに昇華され存分に楽しめる。が、そういう面白さを読者側が望み作者がそれをかなえようとすればするほどマンネリに陥っていく。またそう陥りやすい系統の面白さなのだ。IQが高い笑いにありがちなことなのかなぁ?
ファンとしてはいまのままの宮沢節をずっと読み続けたい気持ちと、新しい境地を見いだして欲しい気持ちの板挟みになってしまう。著者にとっても分岐点ではないだろうか。

1998年01月01日(木) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV2「ロッシーニと料理」

水谷彰良著/透土社/2800円

ロッシーニと料理―オペラを作曲した美食家の生涯・逸話・音楽・書簡・料理
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副題は「オペラを作曲した美食家の生涯・逸話・音楽・書簡・料理」。

かなりの有名作曲家ながらボクにはあんまり馴染みのないロッシーニ。彼は実は異様な美食家であったのでした。
その美食家ぶりを数多いエピソード、実際に残っている彼のメニューや楽譜などから浮き彫りにし構成したのがこの本。と書いてしまうと堅苦しく思われるかもしれないがさにあらず。軽い筆致で気楽に読ませてくれる。なんとも人間的なロッシーニだ。
それにしても書いてあることが本当ならロッシーニは異様な大食家でもある。すごいなぁ。獣みたい。

1997年11月01日(土) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒 , 音楽

LV5「牛への道」

宮沢章夫著/新潮文庫/438円

牛への道
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論評が難しい本である。
元「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」の作・演出者が書いた、ものすごく新鮮な視点を持ったエッセイなのだが、ひとつ間違えれば単なるうだうだ話になってしまうギリギリのラインを狙っているので、人によって好みが別れるだろう。

ただ、この本は笑える。
クスッとかウハハとかウヒヒとかいう笑いではない。敢えて言えば「グググッ」って笑いである。こんなことに笑ってたまるかと我慢した末に出る笑い。シュールでIQの高い笑いだ。心配なのはこの手の作風はうけを狙った途端に(頭でオチを作り出そうとした途端に)面白さをなくすという点だ。次作がそうならなければいいのだが。

1997年08月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:エッセイ

LV1「ロイヤルレシピ」

ミシェル・ブラウン著/井村君江訳/筑摩書房/2650円

ロイヤル・レシピ―英国王室料理
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副題は「英国王室料理」。イギリス料理の歴史的なレシピ集とエピソード。

それも、征服王ウィリアム一世からエドワード七世まで、約1000年、35人のイギリスの王様たちの好物をひたすら追っていて、イギリス好きや歴史好きにはなかなか興味深い本になっている。が、逆に言うと、ある程度料理とイギリスに興味がないと辛いです。
羅列式なので、途中から飽きてくるのも確か。まぁマニア向け、かも。

1995年09月01日(金) 12:00:00・リンク用URL

ジャンル:食・酒

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